囃子音

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金よりも大事なものを手に入れるために
金を稼いでいるはずだった

だんだんと入れ替わった
手段と目的だったものが、目的と手段に

気づいた時には
私の手元にはたくさんの数字

価値を決めて媒介するもの
ただの仲介者でしかない

仲介者は失敗した
いや、雇い主の私の失敗かもしれない

仲介者は市場でしか使えない
その外にあるものは1つも買えない

あの子に直してもらった安いシャーペン
お小遣いを貯めて買ったプラモデル
夏休み、冬休み、春休み
地元の友達と飲みに行く時間
遠くに旅行するための体力
あいつの話を聞く余裕
そして、あの人の笑顔

市場では一銭の価値もないのに
私がいくら積もうとも

どれもこれも1度手放した
1秒ごとに価値が跳ね上がるのを呆然と眺める

これらのうちの1つだって手に入れられないのだ
こんなに価値が上がると知っていたなら…

3/8/2023, 5:17:08 PM