囃子音

Open App
3/5/2023, 1:03:25 PM

たまには

今日ぐらい

ちょっとだけ

明日きっと




気づいたら
目の前は真赤


そうしてまた
あとのまつり



3/4/2023, 2:20:16 PM

生まれるまえから一緒にいるの

苦しさをぜんぶうけとめて

私が吐き出したものすべて吸い込んでくれた

私の一部

砂漠のような肌

雪のように白く色あせて

何度も触ったから擦り切れた帽子に

入れ替えても萎んでいく綿

何度も入れ替えて

年々年老いていくあなた

年々年老いていくあたし

あなたと同じ形のぬいぐるみを探し回った

けれど気づいた

あなたを抱き寄せた唯一無二の感覚に

その人より暖かい体温に

あなただけが知る私

長い耳で私を包む

いや、腕だったかも?

誰よりもあたたかく

柔らかくキスを

幼なじみで

親友で

家族で

恋人で

私自身

大好き

愛してる

ボロボロでも

いっしょうあいしてる



3/3/2023, 1:27:26 PM

「この歳になると、行事に疎くなるね」
弟はそう言って少し笑った

おひなさま、祖母の家の押し入れに仕舞込まれて
もう10年は経つだろうか

人形というのは扱いが難しい
私は彼らの存在を持て余していた

今更出すのも億劫で
かと言って、処分するのは心苦しく

私たちには、結婚して、子どもをつくって
家という重荷を継がせる気も、その必要もない

私たちは自由である
自由であるはずである

ひなまつりもこどもの日も
もう必要がないくらいの大人の楽しみは手に入れた

なのになぜこんなにさまざまなことに悩む
人形の処分とか、何年も先の稼ぎとか

生かすも殺すも私次第
それは、私自身の処遇だって

私は私の手の内に
それがひなまつりを祝わなくていいということ

それが大人になるということ
でもそれがあんまり恐ろしくて

私と人形には未だに判決は下されず
今年も押し入れに閉じ込めておく





3/2/2023, 12:40:49 PM

希望とは

深く暗く湿った穴の底に差す

地上からの一筋の光

あなたの手元を照らす

あなたがまだ死んでいないことのしょうめいに

たとえ光の出どころが

無謀なほどに上にあろうとも

その光のために

あなたは闇の底で死ぬ決意ができない

3/1/2023, 12:48:01 PM

お金が欲しい
恋人も欲しい
行きたいところもある
学びたいこともある
なし得たい夢もある
タイムマシンだって乗りたいし
会いたい人だっている
幸せになって欲しい人もたくさんいる

でも
そういうさまざまな欲求の対極で
静かに佇み微笑んでいる
圧倒的権力

「死にたい」という欲求
大仰にいえば「希死念慮」

どんな欲求も
全部飲み込んでしまう
神のように畏れるべき存在

私はその玉座の前で
その存在の姿を見ることなく
ただひたすら
地面に頭を擦りつけるしかない

Next