瀬戸

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4/11/2024, 11:06:35 AM

言葉にできない

帰り道、この後遊ぼうと約束をした。
別れ道に差し掛かるまで、沢山話した。どこに行こうか、何を食べようか。一時間前にはなかった、心の躍る約束を二人で作っていくのは楽しくて、すぐに別れ道へとたどり着いた。じゃあまたね、って、さようならを言わないでいいのが嬉しかった。でもそれ以上に嬉しかったのは、運動嫌いなきみが一生懸命走っているのを見たとき。きみの方が幾分か家が遠いから。きっと、だれに言っても軽く流されてしまう出来事だけど、私は間違いなく言葉にできない喜びを感じていた。

3/21/2024, 11:08:45 AM

二人ぼっち

とろとろと、溶けていきそうな夜だった。
黒の絵の具を空いっぱいに塗り広げて、筆にたっぷりとつけた黄色をひとつ。窓を覗いてみれば、そんな情景だけが広がっていた。気を抜いてしまえば、私は私の形を保つことができずに、この部屋の床と同化してしまうだろう。そんな馬鹿げたことを考えてしまうほどの夜だった。
熱くて、さみしくて、苦しくて。一人ぼっちであればどんなによかったか。横に君がいるから、私は余計に心が締め付けられた。君が吸い続ける煙草の匂いが蔓延するこの部屋から、逃げ出したかった。でも、しなかった。私は自分の意思で、今ここにいる。
どこに行っても、私も君も上手くやっていくことはできない。どうせ二人ぼっちなんだ。離れても、一緒にいても、どうせ苦しい。なら私はどっちを選ぶ?傷の舐め合いでもいいから、一緒にいたい?
横でうつらうつらし始める君を見て、まあどちらでもいいかと、吹っ切れてしまった。夢の中でもきっと二人ぼっち。今はただ、このままでいたい。

3/17/2024, 9:48:32 AM

怖がり

私は昔から怖がりであった。
あれもそれも怖かった。でもいつしか怖くなくなった。
あなたが横にいてくれるようになったから。

3/16/2024, 9:58:10 AM

星が溢れる

きらきら輝く一等星を見つめていた。
いつの間にか、どれが一等星か分からなくなった。
どこを見ても星しかなかった。これは何座?なんて柄にもなく聞いてみた。こんなにもたくさんの星が溢れているのに、よく覚えられるね。やっぱり私は君には敵わない。

3/15/2024, 8:42:00 AM

安らかな瞳

信じられないぐらいに彼の瞳は安らかであった。
いつも私の事を睨む瞳とは真反対、それはしっかりと人間の瞳だった。ああ彼もちゃんと人間だったのだ。安堵したわけでもないが、なんとなく心が満たされた気がした。
彼には私しかいなくて、私がいなければ何も出来なくて。
私の作るご飯を食べ、私がいれたお茶を飲んで、私の言葉で感情を左右されて、次の行動を決め、最期でさえ私が定めてあげた。
ふと自分の頬を撫でてみた。まだ彼に殴られた感覚が残っている。馬鹿だなあなんて思いつつ、横たわる彼の顔を覗いてみる。……うん、そうだ、昔きみはこんな顔をしていたね。終わってから思い出すなんて、私も大概馬鹿だ。
さて、これからどうしようか。きみと同じところに行くのも悪くないけど。取り敢えず、もう何年もしていなかった優しい口付けをした。少し鉄の味がした。

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