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幸福
じぶんたちのつくったことばの
ていぎすら
きまらなくて
ああ
おろかなそんざい
めいていのうちにくりかえし
はてはあるのかないのか
わからぬから
いのりを
いのりを
どこへむかう
このふねよ
よいつぶれてあしどりおぼつかず
それでも
きざみつけよそのきせき
めのまえの
はかない、またあした、のために
耳を悪くし
胃を悪くし
肝臓を悪くし
足は元から悪かったのがさらに悪くなって
朝は光によって覚められず
夜は闇よりさらに深い闇に怯え瞼を下ろせず
今年ついに、目を悪くした
この土地へ来た頃には
ビルのあかりの四角がはっきりわかったのに
いまではなんと桃源郷の如し
もはや自分の肉眼では何も見えないが
かわりにそのイデアは鮮明に知り得る
若い頃傾倒したモネやゴッホの絵
あれらこそが真実を描いていたとようやく理解した
たしかに日々は過ぎ去る
得ては手放してきた人生
そろそろ躰すら手放す季節
たしかに日々は過ぎ去る
その季節もいまだ長く
永遠のように思われる
たしかに日々は過ぎ去る
この橋の上から眺める川の流れのように
だが、私はまだ流木のように
川底に執念深くしがみつく
流れのひとつひとつを
躰に刻みつけるために
私はまだ覚えている
清流を、激流を、濁流を
Les jours s'en vont je demeure
金よりも大事なものを手に入れるために
金を稼いでいるはずだった
だんだんと入れ替わった
手段と目的だったものが、目的と手段に
気づいた時には
私の手元にはたくさんの数字
価値を決めて媒介するもの
ただの仲介者でしかない
仲介者は失敗した
いや、雇い主の私の失敗かもしれない
仲介者は市場でしか使えない
その外にあるものは1つも買えない
あの子に直してもらった安いシャーペン
お小遣いを貯めて買ったプラモデル
夏休み、冬休み、春休み
地元の友達と飲みに行く時間
遠くに旅行するための体力
あいつの話を聞く余裕
そして、あの人の笑顔
市場では一銭の価値もないのに
私がいくら積もうとも
どれもこれも1度手放した
1秒ごとに価値が跳ね上がるのを呆然と眺める
これらのうちの1つだって手に入れられないのだ
こんなに価値が上がると知っていたなら…
月夜の晩
窓枠は凍りつき
音は無く
星も無く
月と向かいあって
瞬きもせず
手は窓枠に引っついて
足は空気になるまで
ふと
月面にぎゅいんと吸い込まれた
灰の月の山
灰の月の湖
そこに真っ直ぐ
マッハのはやさで
落ちていく
いや、もう落ちたのかも?
お互いに
つけあった
傷ならば
痛んでもいい
心が離れても
その痕があれば
繋がっていられる