「この歳になると、行事に疎くなるね」
弟はそう言って少し笑った
おひなさま、祖母の家の押し入れに仕舞込まれて
もう10年は経つだろうか
人形というのは扱いが難しい
私は彼らの存在を持て余していた
今更出すのも億劫で
かと言って、処分するのは心苦しく
私たちには、結婚して、子どもをつくって
家という重荷を継がせる気も、その必要もない
私たちは自由である
自由であるはずである
ひなまつりもこどもの日も
もう必要がないくらいの大人の楽しみは手に入れた
なのになぜこんなにさまざまなことに悩む
人形の処分とか、何年も先の稼ぎとか
生かすも殺すも私次第
それは、私自身の処遇だって
私は私の手の内に
それがひなまつりを祝わなくていいということ
それが大人になるということ
でもそれがあんまり恐ろしくて
私と人形には未だに判決は下されず
今年も押し入れに閉じ込めておく
3/3/2023, 1:27:26 PM