「永遠に」
貴方の瞳が好きだった。
私の隣で、少し照れて笑う顔が好きだった。
ハスキーな声も、少し猫背なところも。
手を繋いた時に、照れ隠しに指先や掌をくすぐるところも。
貴方の何もかもが、全てが好きで。
貴方を見つめて、貴方の声を聞いて。
貴方に触れて、貴方に抱かれて。
そんな日が永遠に続くと思っていた。
でも、終わりは突然やってきて。
貴方の隣は私の指定席ではなくなった。
他の子が、私の立ってた場所にいる。
そこは、私の場所なのに。
その人は、私のモノなのに。
見たくない。
聞きたくない。
信じたくない。
渡したくない。
……許せない……
どうすればいい?
何をすればいい?
悩んで、苦しんで、泣いて、叫んで。
そして、出した答え。
哀しみで狂った私が出した答え。
妖しく光る包丁。
呻く貴方。
彼女は一緒に殺してあげない。
あの世でも貴方と一緒にはしてあげない。
これで、貴方は永遠に私のモノ。
そして、私も永遠に貴方のモノ。
「理想郷」
この世に理想郷はあるのだろうか。
皆が理想通りの行動が出来たら、そこは理想郷になるのだろうか。
理想を語るのは簡単で。
でも、成し遂げるのは難しくて。
理想を口にすると、囃し立てたり馬鹿にしたりして、「綺麗事」と言う人がいる。
少しでも理想に近付こうと善行をしても、「偽善者」と言う人もいる。
でも、そんなどうでもいい外野の声になんか、惑わされたくない。
理想を語るだけで全く行動が伴わなければ、誰に何かを言われてもしょうがないけど、今、頑張ってるその時なら。
何もしない、関係のない外野のヤジなんてただの騒音。雑音。
綺麗事でも、それを口にする事さえ出来なくなったら、駄目だと思う。
偽善でも、よく言われる「やらない偽善より、やる偽善」(ちなみに、この元ネタは2ちゃんねるらしい)。その通りだと思うから。
よく有名人が募金すると、「売名行為だ!!」とかって言う人もいるけど、誰にも迷惑かけないし、むしろそれで助かる人がいるのに、何で文句言うの全くわからない。
犯罪や人に迷惑をかけて手に入れたお金なら問題だけど、人助けの為のお金に綺麗も汚いもあるか?って思う。
金も手も出さんヤツがグダグダ文句言うな!!口出したきゃ、金か労働力か知恵か、兎に角何か出せよ、って思ってる。
だから。
人にどう言われようが、どう思われようが。
どんどん理想を口にして、良い思う事はすればいい。
それが間違ってたら、謝ったりやり直せばいい。
不安とか、心配とか、人目とか、噂とか。
そんなどうでもいい些末な事に振り回されて、理想から遠ざかる方が、もっと良くないと思うから。
もしかしたら、そうやって皆が心置きなく理想を追える場所が、理想郷なのかもしれない。
まだ出来上がってないけど、これから出来上がる、そんな理想郷。
「懐かしく思うこと」
子供や学生を見ると、「あの頃はこうだったな」とか、「あ~、わかる、そうそう。」とか、懐かしく思う。
もう戻れない時代で、その頃の自分の甘酸っぱい思い出を思い出したりして。
もしその頃に戻れるなら、って考えた事もあるけど、結局同じ道を選ぶだろうし、同じ失敗をすると思う。
戻れないからこそ、唯一無二だからこそ、懐かしくて、こそばゆくて。
自分と同じ様な熱さとか、間違ってる情熱とか、行き過ぎた正義感とか。そんなのを見た日には、もう恥ずかしくて「い~っっ」なる。
でも、応援したい。
よく「最近の若い子は」とか、「〇〇世代は」とかって言うけど、みんな自分が通ってきた道だから、温かい目で見ればいいと思う。
自分が通ってきたからこそ恥ずかしいかもしれないけど、自分もそうやって許されてきたんだから、見守ってあげればいいと思う。
ただ、明らかに間違っている時とか、痛い目に遭いそうな時には、助言した方がいいとは思う。
きっと、その子達も懐かしく振り返る日が来るから、その時に悔しい思いとか、悲しい思いをしないで済むように。
そう出来る大人でありたい。
「もう一つの物語」
時々ふと、考える。
もし、あの時こうしてたら。
もし、あの時あの道を選んでいたら。
もし、あの時あの人を選んでいたら。
今、私は違う人生を歩んでいたのかなって。
大体そういう事を思う時って、現実に思い切り満足していて今以外の世界だと嫌な時か、逆に現実が辛くて現実逃避している時。
現実が良くての時は満足感が上がるだけで何の問題もないけど、嫌な時はちょっとお疲れの時もあれば、相当追い詰められてる時もある。
現実が辛すぎて、そんな事でも考えないと居られない程、今この場所にいたくない時。
でも。それでも。
今までの人生で何度も分岐点があって、何度も道を選んで。その時その時は、精一杯悩んで考えて選んだ道。
その時の自分を否定したくない。
それに、もし違う道を選んでも、もっと酷い事になってたかもしれない。
仮にその道を選んだ人が幸せになっていたとしても、自分がその場所に居た時にそうなるとは限らない。
きっと、何処に居ても。誰といても。
悩んだり、辛かったり、苦しかったり。
だから、今は、この場所で。
この物語を生きていく。
でも、その反面。
逃げるべき時は逃げないといけない。
この場所が間違っている事に自分でちゃんと気づいて、気づける自分になれた事が、この道を選んだ意味になる。そして、この場所から他の場所に行く。
それも自分の選択で、自分で新しい物語を書き始めるだけだから。
人生にはもう一つ物語なんてないと思う。
全部、自分が書くひとつなぎの物語。
自分で選んで、自分で責任を持つ、自分だけの、たった一つの物語。
この物語を、大事に、生きていく。
何度反省しても、後悔はせずに、生きていく。
「暗がりの中で」
闇に閉ざされた私の心の中は、ずっと真っ暗で、真っ黒で。
誰も信じられず、誰も求めず。
全てを拒否して、微かな光さえも差さない程の、本当の真暗闇だった。
そんな私に、貴方は微笑みかけて、言葉をかけて。
最初は貴方の存在は、私の目にも心にも映らなかった。
貴方の言葉も、全く私に届かず、響かず。
でも、貴方は根気良く、長い時間をかけて私の心の中に入ってきた。
少しずつ貴方の声が聞こえてきて、姿が見えてきて。
木漏れ日が木々の隙間から差す様に、貴方という光が私の中に差してきて、閉ざされた私が、少しずつ開いて行った。
そして、今まで、キチンと見えなかった貴方の姿が見えるようになり、私の扉も開かれて。
そしたら、貴方だけでなく、周りにいる他の人の声も聞こえるようになって、姿も見えた。
私の周りは、敵ばかりじゃなくて、実は暖かい人が溢れてた。
そんな当たり前の事に、やっと今気づけた。
何で今まで気づけなかったのだろう。
自分の辛さは見えて心を閉ざしたのに、何で人の辛さとか優しさが見えなかったんだろう。
貴方が光をくれたから、見えた。聞こえた。気づけた。
貴方にも、周りの人にも。
ごめんなさい、有難う。
これからも、私が駄目だったら叱ってください。
甘えてたら、言ってください。
辛い時に受け止めてくれる場所がある事を知った私は、前よりは強くなれたと思うから、キチンと受け止めて、考えて行けると思う。
そんな自分になれたと思うから。