あれは小学校4年生の時だから、もう10年以上は前の話。
クラス替えして、初めて隣の席になった男の子に恋をした。
初恋だった。
ある日の下校時間、昇降口で、
その男の子の男友達に話しかられた。
「あいつ、あなたのことが、好きだって」
女友達と一緒にいた私はとても恥ずかしくて
「ふーん、あいつがね」
と素っ気ない返事をしただけだった。
翌日、特に私と男の子の関係に変化はなかった。
しばらく経って、席替えの時期になった。
驚くことに再び、男の子と隣の席になれた。
気を利かせた先生が皆の前で、
「もう一回、席替えする?」
と、右手でマイクを握る形を作って、
私と男の子に尋ねてきた。
私はこのままで良かった。このままが良かった。
けれど男の子が「席替えしたい」と言ったから、
すかさず後を追うように「私もしたいです」と言った。
それから私は別の男の子を好きになったりして、卒業した。
好きじゃない。もう、好きじゃないよ。
でも、たまに、彼が夢に出てくる。
私の頭が勝手に彼を成長させた姿で。
夢のなかで、私は自由に振る舞う。
「私ね、昔、あなたのことが好きだったの」
そう言うと、彼はとても嬉しそうに微笑んでくれる。
私達はほんの刹那、結ばれる……
夢から覚めた後に押し寄せるのは、
どうしようもない悲しさ。
好きだった。きっとすごく、好きだった。
願っても願っても、過ぎた時間が戻ることはない。
▼好きじゃないのに
3/25/2023, 11:10:10 PM