(私の生きてる理由って、なんなんだろう)
そんな思考に支配される時、
決まってこの世には、自分ひとりしか
存在していないような気分になる。
窓の外を眺めれば、
ぎゅうぎゅう詰めに建てられた
住宅達には明かりがともり、
いつも渋滞しているあの道路には
今日も真っ赤なテールランプが並び、
時折、人の声さえ聞こえるのに。
「なに?また考え事?」
甘く優しく耳障りの良い音が、私の耳をくすぐる。
同時に恐ろしい程 強い力で抱きすくめられた。
私を捕らえるこの両腕は、
鉛のように重く、鎖のように固い。
「なにも考える必要ないでしょ、僕がいれば」
私を一人ぼっちの世界におとしたのは、この人だ。
「これからもずっと、ふたりっきりだね」
私はまた、窓の外を眺める。
私以外が存在する世界に救いを求めて。
▼ふたりぼっち
3/21/2023, 12:55:29 PM