空の上には無数の金平糖
見上げながら手をかざすと
手のひらに収まりそう
勿論 収まりなんてしないから
指でつまんだふりをしてみる
どこかで金平糖が増え
そして消えてゆくのだろう
そして地球も
金平糖のひとつなのだろう
【星空】
命は短し恋せよ乙女、か
確かに人間の生命は短い
長くて100年ってところ
私みたいに
何千年も生きられないから
愛おしい
私が今まで見下ろし見ていた
数々の告白や逢瀬などは
もうすっかり過去の出来事になり
土へ還ってしまった
いや 今は土へ還らず
灰になって天へ昇るのだったっけ
風習がころころ変わるのも大変ね
思えば 色々な恋模様があった
華やかであったり
いじらしかったり
切なかったり
あの時の皆はもういないけど
足跡は確かに繋がっている
人は一人の生命は儚いけれど
全体の歩みは著しい
少年と少女が
四角い薄い板を持って
楽しそうにしている
100年前とは 全然違う
でも 似たような光景もある
今 この瞬間に
少年が少女へ
想いを伝えたそうにしている
その度に私は
風に花びらをのせて
想いが実るようにと 祈る
それが私
花の神の
存在理由だから
ある街の話。
この街には神や妖怪といった所謂「人ならざるモノ」が存在していた。霊感のある者は勿論、とりわけ霊感の無い人間も神や妖怪の存在を認識しており、図書館や公民館で閲覧出来る郷土史にもたびたび神妖が登場する。
樹齢は推定千年ほど。
傍で告白をすると、春でなくても桜の花びらが舞い、告白が成功するという伝説。
そんな樹に宿る神の、独り言。
【神様だけが知っている】
霧の中を彷徨うように
方向感覚がわからなくとも
足掻き進む
両手をかき分けながら
時々 何かに
ぶつかりそうになりながら
考えるより動く
立ち止まる暇はない
うずくまることもある
それでもよい
呼吸を整えて
また歩みはじめれば良い
【この道の先に】
坂のきつい道を歩いている
道は一本道で数メートル先は
ゆらゆらと視界が揺れる
道の周辺は右も左も ずっと先も
田んぼしかない
田んぼ「しかない」というのは語弊か
田んぼの脇には林があり
林からはミンミンと蝉の合唱が
鳴り止む様子がない
近くの商店まで行くのに
あとどれくらい歩けば良いのか
都会しか知らない故
身体と精神が やられそうだ
色々あって ここへ越してきたが
果たしてうまく
やっていけるのだろうか
雲一つない太陽が
容赦なく肌を照らす
額に手を翳し 尚も歩き続ける
暫く歩き ようやく店へ着いた
頑張った褒美にアイスを選ぶ
袋に入ったイチゴのカキ氷か
あずきバーか
実に悩ましい
【日差し】
日がのぼりはじめると
急ぎ足でにんげんが行き交う
何をそんなに急いでいるのか
検討がつかない
もっとゆっくりすればいいのに
そう思いながら あくびをひとつ
日が頭の上にあがると
室内にある薄い箱から
にんげんのこえがきこえ映る
薄い箱の中のにんげんが
あーだ こーだ と騒ぎながら
何かをつくっていたり食べていたりする
そんなにんげんを眺めながら
食事にありつく
日が沈みかけると
にんげんのこどもらの声が聞こえてくる
何を言っているのかは わからないが
多分 楽しいのだろう
昼寝から目を覚ます目覚ましとしては
丁度良い
日が落ちると
外の灯りがともり 星と月が顔をのぞく
食事の後に鑑賞するのがオツというもの
時々疲れてるにんげんたちが通過していく
狩りでもしてきたのだろうか 謎である
後ろから 頭を撫でられる
振り向かずに 喉を鳴らしておいてやった
【窓越しに見えるのは】