エムジリ

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3/27/2023, 3:47:05 AM

若い頃は、自分に無いものばかりが目についた気がする。

一番は、可愛い容姿じゃ無い
二番は、明るい性格じゃ無い
三番は、運動神経が無い
四番は、人に話せるような特技や趣味が無い
五番は、、、

と、考えただけで憂鬱になる…挙げればキリがない。
そんなこんなで私の自己肯定感は0に等しく、
それを埋める為に、皆に嫌われないように、
イイ子を演じてきた。
昔も今も、私に対する周りの評価は『優しい人』だ。

しかし、結局偽りの自分を一生続けられるわけも無く。
社会人になって、それから何年も経ってから、
やっと、人は人。自分は自分。
自分の人生は自分で舵取りするもの、と気がついた。
気がついたというか、そう考えないと耐えられなくなった。

周りに迷惑をかけるのは論外だけど、
自分の人生は自分の生きたいようにしていいらしい。
だって皆そうしているから。
私がどんなに親切にしても、
それを利用する人が大半だったから。

人は私に無いものを持っているけど、
私も人に無いものを持っている。
しかも、結構良いものを持っている。

ないものねだりも悪くないけど、
配られたカードで勝負するほうがずっといい。
生かすも殺すも、自分次第。


▼ないものねだり

3/25/2023, 11:10:10 PM

あれは小学校4年生の時だから、もう10年以上は前の話。
クラス替えして、初めて隣の席になった男の子に恋をした。
初恋だった。

ある日の下校時間、昇降口で、
その男の子の男友達に話しかられた。
「あいつ、あなたのことが、好きだって」
女友達と一緒にいた私はとても恥ずかしくて
「ふーん、あいつがね」
と素っ気ない返事をしただけだった。
翌日、特に私と男の子の関係に変化はなかった。

しばらく経って、席替えの時期になった。
驚くことに再び、男の子と隣の席になれた。
気を利かせた先生が皆の前で、
「もう一回、席替えする?」
と、右手でマイクを握る形を作って、
私と男の子に尋ねてきた。

私はこのままで良かった。このままが良かった。
けれど男の子が「席替えしたい」と言ったから、
すかさず後を追うように「私もしたいです」と言った。

それから私は別の男の子を好きになったりして、卒業した。

好きじゃない。もう、好きじゃないよ。
でも、たまに、彼が夢に出てくる。
私の頭が勝手に彼を成長させた姿で。

夢のなかで、私は自由に振る舞う。
「私ね、昔、あなたのことが好きだったの」
そう言うと、彼はとても嬉しそうに微笑んでくれる。
私達はほんの刹那、結ばれる……

夢から覚めた後に押し寄せるのは、
どうしようもない悲しさ。
好きだった。きっとすごく、好きだった。
願っても願っても、過ぎた時間が戻ることはない。


▼好きじゃないのに

3/25/2023, 3:09:12 AM

──ぱち、ぴち、ぱちぱち
にわかに、瓦屋根に水の弾ける音が響きだす。

(なんで今…)
ゆっくり瞬きしてから、鋭く睨むように左を向いた。
28m先の円形の的に突き刺さる、3本の矢。
(雨が降ると、的中率が極端に落ちる…)
経験則から学んでいる、自分の悪い癖だ。

ふぅー、と深呼吸をひとつ。
会場は静まり返っている。
聞こえるのは憎らしい水音と、自分の鼓動だけ。

矢をつがえる手が震える。
じめっとした汗が、道着に、下がけに、張りつく。
笑う膝を力でねじ伏せて立ち上がった。
弓を引く、肩を開いて、均等に均等に均等に。

(いつもより、少しだけ右上を狙う)
対峙するのは、ほんの数ミリにしか見えない白と黒。
(いつもより、少しだけ右上を狙う…ここだ!)

いっぱいに引かれた弦から放たれて、矢は真っ直ぐ飛んだ。
雨に打たれ、軌道はわずか下にカーブを描く…

パァン!

的を突き抜く破裂音と共に、辺りは歓声に包まれた。
衝撃で、私はまだ残身から体を動かせないでいる。
瓦屋根に弾ける音が、祝福に思えた。


▼ところにより雨


3/23/2023, 3:08:48 PM

私にとってあの子は唯一だっけど、
あの子にとって私はその他大勢の中の一人だった

人に心を開くことが下手な私は
頑張って友達を作る度に思い知らされた

いつしか相手の顔色ばかり窺うようになって
周りが求める答えと態度を探すことに必死になって
それが上手に出来なかったときは酷く落ち込んだ

ある時疲れはてて、ついに一切の交流を絶ったことがある
そこまでして気がついたのは、
結局人は、人に依ってしか生きられないということ

今でも人付き合いは苦手
うわべの綺麗な顔しか見せられない

そんな私でも、いつか
誰かにとっての特別な存在になりたい


▼特別な存在

3/21/2023, 12:55:29 PM

(私の生きてる理由って、なんなんだろう)

そんな思考に支配される時、
決まってこの世には、自分ひとりしか
存在していないような気分になる。

窓の外を眺めれば、
ぎゅうぎゅう詰めに建てられた
住宅達には明かりがともり、
いつも渋滞しているあの道路には
今日も真っ赤なテールランプが並び、
時折、人の声さえ聞こえるのに。

「なに?また考え事?」

甘く優しく耳障りの良い音が、私の耳をくすぐる。
同時に恐ろしい程 強い力で抱きすくめられた。
私を捕らえるこの両腕は、
鉛のように重く、鎖のように固い。

「なにも考える必要ないでしょ、僕がいれば」

私を一人ぼっちの世界におとしたのは、この人だ。

「これからもずっと、ふたりっきりだね」

私はまた、窓の外を眺める。
私以外が存在する世界に救いを求めて。


▼ふたりぼっち

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