向かい合わせ
幸「ねぇ怖いんだけど、一階でいいじゃん」
私は首筋を固め優子の手首を握りながら言った。
優子「ダメだよ、『七不思議』通り3階のトイレの鏡でしないと意味ないから」
優子は目をキョロつかせながら2階への階段を上がる。
私達は今、優子の提案で夜の学校に七不思議の1つである『合わせ鏡の松野さん』が本当かを確かめに来ていた。
いつもとは雰囲気の違う学校に私達は怯えている。
『合わせ鏡の松野さん』とはうちの学校に伝わる七不思議の1つで、深夜1時旧校舎三階の女子トイレの鏡と手鏡を合わせ鏡にすることで、トイレの鏡に松野さんという人が映るというものだ。
私達がなぜこんなことをわざわざするかというと、その松野さんがイケメンだという情報を仕入れたからなのだ。
見てみたい
優子「電気!」
トイレの扉を少し開けて暗いことに気づいた優子はそう言った。
幸「これだよね」
いつもとは違う暗い廊下のせいだろう、優子はトイレが暗いことに気づかず、私は電気の位置が不確かになった。
優子「ちょっと安心だね」
明るくなったトイレに2人で入る。
幸「確かに、ちょっとは怖くなくなったね」
明るくなってもいつもとは雰囲気の違うトイレに多少の怖さはあるが、先程よりかは安心した。
優子「え〜と、後2分だね」
優子はスマホで時間を確認して言った。
今は0時58分ということを理解した。
幸「手鏡持ってきてる?」
私は先程スマホを出した優子のバッグを指差して言った。
優子「うん!あぁ〜る!」
優子は肯定したはいいものの、バッグを一応確認して取りだし確定させた。
幸「じゃあもう準備しちゃって、ちゃっちゃとしちゃお」
廊下を歩いてる段階で目的よりも早く帰りたいという気持ちが強くなってしまっていた。
優子「そんな急がなくても大丈夫だから」
優子は笑いながら言う。
優子のモチベーションは『イケメン』なのだ。
優子「よし!オッケー」
私が手鏡をトイレの鏡に合わせるように持ち、その間にいた優子が言った。
幸「時間は?」
優子「あっもうなってる!」
幸「えっ?!」
優子「あっ!!今見えた!」
幸「えっ?!」
"キー"
「君たち何してるだぁ!」
優子、幸「わぁぁぁーー!!」
急に扉が開き怒声が聞こえてきて2人で驚いた。
幸「びっくりしたぁー」
優子「ホント、あはははは」
私達は警備員さんにちゃんと叱られて帰路についていた。
幸「そういえばぁ、どうだったの?」
叱られる直前優子が「見えた!」と言っていたことについて聞いた。
優子「そうだぁ!忘れてた、あはははは」
気づいたら二人共怖さから解放されて、柔らかい喋り方になっていた。
優子「見えたよ!、松野さん」
幸「イケ•メン、だったぁ?」
そこが目的だったのだから聞いて置かなければならない。
優子「んん~普通かなぁー、あはははは」
幸「そうだったんだぁ、うふふふふ」
目的の結果は残念だったがいい思い出になった、そう2人で思うことにした。
幸「関係ないんだけどさぁ、あの警備員さんさぁ」
私は警備員さんに思うところがあったので、それについて話した。
優子「そう!そうだよね!警備員さん、めちゃイケメン!」
幸「だよね!!」
私が思ってたことを優子も共感してくれた。
優子「だってぇ絶対松野さんよりイケメンだったもん、あはははは」
幸「うふふふふ」
2人で笑い合ったことで一夏の思い出のできあがり
やるせない気持ち
僕はフルラソン、42.195kmを完走した。
ずっとそれが目標だった、それが僕にとっての有終の美になると思っていた。
もちろん完走した今も思っている、でも引っかかる部分はある。
どんなことでもそうだ、人は常に2つ以上の感情を持ちながら生きる生き物。
最後に到達するまでの過程で沢山の選択をしてきて、その選択に後悔をしたこともある。
でもそういう後悔も含めて僕は人生を完走しきった。
そこに後悔はない
海へ
『青は進め、赤は止まれ』
晴人「はぁはぁはぁ%#^:~"•✕_-」
久々に重たい体を動かしたせいだろうか、呂律がぶっ飛んだ。
裕二「あぁ?なんてぇ〜?」
俺も同じセリフを言うだろうというセリフを裕二に言われた。
晴人「だからぁ、もうすぐぅ、夜だってのにぃ、どこまでぇ、いくんだぁょ」
息が整うのが永遠に訪れないかのような声が出た。
裕二「そりゃ決まってるだろ」
こんなけ走ったんだ、大した理由じゃなきゃ俺の拳は人生初火を吹くことになるだろう。
裕二「あっ!青になった、行くぞ!」
晴人「ちょぉっおいぃ!」
大事な部分だけ言わずに裕二は走っていく。
しかも陽気に白い線の上だけを踏んで。
晴人「なんなんだよぉ〜」
俺もそう言いながら裕二の進む方へと走っていく。
しかし少しの反抗心で白い線は踏まずに。
裕二「ふぅ〜よし!着いたぁ!!」
節々が痛い体を持ち上げて、目の前を見る。
晴人「おぉい、裕二ぃ」
俺は火を吹く準備をした。
裕二「なんで拳出してんだよ」
裕二は今一番口にしてはいけない言葉を放った。
晴人「そりゃぁ、そうだろぉ!こんなけ走ってぇ、ただの海ってぇ、まじでぇ、いくぞ!」
絶え絶えの声で言葉を放った。
裕二「まぁ待てって、え〜と」
そう言って裕二は腕に巻いている腕時計型のスマホを見た。
裕二「あと5分!あと5分だけ待ってみろ」
なにがあるのか理由がわからなかった。
晴人「299秒、298秒、297秒、」
俺は火を吹くまでのカウントダウンをはじめた。
裕二「あはははは、なんのカウントダウンなんだよ」
295秒後にはわかるだろう。
晴人「10、9、8、7」
俺がずっとカウントダウンをしている間裕二は呑気にスクワットをしていた。
憎たらしいやつだ。
晴人「6、5、4」
裕二がやっと口を開いた。
裕二「来たぞ、ほら見ろ」
晴人「3、2、あぁ?」
俺はカウントストップしてただの海の方を見た。
すると、、、
絶句、感動
裕二「ふふん!すごいだろ」
そこには、青いはずの海が真っ赤に染まっていた。
まるで海外の知らない地に来たような感覚に陥った。
人生観が変わるほどの感動が押し寄せる。
晴人「これは、、」
裕二「マジックアワーってやつだ」
今日はこの海のように火を吹かないことにした。
晴人「ありがと」
俺の顔が少し赤らむ。
裕二「あぁ?なんてぇ〜?」
バレてない、マジックアワー万歳。
晴人「何も」
未来
私は未来がどこにあるのかわからない
過去はわかる、曖昧かもしれないがある程度覚えている
今はどうだ、今なんて直ぐに消え去るもの
生まれては消えてを繰返す、いわゆる「過渡期」というやつだ。
とりあえず、最初に戻ろう
未来とはどこに?
未来は一つではない、複数ある
なので未来とはすなわち『可能性』
この後起こり得る可能性が無限大に用意されていて、それが時間が経つことに可能性の数が減ってきた。
要するに僕が言いたいことは
時間は有限だから、未来の可能性が狭まる前に自分のやりたいことを早くしないといけない
可能性は歳を重ねるほどに減っていく
2日前
『数学と空』
快斗「はぁ〜雨じゃねーかよ」
僕は今日も塾に行こうと朝、外を出ると昨晩見た天気予報が外れていることにがっかりした。
舞先生「晴れてた?」
塾に着き、地下の教室に入るやいなや舞先生が僕に言った。
快斗「、、、降ってました」
僕は首を横に振ってから言った。
舞「あはは、テンション低いね」
快斗「そりゃそうでしょ、雨ですよ、外れてんすよ」
舞先生がいつものように意味のわからないことを言ったので不満を吐露した。
舞先生「そっかぁ〜、私好きだけどなぁ、雨」
快斗「やっぱ、意味不だな」
舞先生「あっそれまた言った!、やめてくれる、嘘は良くないよ」
快斗「別に嘘じゃないし、ホントの事だろ」
聞こえるかわからない声で言った。
舞先生「はいはい、今日の宿題は『君が嫌いな』確率の問題多めにしとくね」
聞こえてたみたいだ。
快斗「ちょっと!今回の試験範囲でもないのにそれは勘弁。わかりました、嘘をついていました、『舞先生は意味不ではありません』」
一応それっぽく宣言しておいた。
舞先生「んーなんか棒読みな気がしたけど今日は多めに見といてあげる。試験も近いし」
快斗「あざっす!」
一応頭を下げる
舞先生「じゃあもう授業始めよ」
快斗「えっ?!まだ僕しか来てないですよ」
舞先生「今日、君以外みんな休みだから」
快斗「はぁ?なんでぇ?9人全員?」
舞先生「もうリアクションいいから、始めるよ」
快斗「なんで僕がおかしいこと言ってるみたいになるんだよ」
本当に10人クラスなのに僕一人だけで授業が始まった。
快斗「疲れたぁ、もう1時間経ってますよ、マン・ツー・マンで!」
舞先生「えっ、マウス•トゥー•マウス?」
また意味不な事を言った。
快斗「疲れすぎて、ツッコむこともできねーわ」
舞先生「別にツッコむ所なんてないでしょ」
快斗「もういいわ、、」
舞先生「あはは、なんでちょっとキレてるの?」
快斗「だって!この問題の解がわかんねーから、、、先生みたいに」
例えだけは小声で言った。
舞先生「んん~これはぁ、」
聞こえてないみたいだ。
舞先生「それが解だよ。」
快斗「ん?」
まただ
舞先生「あっ今また、意味不とか思ったでしょ」
バレた
快斗「いや別に、、、」
舞先生「まぁとりあえず聞いて、私が『意味不じゃない』ってわかるから」
快斗「はい」
舞先生「この問題の解は『解なし』だから」
快斗「、、、」
舞先生「私を睨むな!ほらっ見ろ、この解答」
舞先生はテキストの解答を見せてきた。
快斗「確かに」
そこには本当に『解なし』と書いていた。
舞先生「ほらな、ふんっ」
快斗「何威張ってんすんか、それよりこんなわけわかんない解答、わかるわけないじゃないですか」
舞先生「こんなこと日常生活でもよくあるでしょ、『今日の天気みたいに』」
快斗「、、、、、、別に上手くないですよ」
舞先生「なんでよ〜」