小説
オリジナル
『しーあわっせはーあーるいってこないー』
つい最近覚えた唄を口ずさむ。できるだけ明るい声で唄い、リズムをとる。
目の前には真新しい墓標がひとつ。
昨日、大好きだったキミが死んだ。
ボク達『天使族』には、その名の通り天使の様な羽が生えている。
肩甲骨辺りから伸びる白羽は、太陽にかざすとキラキラと輝き、星の様な光をもたらす。
飛ぶことも出来るこの羽は、世界の中でも希少価値が高いらしく、口にするのも憚られる程の残虐な略奪行為が成され、奪われてきた。そのため仲間は、ボクを合わせて13人。皆で仲良くひっそりと暮らしていた。
「イド」
名を呼ばれ、唄うのを辞め振り返る。仲間の中で一番仲の良い『フェル』が心配そうな顔をして立っていた。
「…フェル…」
「…もう『カレン』という娘は居ないのだろう?可哀想に。人間はこんなにも短い時間で死んでしまうのか」
ボク達『天使族』には、その名の通り天使の様な羽が生えている。
そしてボク達が『天使族』と呼ばれる由来はもうひとつ。
ボクらには、一万年という長い長い寿命があった。
「イド、そろそろ帰ろう」
「うん」
先に歩き出したフェルを追いかけようとして、ふと立ち止まる。
「……またね、カレン」
何も返ってこない墓標に向かって言葉を贈る。
『イド』
小さなベルを鳴らしたような声。耳の中で反響する、か弱く美しい声。
懐かしくて愛しい、ボクのカレン。
これは『人間』であるキミと『天使族』であるボクの、ささやかで、とても短い、とある恋の物語。
イド…天使族。約3000歳。白髪。
フェル…天使族。約3200歳。茶髪。
カレン…人間。15歳の時にイドと出会う。享年19歳。黒髪。
2/17/2025, 11:20:05 AM