しののめ

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8/25/2024, 1:37:35 PM

【向かい合わせ】

 俺はとある町の高校に通う学生
 部活は一応運動 たまにさぼるけど
 数学とか理系は得意で
 国語とかの文系は苦手
 食い物は甘いものが好きな
 どこにでもいるやつ

 今は放課後
 部活は休みだけど
 理科準備室に来ている
 隣に座っている幼馴染が
 用紙にひたすら書いているところを
 じっ と 見つめる

 幼馴染は
 俺の隣の家に住んでいるやつ
 部活は小説なんかを書く部に入っている
 今 まさに部活中のところを
 俺が冷やかしに来ている訳
 
 幼馴染は
 国語や歴史系が得意で
 数学は苦手らしい
 味覚はしょっぱいものが好きめ

 今はもう流石にやらないけど
 昔 向かい合わせで
 昼寝をした時には
 同じ視線だったはずだ

 幼馴染が背筋を伸ばして執筆している
 同じ視線にしようと
 俺は少し上半身を下へさげた
 
 性別も生まれた年も環境も
 一緒なのにな 俺とこいつは
 ずっと 正面を向き続けていたのに
 今更 そんなことを思う

 シャーペンにルーズリーフが
 擦れる音だけが響く

 
 

8/24/2024, 12:37:41 PM

【やるせない気持ち】

 先日 親友が結婚した
 私の知らない男と
 久々のLINEが来たと思ったら
 結婚報告だった

 後日 親友と会った
 少し都会にあるオシャレなダイニングバー
 数年ぶりの一緒のランチだ
 仕事の近況や最近の趣味の話を
 お互いにし合った
 楽しい すごく

 食事があらたか進み
 酒が進んだころに 例の話題が上がった
 親友の結婚の話
 彼女の幸せそうな様子は嬉しかったが
 夫婦とその親族だけで行われた婚約と
 男の話は 苦痛だった
 
 学生の頃 一人で教室にいた私に
 声をかけてくれた親友
 私の好きな手紙交換
 読書 交換ノートに
 付き合ってくれた親友
 
 当時からモテてはいたから
 結婚も想定していたとは言え
 胸の奥のもやもやが強くなる

 私が男だったら とか
 親友が男だったら とか
 考えてしまう
 
 どちらが男だったとしたら
 こんな関係にはなっていただろうか

 否 無理だ
 そもそもこんな縁自体が
 あり得なかったかもしれない

 また呑み会しようね と約束して
 親友と別れた

 夜道に吹く冷たい風が
 やけに心地良かった
 
 

8/24/2024, 9:30:41 AM

【海へ】

 僕の住む町は海は近い。ただし、海水浴が出来る海辺へ行くのには電車で約二時間はかかる。海水浴をするならの話だ。
 海を見るだけなら最寄駅から数駅乗れば行ける。海っぽい名前の駅を降り、改札を抜ければすぐ港が見える。港へ続く道の両端には南国っぽい木が立ち並び、一気に海っぽい光景になる。海風が吹くのを感じながら、ゆっくり歩道を歩く。夏も終盤に差し掛かってはいるものの、まだまだ暑い。滝のように汗が額や腰から流れている。

 数分後、港へ到着した。展望デッキの広場の目の前はもう海である。デッキの手すりに上半身を預けた。数メートル下は穏やかに波打っている。近くには工場が立ち並び、工場の反対側は観光用の小船がぷかぷかと桟橋で揺られている。海水浴が出来ないのは貿易港だからである。水平線の先には小さく貿易船や工場などが見えた。

 僕はすう、と息を吸う。潮の香りがする。夕方だからか、海の底は紺色で見えそうにない。昼間でも見えないかもしれない。流石に水深は浅いとは思うが、それでも底が見えないだけでも得体の知れない恐怖はある。しかし不思議だ。海を眺めていると心なしか落ち着いた気分になる。僕は空を見た。夕日は空と海と工場を照らす。忙しない一日なんてまるでなかったみたいだ。
 僕はしばし時間を忘れ、日が沈むまで、眺めていたのであった。

8/22/2024, 3:39:46 PM

【裏返し】

 本は良い。知識を得られるし、文字から想像を自由に膨らませることが出来る。そもそも本という形状が好きだ。活版技術や冊子にするという技術を普及させた過去の人類に感謝を言わざるを得ない。こうして気軽に読めるのはこうした軌跡があってこそだ。

 そしてそれら本達が一同に会する、図書館や書店という空間はまさに知識と想像と技術の社交界である。ありとあらゆる本が沢山集まる空間というのは、読書好き本好きとしては脳汁幸せホルモンがどはどばなのである。

 個人的な図書館と書店の違いとしては、図書館は本にとっての歴史があるということ(旧い文献が沢山あるため、情報の比較や振り返りには強い)、書店は流行や売筋が分かりやすいということ(そして何より買うことが出来るという)時代によっては、本は非常に稀少で、鎖につけられて持ち出しが出来なかった、ということらしいので、そう考えると今という時代に生きられて良かった。

 本題にいつ入るのか、という話なのだが、私はいつも図書館で本を借りたり、書店で本を買う際には、いつも裏表紙を表にしてしまう癖がある。    
 図書館なら裏表紙に貸し出し用のバーコードがあり、書店の本にもバーコードがある。貸し出しカウンターやレジに渡す時に、作業がしやすくなるだろうという配慮もあるにはあるのだが、それ以上に、自分の選んだ本や好きな本の表紙を他の人にあまり見せたくないからだ。

 この気持ちが分かる人間は他にいるだろうか?多分大半の人間は気にもすらしないだろう。裏表紙を上にするのは全然平気なのに、表紙を上にするのだけは照れが入ってしまうのだ。

 独占欲?自意識過剰?それとも別の何かか。
 
 果たして分かる時が来るのだろうか。

8/21/2024, 10:14:13 AM

【鳥のように】

 自由に空を舞って
 世界を見下ろす

 街も山も海も何もかもが
 玩具のように見えるだろう

 鳥は良い
 空を飛べるのだから

 朝のさえずりと共に
 雀 雉鳩 椋鳥
 たまに知らない顔もいる

 庭の木の実を
 啄みにやってくる彼らは
 空を舞うことも
 自由を知っている

 人間は飛べないものの
 飛ぶ手段は知っている

 飛行機を乗ることはつまり
 自由になるということだ
 

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