狼星

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テーマ:木枯らし #66

もうじき、新月の夜。真とシャドウは高校へ。

『ケ、みんな真面目かよ』
シャドウは、そう言ったがクラスにいる誰も反応しない。それもそのはず、シャドウの姿を認知できないと声も聞こえない。
また僕は、シャドウの姿を認識している人に会ったことがない。
『真。人間はなんで勉強するんだろうな』
【知らん】
僕はノートの隅にシャドウに向けて書く。尚、これは人間の使う言葉ではなく、人外と話すときに使う言葉。
僕は話すときも書くときも、自然に人外語と人間語を変えることができる。
(ちなみに、人外語を書くと人間にとってはただの落書きにしか見えない)
『勉強、勉強って、そんなに勉強が大事がねぇ…』
僕はシャドウの意見に大体は同意だ。
ただ、全てにおいてそう思うわけではなく、勉強しておいてよかったと思うときもある。
大体はつまらないが…。

その大体つまらない授業を終えると昼休みになる。
僕は大半、人気の少ない学校裏で昼を食べて過ごすことが多い。今日もそこへ向かうと何やら喧嘩らしきものをしていた。男3人が1人の男を囲んでいた。
「おい、早く買ってこいよ!」
めんどくさい奴らだな。僕がそう思っていると、シャドウも
『全くだ』
そう首を振った。1人が殴ろうとして大きく腕を振り上げた時、僕ははぁ…とため息をつき……。
男の向きを反対方向にする。そして再生。
男は空を殴る。
「は…?」
男は何が起こったのか分からないというように、キョトンとした顔をした。
今度は外さないというかのようにまた腕を振り上げる。
また同じように空を殴る。
「何やってんだよ」
そう言って体格の一番いい男が、今度は腕を振り上げる。以下同文。
『ケケケッ』
僕の横でシャドウが笑う。
何回かやって男たちは疲れたのか息切れして
「覚えてろよ!」
そう言って走り去った。
『カ〜ッ。おもしれ~』
シャドウは笑った。僕は1人残された男を見た。キョトンとしていて、彼も何が起こったのか分からないという顔をしていたが、何もなかったかのようにその場を立ち去った。
「はぁ…。やっとゆっくりできる」
そう言って腰を下ろす。
『にしても、よく相手したな。アイツらの』
「変なことして場所を汚されるのも困る」
『真らしいな』
そう言って、笑う。
木枯らしが吹き、僕の前髪を揺らしおデコにある第三の目を露にする。

僕の能力は【第三の目・時止め】だ。
さっきのもそうだ。時止めをしている間、つまりこの第三の目が閉じているときは人外+人外を認識している人しか動くことができない。
この能力を使えば時を自由自在に操れるのだ。
しかし、範囲が決まっていて昼間はその範囲が1番狭い。だから能力が開放される新月に時を止めれば、範囲が1番広くなる。
時止めの能力を使っていればずっと新月のままだ。
僕の第三の目が閉じていれば。ずっと…。

1/17/2023, 1:10:48 PM