名前の無い音

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5/16/2022, 4:18:32 PM


あなたを忘れたい

5/15/2022, 10:50:46 PM

『記憶』

書きたかった

でも

記憶を たどってしまったら
どうしようもなくなってしまったよ

バカだな
ずいぶん昔話になったのに

だから 春は嫌いだ
私から 何でも 奪っていく

※ ※ ※

最初に出会ったのは バイト先
大学生だった彼は 私より歳上だったけど
隣を歩くと 妙に居心地が良かった

私にとって 初めて出来た 好きな人
そして 初めて出来た 彼氏

本当に不思議な人だった
いつも 変な話ばかりして
笑って 笑って 笑ってた
たぶん 一生で一番笑ってた

ずっと ずーっと
こんな毎日が続くんだろうなって
思っていた

何度目かの春が来る少し前
『ちょっとだけ 実家に顔出してくる』
そう言って 彼は帰省する事になった
なんてことない 2泊3日だって

しばらく会えなくなるねって
話した日のバイト終わり
いつもの駅の改札前

「じゃあね」
「またね」
「電話するね」

二人で 手を振りあって 別れた
彼は 改札を抜けて 一回振り返って
私は それを見送って 手を振って

いつものように
いつもとおなじに
何も疑わずに
何も思わずに

手を振って 別れた
ただ それだけだった


それだけだったんだ

5/14/2022, 4:59:40 PM

彼女はとても憤慨していた。なぜなら……



今日は文章が書けないから!
時間が足りないから!

あーもうっ!!!

明日に書くっ!
そして 今日は寝るっ!

おやすみなさいっ!!

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
『憤怒』

ふんぬ ふんぬ
役に立たない 自分に

ふんぬ ふんぬ
迷惑ばかりかける 自分に

ふんぬ ふんぬ

それでも 生きていくしかない

溢れそうな 言葉を
呑み込んだり 吐き出したりして

5/13/2022, 3:38:43 PM

『休日』



 もう どれくらいになるんだろう

さっきから 鏡を見ながら なにやら格闘している
僕はスマホから顔を上げて 思わず声をかけた

「なぁ なにやってんの?」

テーブルの上には新聞紙
読んでいる様子は これっぽっちもない

「んー 前髪 切ってるけど 決まらない……」

後ろから 覗き込んで見ると
どうやら 前髪を切ってるらしい

「いやいや そんなに切ってたらさ
前髪 無くなるんじゃない?」

「えっ!」

振り返ったその顔は
今にも 泣きそうだった

「冗談だよ」
「うそっ 変? 切りすぎてる?……」

彼女は 寄り目になりながら
自分の前髪を引っ張って 一生懸命気にしている

「切りすぎてないよ 大丈夫だよ」
「……うそ」
「うそじゃないよ」
「……うそ」
「はいはい かわいい かわいい」

僕は そう言いながら 手を伸ばして
子どもに そうするみたいに
頭を ワシャワシャと 大袈裟に 撫でた

その手を 軽くあしらいながら
彼女は また 鏡に向かう

「ん~ やっぱり 切り過ぎた?」

どこにも行かない
どこにも行けない
休日の昼下がり

窓から入る日差しが 気持ちいい

柔らかな 光の入る レースのカーテンは
二人で選んだ カーテンだ

彼女が 僕の部屋に来るようになってから
この部屋には 色が生まれた

きっと 一人じゃ選ばなかった色
きっと 僕には見つけられなかった色

僕は 君と選ぶ色が好きだ

「あーあ どっか行きたかったなー」

そう 言いながら
また 前髪と格闘している


突然 彼女が振り向いた

 「ねぇ もしかして
前髪 切りすぎたから 嫌いになった?」

「バカ そんなんで 嫌いになるか」
「だって……」

僕は すっと近づいて
彼女を後ろから 優しく抱きしめた

「これでも 嫌われてるって?」

 
しばらく じーっとしていた彼女が
にんまり笑って 言った

「髪 切ってあげようか?」
「え…… 結構です 遠慮しておきます」


僕は もうしばらく
この手をほどかないでおこう

今ほどいたら トラ刈りになりそうだ ……

5/12/2022, 10:56:38 AM

『クリームソーダの色』

自分の好きな色 と 自分が似合う色
これが同じではないと気づいたのは
結構 大人になってからだ

昔から 気づけば『きみどり色』のものばかり
選んできた気がする

父には
「アマガエルの呪いだ」
と 言われているが
呪われるほど アマガエルとふれ合った記憶はない

※ ※ ※

小学1年生の時 うまれてはじめて
『クリームソーダ』というものを知った
アイスとジュースが一緒になってて
しかもジュースは炭酸だという
炭酸は 未知の体験だった

「お待たせしました~」

届いたクリームソーダは
透き通った緑色に白い帽子が
よく 似合っていた

初めて混ぜたクリームソーダ
あの混ざりあった色を 私は忘れない
忘れられない

何年たっても
何十年たっても
あの時の なんとも言えない
幸せな気持ちを 忘れられない

きみどり色のものを手にとると
なんとなく あの時の 幸せな気持ちが
よみがえってくる


今の自分は 子どもの頃の 記憶や経験
それの延長線上で 生きている
外見が変わっても 年を取っても
中身にはいつも あの頃の自分がいる

つまり大人は
『子どもの頃の自分に操縦されてるだけ』なんだな

あぁ 自分よ
操縦は慎重頼むよ
もう 結構使い込んで
オンボロになってきたからさ




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