【雨に佇む】
あ 雨だ。
休日の昼間。特に目的もなく、街をうろうろしていたら、突然、ぽつり、ぽつり、と雫が落ちたかと思ったら、ざー。と一気に滝のような雨が降り注ぐ。
周りの人たちは、慌てて雨宿りできるところを目指して駆け足になる。
僕も慌てて、すぐ側のショッピングビルの壁際まで避難した。頭を鞄の上へ乗せ空を見上げる。
晴れているのに、雨が降っている。変な感じ。
「急に降ってきてびっくりしたねぇ」
「ほんとな。ていうかこれからどうする? 」
「このまま、ここにいようよ」
すぐ隣の、カップルと思わしき男女が、落ちてきた雫をハンカチで拭きながら笑い合っている。通り雨すらも楽しめるそのマインドだけは羨ましい。僕は内心で溜息をついた。
これからどうしようか。濡れるのは勘弁だけど、かと言って傘は持って来てないし、特に用事もないけれど、このまま雨がやむまで待つのは、近くの人間のせいで、僕の心情がよろしくない。こうなったらビルの壁をつたって濡れないように移動するか?
悶々と悩む中も、雨の量が増す。
隣の男女が雨すっご、とはしゃいでいる。
雨にも隣にも、優柔不断な僕自身にも呆れてしまう。
雨がやんだ瞬間に走り出そう。そしてその足でラーメンを食べに行くんだ。脂の乗った、こってりしたやつ。別にやけ食いなんかではない。別に。
そんな僕の心内なんて知らずに、尚も雨は降り続けている。
8/27/2024, 1:40:45 PM