瀬戸

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安らかな瞳

信じられないぐらいに彼の瞳は安らかであった。
いつも私の事を睨む瞳とは真反対、それはしっかりと人間の瞳だった。ああ彼もちゃんと人間だったのだ。安堵したわけでもないが、なんとなく心が満たされた気がした。
彼には私しかいなくて、私がいなければ何も出来なくて。
私の作るご飯を食べ、私がいれたお茶を飲んで、私の言葉で感情を左右されて、次の行動を決め、最期でさえ私が定めてあげた。
ふと自分の頬を撫でてみた。まだ彼に殴られた感覚が残っている。馬鹿だなあなんて思いつつ、横たわる彼の顔を覗いてみる。……うん、そうだ、昔きみはこんな顔をしていたね。終わってから思い出すなんて、私も大概馬鹿だ。
さて、これからどうしようか。きみと同じところに行くのも悪くないけど。取り敢えず、もう何年もしていなかった優しい口付けをした。少し鉄の味がした。

3/15/2024, 8:42:00 AM