この世界の、全ての国を渡りきった。
「旅の終点」は、見つからなかった。
この世界の一番始めに目覚めた場所で、今までのことを振り返る。
彼と生き別れてから、どれくらい経っただろうか。
この世界の旅で、たくさんの人と出会った。旅を共にする相棒とも出会った。
いろんなことを経験して、いろんな感情に揺さぶられて、いろんな場所で称賛されて。
もちろん楽しかった。しかし、彼を探すと言う目的を、一度たりとも忘れたことはなかった。
(どこにいるの…)
海を見つめる。空を見上げる。
その水の揺らぎ、星々の輝きの中にさえ、彼を探さずにはいられなかった。
小さな相棒が飛んできた。心配そうに見つめている。
大丈夫だよと頭を撫でながら、重い腰を上げた。
宿に向かって歩を進める。
かつてこうして並んで歩いていた人が「帰ってくる」のを夢見て。
【終わりなき旅】
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旅と聞いて一番に浮かんだゲーム。
ネタバレしないように書いたつもりですが、どうでしょうか…
「ごめんなさい」
自分のせいなのに口答えしてごめんなさい。
被害者ぶってごめんなさい。
無能でごめんなさい。
生きててごめんなさい。
ちょっと強く言われただけなのに。
過去のトラウマがよみがえって、あのときの「口癖」が勝手に出てくる。
彼はすぐに、「ごめん、言いすぎた」と言いながら抱き締めてくれた。
違うのに。自分が勝手に過剰に受け取っただけなのに。全然言い過ぎなんかじゃなかったのに。
ごめん。本当にごめん。
満足に怒りをぶつけることもできない、こんな煩わしい人間になっちまって。
でも、こんなヤツを受け入れてくれて、そばにいてくれるこの男には感謝しかない。
いつか、ちゃんと言えるようになりたい。
まっすぐ怒ってくれてありがとう、
好きになってくれてありがとう、
って。
【「ごめんね」】
衣替えの時期はとっくに過ぎたのに、彼女は未だ長袖のままだった。
そんな彼女を無意識に目で追っていて、気づくと僕は彼女のことばかり考えていた。
ある日、買い出しに出ていると、彼女を見かけた。やっぱり肌は見せていない。
彼女は大きな男と一緒にいた。
なんか不思議な組み合わせだ。そう思ってもう一瞥だけして帰ろうとしたとき。
彼女が、上着を脱いだ。
下は、半袖だった。
短い袖からのぞいた腕には。
龍の刺青。
一瞬にして釘付けになる。
大男が慌てたように上着を彼女の肩にかける。その手を彼女は煩わしそうに払った。
どうしよう、とんでもないものを見てしまった。
それに。
彼女のことを、もっと好きになってしまった。
【半袖】
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このアプリと出会って今日で一年。あのときのテーマもなぜか戻って来ました。一年周期なんでしょうか。
記念日と言うことで一年前のリメイク、ではないですが書きました。成長したんでしょうか。してて欲しいですね、書くの好きなので。
この一年でたくさんの短編を書いてきました。
文章を書いて、たくさんの人に見ていただいて、評価ももらって。
楽しいですね、とても。本当にありがとうございます。アプリの製作者様、見ていただいた皆様に感謝。
これからもよろしくお願いいたします。
ある者は願った。
月よ、そのまま沈んでくれるなと。
その者は、永遠の夜を望んでいた。
またある者は願った。
月よ、もう二度と昇ってくれるなと。
その者は、永遠の朝を望んでいた。
その者らの願いはあまりに強すぎて、月は困惑して、やがて欠けてしまった。
その欠片が、これ。
この世界を滅ぼした、隕石。
これが落ちて大気が乱れ、ここには昼も夜も無くなった。
少々大きすぎるので今はこのように移動させることもできずそのままなのだが、研究棟に持ち帰れば天体研究の最上級のサンプルになる。
…何?なぜ科学者なのに非科学的な話をするのかって?はは、仕方ないだろ、事実なんだから。
ここは科学と非科学が入り交じる世界。そりゃ私も非科学的な話のひとつやふたつ信じるさ、それが『事実』ならね。
科学の世界に入ったって、非科学を否定する訳じゃない。
…私も月に願ってみようか。『奇跡』でも起これば、叶うかも知れないだろう?
さて、何を願おうか。
【月に願いを】
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なんか思い付いて書いてはみたけど、
頭よさげな話、書けないっす…
雨と雷の音が部屋の中にまで入ってくる。
その音のお陰で布団に入っても眠れずにいると、電話がかかってきた。こんな時間に誰だと思ったら、つい数時間前に帰っていったばかりの彼氏だった。
「眠れない」というので、少し話をした。
ぽつぽつと他愛のない会話をする。しかし外が光る度に、その会話は中断される。
そういえばアイツ、雷苦手だっけ。おそらく電話の向こうでは耳を塞いでいるんだろう。
電話の時間が二時間を超え、少し眠くなってきたところで、会話も途切れる。
寝落ちしたのかと思って切ろうとすると、電話口から微かに鼻をすする音が聞こえた。
どうした、と声をかけるも返事がない。もう一度声をかけようとしたら、
「会いたい」
涙声の、甘えるような小さな声が静かな部屋に溶けた。
その直後、外がひときわ眩しく光って、すぐに雷の音が聞こえる。
…胸が苦しい。愛しさが募る。
さっきの声につられて出そうになる涙をぐっとこらえて、「今から行く」とだけ伝えて、急いで上着と傘だけ持って家を出る。
あっちに着いたら、めいっぱい抱き締めてやろう。
それで、アイツの目から流れる雨が、少しは止むといいけど。
そんなことを思いながら、全速力で走った。
【降り止まない雨】