小説
甘露寺蜜璃(おばみつ)
目が覚めると、私は光を背に暗闇を見つめていた。
視線の先には、黒い髪を三つに編んだ髪をもつ振袖姿の少女。
その少女は顔を手で覆い、泣いているようだった。
「……大丈夫?」
「…え…」
顔を上げた少女の顔は驚きに染まってはいるものの、紛うことなき自分であった。
「……あなたは誰?」
少女に問いかけられ、どう答えようかと悩んでいると、後ろから声をかけられる。
「甘露寺」
光に包まれ、こちらを向いている顔は逆光で見えない。けれども分かった。愛しいあの人に呼ばれている。踵を返し彼の元へと向かおうとする。しかし思い留まり、不安そうに顔を歪める少女に向かって精一杯の笑顔で希望を伝える。
「私は未来のあなた。…きっと今のあなたは辛く悲しい現実で生きてるのよね。でも安心して欲しい。あなたはこれから沢山の仲間に巡り会って、一人の殿方に出会い、恋に落ちる。…あなたの夢は叶うわ」
今度こそ踵を返し、彼の元へと向かう。すると後ろから上擦った声が聞こえた。
「ねぇっ!あなたは今…幸せなの……?!」
私は歩みを止めず、光の中に居る彼に向かって手を伸ばす。彼にも、過去の自分にも聞こえるように、大きな声で問いかけに答える。
「世界一幸せよ…!」
2/19/2025, 10:05:19 AM