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1/13/2025, 12:00:16 AM

【あの夢のつづきを】

今になってしまえばあんな出来事は過去のことだと簡単に割り切ることが出来てしまう。
そうやって自分の中で整理してしまえるほど長い年月が経ってしまったのだと実感し、その長い年月の中で自分はどうしようもないほど捻くれて歪んでしまったんだという現実を突きつけられる。

でも本当は出来ることならばあの頃の夢のような日常にいつでも戻りたいと切実に願ってしまう。
それぐらいあの頃は本当に純粋で真っ直ぐで心から楽しさを感じていた。

今のしんどくてつらい現実のなか、ふと蘇るあの頃の記憶は宝物のように輝いていて、でももう二度と戻れないという現実を叩きつけてきて生きるのがまたつらくなる。



できることならばもう一度あの夢の続きを

12/29/2024, 6:19:19 AM

【冬休み】

社会人になって早数年。
冬休みなんてものは存在しない会社に就職してしまったためこの時期は繁忙期として大変な目にあっているが、世間が年越しのために慌ただしく変わっていく季節は嫌いではない。
この寒さが一段と深くなり新年を迎える準備のような澄んだ空気の香りは学生時代の大切な記憶が引き出される。
今はもう会うことの無い大切だった人……
お互いがずっと隣にいるのが当たり前だと思い込んでいたあの頃の記憶だ。


ーーー遡ること数年前

高校生活最後の学年。
あの日も年末近くの澄んだ空気の香りがする冷え込みの厳しい天気だった。

駅に到着した電車をおり、学校に向かう学生たちの列に紛れ込みながら目的の人物を探す。
あの人のことだからおそらくまだいないだろうが……
一応周囲を慌ただしく行き交う人々の中を探してみる。
それらしい人がいないのを確認して学生たちの群れからそっと抜け出し、建物の隅に寄る。
背負っているリュックの中身が潰れないこと祈りながら建物に背中を預け、ポケットからスマホを取り出す。
案の定あの人から寝坊したから到着が少し遅れるという連絡が入っていた。
まあそんなところだろうと時間を潰すために日課であるネット小説を読み始める。


「おはよう。遅れてごめんね」
そんな声が聞こえてびっくりして顔を上げるとかなり急いだのか少し息を切らしたあの人が立っていた。
いつもなら近づいてきたときには気づくのに今日はちょっと小説に集中しすぎたみたいだなぁと少し反省しながら遅れてきたことに文句を言う。

「おはよ。今日も遅かったね。昨日もあれだけ早く寝ろと言ってたはずなんだけど、どうせまた夜更かししてたんでしょ」

「ほんとごめんって。これでもめちゃくちゃ頑張っていつもより早く寝れたんだよ?まあ言い訳にしか聞こえないと思うけどさぁ。お詫びになんか奢るよ」

「言い訳は一応聞いておくけどさ。はぁ、まあちゃんと寝れたのならよかったよ。今日はなにを奢ってもらおうかな〜」

「明日から冬休みに入るからあんまり高いものはなしだよ。遊ぶお金無くなっちゃう」

「えーケチだなぁ遅れてきたくせに。許さんぞ?」

そんなことを話しながらいつも通り学校への道を歩く。
誰かさんが寝坊をしたせいで同じ電車に乗っていた生徒たちの群れとはかなり離れてしまって、周りに同じ学校の生徒はほとんど見当たらない。
最初の頃は遅刻したらどうしようとかみんなと離れて迷子になったらどうしようとかちょっとマイナスだったり変なことを考えてた気がする。
でも、今は周りを気にせずあの人とふざけたような他愛もない会話をしながら歩けるこの時間が案外気に入っていたりする。

「何を奢ってもらうかは帰るまでに決めておくよ。楽しみだなぁ!」

「うん。ちゃんと決めておいてね。その反応はなんか怖いんだけど?あんまり高いの無理だからね?」

「わかってるってー。そういや今日って終業式とそのほかの連絡事項だけで午前で帰れるよね?」

「確かそうだったはずだよー。何もしないけど早く帰れるのってテンション上がるよね。」

「それな?なんもないけど終業式だけで帰れるの嬉しいよね。今年は課題少ないといいなぁ……」

「課題は頑張るしかないさ!あっ今日って部活とか特に予定ないよね?奢る約束もしたし一緒に帰ろうぜ」




ーーーー一旦保存ーーーー

12/24/2024, 2:40:39 PM

【イブの夜】

今日がなんの日か?
なんて気にしながら楽しめていたのは学生時代までだ。
社会に出てからは仕事に忙殺されそんなこと考える暇もなかった。

就いた仕事柄カレンダー通りに休みなんてあるわけもないし、季節ごとにあるゴールデンウィークやお盆休み、年末年始などの長期休暇なんてもってのほか存在しない幻の休日だ。
次から次へと訪れる繁忙期に目まぐるしく対応していたらいつの間にか1年は終わっている。
そんな日々が日常と化している自分にとって今日がなんの日なのかなんて気にすることもない。
なんてカッコつけてみるが、恐らくただ単にイベントや記念日に興味が無いだけなのかもしれない。やはり己はつまらない人間だなと嘲笑した。

そんな人間でも世間の流れを知ることが出来ているのは、たまたまスマホに登録されているカレンダーのおかげだ。
最近のスマホのカレンダー機能とても優秀でイベントや記念日の度に通知を出してくる。
それでなんとなく把握出来ているだけだ。
それが無ければ今日がクリスマスイブなんて気づくわけもない。

なんの変哲もないただの社畜である自分にとってはクリスマスイブなんてとくに何の関係もないただの日常と同じだ。
一緒に騒げるような親しい友人もいないし恋人なんてもってのほかだ。いるはずもない。
たまに連絡を取り合う友人ですら最近恋人ができたらしく今日もそちらと仲良くしているのだろう。何の連絡もない。

そんなどこに出しても恥ずかしいようなぼっちを極めた自分なんて誰も気にしないし、いなくても変わらない。

そんなふうに少し脱線しながら卑屈にものを考えてみるが、そもそも今日はもとから出勤日なのだ。
クリスマスイブなんざ関係ない。仕事だ。
明日のクリスマスですら関係ない。仕事だ。
しかも年末年始に向けて様々な準備があるためわりと忙しかったりする。
クリスマスイブの夜なんてリア充どもが仲良くお楽しみ中であるだろうし、実際仕事中に目の前で仲良くしているところを散々見せつけられまくっているので腹はたつが、わりと慣れてきているのだ。正直どうでもいい。
とりあえず鬱陶しいから目の前でやるのをやめろとは思う。
そんなことを考えながら、やらなければいけない仕事についても思考を回す。
あの作業は半分ぐらい進んでるからまだ余裕はあるが、こっちの作業は年末に入る前に終わらせなければならないから急がなければならない……あれ?意外とやること多いな?

この仕事は休みは取れないし、辞めたくなるぐらい嫌なこともしんどいこともたくさんある。
相手に対して殺意が湧くことも多くない。
でも意外と楽しんで仕事をしているのも事実なのが腹立たしい。

明日はどんな風に作業を進めようか。この案件はほぼ終わっているからあとは簡単な作業だけだ。その作業は明日中に出来る状況が揃っているから楽しみだ。
そんなふうに思考を回し、簡単に楽しめてしまう自分がいるのがちょっと怖いが。

仕方ないこれが自分の性分なのだと割り切りながら、そういえば明日はクリスマスだということを思い出す。

仕事以外特に予定なんてないし、やることも無い。

帰りに少しだけ寄り道してケーキを買おうかな?チキンも捨て難いなぁなどと呑気に考えながら今日の仕事を終え帰路に着く。

最初に考えていた行事ごとへのマイナス思考なんざ元からなかったかのように、クリスマスを楽しもうとし始めている。
そんな単純な性格も悪くは無いと少しは思うのだった。

12/23/2024, 10:48:48 PM

【プレゼント】

あれは誰から貰った“もの”だったか……

ふと頭の中にかつて愛用していた“もの”が浮かんだ。
別に過去を思い振り返っていたのでは無いが、なんとなく気になって仕方なくなってしまった。

残念ながら現在は手元にない。どこにしまったのか。
はたまた壊れてしまったのか。無くしてしまったのか。
それすらも思い出せないが、少しずつ最後に使用した日を脳内から探し出す。

どうしよう。何も思い出せない。

少し……いやかなり困りながら今に一番近いであろう記憶をなんとか手繰り寄せることに成功した。
それは数年前に使用した記憶だった。
しかしポンコツである脳みそには最後はどこに片付けたのかという大事なところまでは繋がっていなかった。

最悪だ。なにも参考にならなかった。
現物を見て触れれば1番手っ取り早く思い出すことが出来たのにと心底後悔しながら、発想を変えてみる。

今度は貰った日のことから思い出そうと、できる限り記憶を遡りながら、貰った日を思い出してみる。

少しづつ記憶を遡っていくと、とても大切に大切に使っていた思い出がたくさん脳裏に浮かびとても穏やかで幸せな気分になれた。
だが、肝心の誰から貰ったのかがどうしても思い出せない。

ここまで来ると意地でも思い出したくなるが、そうすると堂々巡りになってしまい結局思い出すまでに至らないのがこの脳みその悪いところだ。