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【イブの夜】

今日がなんの日か?
なんて気にしながら楽しめていたのは学生時代までだ。
社会に出てからは仕事に忙殺されそんなこと考える暇もなかった。

就いた仕事柄カレンダー通りに休みなんてあるわけもないし、季節ごとにあるゴールデンウィークやお盆休み、年末年始などの長期休暇なんてもってのほか存在しない幻の休日だ。
次から次へと訪れる繁忙期に目まぐるしく対応していたらいつの間にか1年は終わっている。
そんな日々が日常と化している自分にとって今日がなんの日なのかなんて気にすることもない。
なんてカッコつけてみるが、恐らくただ単にイベントや記念日に興味が無いだけなのかもしれない。やはり己はつまらない人間だなと嘲笑した。

そんな人間でも世間の流れを知ることが出来ているのは、たまたまスマホに登録されているカレンダーのおかげだ。
最近のスマホのカレンダー機能とても優秀でイベントや記念日の度に通知を出してくる。
それでなんとなく把握出来ているだけだ。
それが無ければ今日がクリスマスイブなんて気づくわけもない。

なんの変哲もないただの社畜である自分にとってはクリスマスイブなんてとくに何の関係もないただの日常と同じだ。
一緒に騒げるような親しい友人もいないし恋人なんてもってのほかだ。いるはずもない。
たまに連絡を取り合う友人ですら最近恋人ができたらしく今日もそちらと仲良くしているのだろう。何の連絡もない。

そんなどこに出しても恥ずかしいようなぼっちを極めた自分なんて誰も気にしないし、いなくても変わらない。

そんなふうに少し脱線しながら卑屈にものを考えてみるが、そもそも今日はもとから出勤日なのだ。
クリスマスイブなんざ関係ない。仕事だ。
明日のクリスマスですら関係ない。仕事だ。
しかも年末年始に向けて様々な準備があるためわりと忙しかったりする。
クリスマスイブの夜なんてリア充どもが仲良くお楽しみ中であるだろうし、実際仕事中に目の前で仲良くしているところを散々見せつけられまくっているので腹はたつが、わりと慣れてきているのだ。正直どうでもいい。
とりあえず鬱陶しいから目の前でやるのをやめろとは思う。
そんなことを考えながら、やらなければいけない仕事についても思考を回す。
あの作業は半分ぐらい進んでるからまだ余裕はあるが、こっちの作業は年末に入る前に終わらせなければならないから急がなければならない……あれ?意外とやること多いな?

この仕事は休みは取れないし、辞めたくなるぐらい嫌なこともしんどいこともたくさんある。
相手に対して殺意が湧くことも多くない。
でも意外と楽しんで仕事をしているのも事実なのが腹立たしい。

明日はどんな風に作業を進めようか。この案件はほぼ終わっているからあとは簡単な作業だけだ。その作業は明日中に出来る状況が揃っているから楽しみだ。
そんなふうに思考を回し、簡単に楽しめてしまう自分がいるのがちょっと怖いが。

仕方ないこれが自分の性分なのだと割り切りながら、そういえば明日はクリスマスだということを思い出す。

仕事以外特に予定なんてないし、やることも無い。

帰りに少しだけ寄り道してケーキを買おうかな?チキンも捨て難いなぁなどと呑気に考えながら今日の仕事を終え帰路に着く。

最初に考えていた行事ごとへのマイナス思考なんざ元からなかったかのように、クリスマスを楽しもうとし始めている。
そんな単純な性格も悪くは無いと少しは思うのだった。

12/24/2024, 2:40:39 PM