テーマ:閉ざされた日記 #67
昼休み、いじめを見て時止めの能力を使った真。
それから何日か経ち、遂に決行の日へーー
『いよいよだな、真』
「あぁ」
僕はシャドウの言葉に頷く。この前来たビルの最上階から人間の街を見下ろす。
やっとこの世が僕たち、人外のものになるんだ。
僕は空を見上げる。光のない月…新月が僕には見える。
「なんだか、力が湧き出てくる」
僕は新月による能力開放により、いつもより機嫌がいい。
『わかるぜ、その気持ち。早くやろうぜ』
シャドウはウズウズしていた。僕は新月を見る。もう少しで頂点に達する。達したらそれが合図だ。
今だ!
僕は第三の目を閉じた。
吹いていた風がピタリと止む。下の人間の街からも全く音がしない。
やったのか…?
僕は下を覗き込むと止まっている人間がたくさんいることを視界にとらえる。
やった…。やったぞ!
「シャドウ! 成功だ!」
そう言った時、おかしいことに気がついた。
シャドウが喋らない。
「おい! シャドウ。なんで止まってるんだよ」
僕はシャドウにペタペタ触る。
「は? 冗談だろ? 面白くないって…」
僕がそう言って苦笑いするがシャドウは動かない。
なんでだ? この能力は人外には効かないはずなのに。効いた覚えがないのに。
僕は頭をフル回転させた。でも、分からなかった。
その時
『見つけた』
そんな声が僕の頭上からした。
「は…? 人間…?」
僕がそう言ってみたものは、飛んでいる人間だった。
『君でしょ? この現象の主犯者』
「主犯者って、言い方悪いんじゃない?」
『僕は本当のことを言ってるだけだよ』
そう言って僕の隣にふわっと着地する。身長が僕の半分くらいしかない。
「お前は、人外なのか?」
『うーん……。君と似ているかな』
人外と人間のハーフ。初めて自分以外では見た。
『それよりも。この現象なんなのさ。人間も人外もみ~んな止まっちゃってるんだけど』
「え、人外も?」
僕が驚いて聞くと
『だから、そうだって』
呆れたように返された。
『後、早くこの現象を開放したほうがいいと思うよ』
「なんで?」
『こんなにもたくさんのものの時間を止めていると、君は自覚していないかもしれないけど、それなりに体にリスクが伴っているから』
僕は体を触った。別に透けたり、灰になったりはしていない。
『新月の夜は特に魔物が動くから、ただでさえ制限がきついんだ』
そう言って、人外は何かを開こうとする。
『はぁ…やっぱりだめか』
その人外はノートのようなものを開こうとするがビクともしない。
「なに、それ」
『閉ざされた日記。って知らない?』
「知らない」
僕がそう言うと人外は呆れたようにため息をつく。知らないものは知らない仕方がないじゃないか。
『君が早くこの時止めをやめたら、話してやろうじゃないか』
人外はニヤリと笑って言った。僕はそれなら知らないでいいや。と思ったがなぜか無性に気になった。
「仕方がないな」
そう言って、第三の目を開けた。
その途端、目の前が真っ暗になった。
1/18/2023, 12:40:43 PM