世界が待ち望んだタイムマシーンがついに完成した。
記念に抽選で当たった人に無料試乗を提供するとのことだったので試しに応募してみたら、まさかの大当たり。
それでこの間、試乗に行ってきた。
けど、今と違う時間を見るって、そんなにいいもんじゃなかった。
過去は記憶にあるくらいがちょうどいいし、未来も思い描いているだけのほうが、生きる理由ができていい。
それに思ったんだ。
お前と生きてる「今」が一番幸せなんだって。
【タイムマシーン】
いつもより近い距離で、火照った顔を突き合わせる。
頭がぼーっとする。
それでも、この瞬間が嬉しくて。
それは相棒も同じようだ。
二人同時に吹き出す。
熱い体を寄り添わせながら、食べかけのまま冷めてしまったおつまみを横目に、ジョッキを持って何度目かの乾杯をした。
【特別な夜】
ただそれだけの理由で来るのがそんなにいけないのかよ。
玄関先で立ちつくし、泣きそうな顔で呟く相棒。
時間を気にしろってことだよ、と返しながら、きつく握りしめているその手をそっと包んだ、午前2時半過ぎ。
【君に会いたくて】
相棒が書いていた日記。
胸に風穴を空け、眠り続けている持ち主を横目に、表紙を見つめていた。
開けない。
中身は、オレと、想い人のことでいっぱいだと知っている。
見なくても分かる。だから開けない。
相棒はどんな風にオレを語るのか。どんな風に、想い人を語るのか。
知った後に漏れ出る感情が、容易に想像できる。
日記の中の想い人の名前を全部オレの名前に上書きしてしまいたいほどの嫉妬と、そんな気持ちを抱いてしまう自分への嫌悪。
惨めになりたくない。己の保身のために、開かないでいる。
かといってそんな自分も別に好きではない。
相棒にとっては、一番大切であろう私物。
でもオレにとっては、どう転んでも良くない感情を与える、呪いのような代物。
ごめん、と心の中で呟きながら、ただ、表紙を見つめていた。
【閉ざされた日記】
お前以外に使おうなんて思えない言葉だ。
【美しい】