愛し合う二人を、好きなだけ

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2/20/2025, 10:34:04 AM

ひそかな想い(ストック用)

2/19/2025, 10:05:19 AM

小説
甘露寺蜜璃(おばみつ)



目が覚めると、私は光を背に暗闇を見つめていた。
視線の先には、黒い髪を三つに編んだ髪をもつ振袖姿の少女。
その少女は顔を手で覆い、泣いているようだった。

「……大丈夫?」

「…え…」

顔を上げた少女の顔は驚きに染まってはいるものの、紛うことなき自分であった。

「……あなたは誰?」

少女に問いかけられ、どう答えようかと悩んでいると、後ろから声をかけられる。

「甘露寺」

光に包まれ、こちらを向いている顔は逆光で見えない。けれども分かった。愛しいあの人に呼ばれている。踵を返し彼の元へと向かおうとする。しかし思い留まり、不安そうに顔を歪める少女に向かって精一杯の笑顔で希望を伝える。

「私は未来のあなた。…きっと今のあなたは辛く悲しい現実で生きてるのよね。でも安心して欲しい。あなたはこれから沢山の仲間に巡り会って、一人の殿方に出会い、恋に落ちる。…あなたの夢は叶うわ」

今度こそ踵を返し、彼の元へと向かう。すると後ろから上擦った声が聞こえた。

「ねぇっ!あなたは今…幸せなの……?!」

私は歩みを止めず、光の中に居る彼に向かって手を伸ばす。彼にも、過去の自分にも聞こえるように、大きな声で問いかけに答える。

「世界一幸せよ…!」

2/19/2025, 10:01:21 AM

悪ノ娘※捏造



海の近くのちいさな孤児院
そこに住まうは老いた修道女と幾人かの孤児
皆仲良く平和に暮らしていた

ある時修道女は病に伏した
彼女は思う
あの手紙は届いたのだろうかと

幼き少女時代
罪を犯した少女時代
海に流した小さな小瓶
羊皮紙丸め
願いを込めて
波に揺られどこまでも流れてゆく
それを見つめる自らとナイフ隠し持つ白髪の女

苗木が大木に育つ程の時が流れ
手紙の行方は誰も知らず
少女は大人になり
そして老いていった

死ぬことに恐怖は無く
しかし手紙の行方が心残りだった

しばらく時が経ち
いよいよ神の元へ召される時

孤児がひとり
「手紙の返事があるよ」
孤児がひとり
「読んであげる」

修道女が耳を傾けると
拙く優しい返事
一生懸命考えたのだろうそれは
修道女への最期の贈り物だった

「ありがとう」

修道女は優しき想いと少しの寂しさを遺しこの世を後にする

光の中で彼女は思った

もしも生まれ変われるならば_________

2/17/2025, 11:20:05 AM

小説
オリジナル



『しーあわっせはーあーるいってこないー』

つい最近覚えた唄を口ずさむ。できるだけ明るい声で唄い、リズムをとる。
目の前には真新しい墓標がひとつ。

昨日、大好きだったキミが死んだ。


ボク達『天使族』には、その名の通り天使の様な羽が生えている。
肩甲骨辺りから伸びる白羽は、太陽にかざすとキラキラと輝き、星の様な光をもたらす。
飛ぶことも出来るこの羽は、世界の中でも希少価値が高いらしく、口にするのも憚られる程の残虐な略奪行為が成され、奪われてきた。そのため仲間は、ボクを合わせて13人。皆で仲良くひっそりと暮らしていた。

「イド」

名を呼ばれ、唄うのを辞め振り返る。仲間の中で一番仲の良い『フェル』が心配そうな顔をして立っていた。

「…フェル…」

「…もう『カレン』という娘は居ないのだろう?可哀想に。人間はこんなにも短い時間で死んでしまうのか」


ボク達『天使族』には、その名の通り天使の様な羽が生えている。
そしてボク達が『天使族』と呼ばれる由来はもうひとつ。

ボクらには、一万年という長い長い寿命があった。


「イド、そろそろ帰ろう」

「うん」

先に歩き出したフェルを追いかけようとして、ふと立ち止まる。

「……またね、カレン」

何も返ってこない墓標に向かって言葉を贈る。


『イド』

小さなベルを鳴らしたような声。耳の中で反響する、か弱く美しい声。

懐かしくて愛しい、ボクのカレン。

これは『人間』であるキミと『天使族』であるボクの、ささやかで、とても短い、とある恋の物語。




イド…天使族。約3000歳。白髪。
フェル…天使族。約3200歳。茶髪。
カレン…人間。15歳の時にイドと出会う。享年19歳。黒髪。

2/16/2025, 11:52:52 AM

小説
迅嵐



時間よ止まれ…!止まってくれ…!

そう願ったのはいつぶりだろうか。
おれは脇目も振らずに走り出していた。


時は遡ること半日。

「んんー?」

「どうした?」

妙に引っかかる未来を視た。目の前の嵐山が不思議そうな顔をする。彼の瞳には、苦虫を噛み潰したように顔を顰めるおれが映り込んでいた。

嵐山がトリオン兵に負ける…?

未来は嵐山がいつも戦っているはずの普通のトリオン兵に敗北することを告げていた。ありえない。嵐山の実力でトリオン兵に引けを取るなど、ましてやラービットよりも数段格下のトリオン兵に負けるなど、あるはずがなかった。

「…迅?」

「……今日南の方でトリオン兵が3体くらい来るっぽい。嵐山隊が担当だったよね」

「あぁ。今から引き継ぎだ」

「あのな嵐山、実は…」

その言葉に訝しげな表情をした嵐山が口を開こうとする。

「嵐山さん、そろそろ時間です」

嵐山隊の一員である時枝の声にはっと振り向き、嵐山は申し訳なさそうに迅の肩を軽く叩く。

「すまない迅、また後で」

「っ…」

迅の口から言葉は発されることなく、息と共に喉元に押し込まれた。


言うべきだったとモヤモヤ考え込みながらぼんち揚を頬張る。
未だに消えず、ほぼ確定している嵐山の敗北を、視続けること約半日。
おれは衝撃的な内容を受け止めきれずにいた。

「待て待て…おい嘘だろ…?!」

嵐山の未来が視えない。真っ黒に染まった嵐山の結末を、混乱する脳みそが必死に理解しようと働く。

嵐山が…死ぬ…?

しかも太陽の位置的にそう遠い未来ではない。大体30分後といったところか。

おれは確信すると同時に走り出す。基地の窓を開け、大きく踏み出した。常人ならば死一択の距離を下りながら、感じる。
時間が止まって欲しいと、いつぶりに思うだろう。
地面に降り立ち、南方向を目指して駆け抜ける。

嵐山、お前を助けることを許して欲しい。お前は守られるべき弱い存在なんかじゃない。でも、お前はおれにとって失いたくない、大切な存在だから。
好きな人を守りたい、それだけなんだ。

民家を避けるように宙を舞う。すると眼下に数人の人間が、トリオン兵と戦っている最中だった。最後の一体を仕留め終わった、そう見えた時だった。

民家の影から、小さな男の子と女の子が飛び出してくる。きっと間違えて警戒区域に入り込んでしまったのだろう。2人の後ろからもう一体のトリオン兵。嵐山がそれに気が付き、銃を構えるも間に合いそうになかった。他の隊員も応戦しようとするが、どうやっても嵐山や子供たちを巻き込む形になってしまう。嵐山は手を伸ばし、男の子と女の子をトリオン兵から庇う形で抱きしめる。

その瞬間、おれはスコーピオンを両手に作り、トリオン兵目掛けて投げつける。核に命中し、トリオン兵の動きが止まった。

「っ…!嵐山…!」

声を荒らげると、驚きに染まった顔の嵐山と視線が合う。
嵐山の未来は、続いていた。

間に合った。その事実は、全身の力を奪い、おれは地面に倒れ込む。もう悪い未来は視えない。

「迅!どうしてここに?!」

おれを覗き込むようにして傍に座った嵐山の手を握る。子供たちは他の隊員に任せたようだった。嵐山以外誰もこちらに近づいて来ないのは、時枝の判断と指示だろうか。サンキューとっきー。

「…はぁー…嵐山だ…」

「嵐山だが。いやなんでここに…」

「うーん、好きな子に会いたかったからかなぁ」

「んなっ…!誤魔化すな!言え!」

「あっはっは」

ひとしきり笑うと、未だに繋がれている手に力を込める。
少し眉を釣り上げた嵐山と目が合った。

「帰ろっか」

そう言うと、おれは嵐山に笑顔を向けるのだった。

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