しののめ

Open App
7/3/2025, 11:14:21 PM

 モノクロの海獣が
 深い水底の水槽で
 水飛沫を飛ばす
 全体重と勢いをのせ
 何メートルも先へ飛んでいく

 水平線が直近に見える水槽で
 泳ぎ回る彼らには
 どう映るのだろうと考えながら

 足元に掠った水飛沫をみた

【遠くへ行きたい】

5/11/2025, 7:39:54 AM

静かな森の
奥深くに建てられた
別荘が見える

丸太を横に積んだような
外装の平屋は
〆切の守れない作家の
言わば 軟禁小屋
否 作品を書くための
作業小屋であった

高そうな絨毯が敷かれた書斎で
今日も作家の呻き声が
聞こえてくる

〆切まであと一週間を切りました
まだ半分も進んでいないとは
どういうことですか

きっちりした声色が
別荘から響いてくる
編集者の声だ

作家と編集者は昔からの
腐れ縁であるが
どうも本作りに関しては
毎度毎度 小競り合いが絶えない

そもそもお互いに
良い歳になるのだが

果たしていつになったら
別荘が落ち着くのやら

4/2/2025, 3:01:43 PM

 雲がまばらに広がり
 水色と白が織りなす
 コントラストを
 横切るように
 飛行機が飛んでいる
 遠い遠い 僕の下を
 
 ありえないけれど
 もしかしたら
 飛行機の乗客が
 気づくかもと思い
 両腕を大きく動かして
 手を振ってみた

 よい空の旅を と

【空に向かって】

4/2/2025, 10:03:39 AM

 薄紅色のあの花が
 春を告げるために
 雨と風に打たれて
 今年もはなひらく
 
 花の下ではきっと
 あらたな出会いが
 

【はじめまして】

3/31/2025, 2:02:16 PM

 春の天気は気まぐれで
 初夏のような暑さが
 続いたかと思えば
 真冬のような冷たい風が
 強く吹き込むこともある

 今日は真冬のような日で

 風がびゅう と吹いたから
 両手を慌ててコートのポッケへ
 仕舞い込む

 ふと 子供の叫ぶ声がした
 握られた風船が風で
 飛んでしまった

 子供は泣きながらも
 大きな声で
 遠くなる風船へ手を振った

【またね!】

Next