【香水】
貴方の残り香を追いかけて
何を言おうとしたか
頭が真っ白になる
甘くて 艶やかで
それでいて少し苦い
【言葉はいらない、ただ…】
隣にいるだけで
俺たちは無敵なんだ
なんて
少年漫画じゃあるまいし
大体何と戦うんだよって
こんな退屈だけど
適度に忙しい平和な日常で
青臭いなんて思うけど
友情 勝利 努力
漫画みたいなこと起きないかなって
思っちゃったりはする 正直
最近の漫画は全然そうじゃないけど
むしろ胸糞展開 グロテスク上等みたいな
漫画とか流行ってるけども
相棒っていう存在にも憧れる
背中合わせに こう 何かに
立ち向かう的な
そんなことを考えながら
窓際の席で今日も一人
弁当を食う
机の端には読みかけのライトノベル
その前に
話相手が欲しい
【突然の君の訪問。】
終電まで仕事をして
片手には半額の弁当とビール缶
何とか階段をあがり
アパートの扉前まで辿り着く
さあ 入ろうとしたところに
なー という声がした
するり と俺の足に擦り寄ってくる
久々のダチ
暫く見かけないと思ったら
生きていたんだな
何かなかったかとビニール袋を漁り
半額の刺身が出てきたので
半分 そいつにくれた
ダチは満足そうに
喉を鳴らしていた
【雨に佇む】
あ 雨だ。
休日の昼間。特に目的もなく、街をうろうろしていたら、突然、ぽつり、ぽつり、と雫が落ちたかと思ったら、ざー。と一気に滝のような雨が降り注ぐ。
周りの人たちは、慌てて雨宿りできるところを目指して駆け足になる。
僕も慌てて、すぐ側のショッピングビルの壁際まで避難した。頭を鞄の上へ乗せ空を見上げる。
晴れているのに、雨が降っている。変な感じ。
「急に降ってきてびっくりしたねぇ」
「ほんとな。ていうかこれからどうする? 」
「このまま、ここにいようよ」
すぐ隣の、カップルと思わしき男女が、落ちてきた雫をハンカチで拭きながら笑い合っている。通り雨すらも楽しめるそのマインドだけは羨ましい。僕は内心で溜息をついた。
これからどうしようか。濡れるのは勘弁だけど、かと言って傘は持って来てないし、特に用事もないけれど、このまま雨がやむまで待つのは、近くの人間のせいで、僕の心情がよろしくない。こうなったらビルの壁をつたって濡れないように移動するか?
悶々と悩む中も、雨の量が増す。
隣の男女が雨すっご、とはしゃいでいる。
雨にも隣にも、優柔不断な僕自身にも呆れてしまう。
雨がやんだ瞬間に走り出そう。そしてその足でラーメンを食べに行くんだ。脂の乗った、こってりしたやつ。別にやけ食いなんかではない。別に。
そんな僕の心内なんて知らずに、尚も雨は降り続けている。
【私の日記帳】
何かを記録することは好きだ。
昔からノートや文道具を集めていて、日記帳もまたそれらと同様に、目についたお気に入りは購入することが多かった。
洋書風日記、鍵付きの日記帳。
今も手元にある二冊。最初のうちは書き綴っていたものの、段々と書く気力がなくなり、ついに書かなくなって何年経ったか。考えたくない。鍵付きの日記に至っては鍵をどこにしまったか思い出せない。捨ててはいない筈……。
何かを書くのは好きだが、記録を続ける持続力がない。ここ最近、客観的に自身を分析してみて改めて気づいたことだ。
ついでに加えると、思いつきで買い物をしてしまう傾向もある気はする。いつか使うだろう、いつか使いたい、のような考えで過去の自分は日記帳を買ったのだろう。これは良くない。しかし、買ったものは仕方ない。
折角、手元にあるのだから最大限活用したい。日記帳は装丁がしっかりされているので安くはない。数百円で買えるノートであれば、バラしてメモにするなり捨てるなりできるが、日記帳だとこうはいかない。ではどうするか。
そもそも日記を辞めてしまう理由として、「絶対に毎日書かないと」という固定概念や思い込みが、自分の中で勝手にプレッシャーになり、書くことが楽しくなくなり、書くことをやめてしまう場合が多いらしい。加えて完璧主義だと尚更、続けるのがしんどくなるそうだ。ではどうしたら良いのか。「毎日じゃなく、書きたくなったらで良い」「完璧でなくても良い」のだ。
毎日でなくても良い。
今日書いたページの、次のページが何年かかっても構わない。
こんなに気長で良いのか、と思うと気持ちが楽になる。でも折角、日記帳があることを思い出したので、今日は久しぶりに書いてみるか。
本棚の奥に詰められ日記帳を取り出し、空白のページを開いた。