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秘密の場所

誰もが持っている秘密の場所、だれからも見られることが絶対にない場所がこの世にはある


「おはよ!」
「おっおはよ、千夏さん」
登校時雑踏の中校門を抜けようとしたら急に話しかけられびっくりした。
「今日も元気よく行こう!えいえいおー!!」
今日も朝から千夏さんは元気がいっぱい。
千夏さんは元気なまま下駄箱置き場までダッシュしていった。
そんなこと起きないかなと想像を膨らませながら僕は雑踏の中校門を何もなく抜けていって、無事下駄箱置き場まで着いた。

「はぁ~」
そんなため息を出しながら外靴から上履きに履き替えるために下駄箱の扉を開く。
するとそこには手紙が入っていた。"直樹くんへ"と書かれている。
中身を確認すると
『直樹くん、話したいことがあるのでもしよければ今日の昼休み屋上に来てもらえますか。榎本千夏より』
そんなこと起きないかなと想像を膨らませながら僕は何もなく無事に上履きに履き替えることができた。

下駄箱置き場を後にして僕は中央階段で教室のある4階まで登る。同じ制服を着た人たちがまばらにいる。
「よっ!直樹っ!」
そういって1階と2階の間の踊り場で後ろから声をかけられた。友達の聡だ。
先に言っておく、これは想像ではない現実だ。
「おはよ、聡」
「あれ?元気ねぇ~じゃん、元気だしてこうぜ!えいえいおー!!」
その言葉は違う人に言ってほしかったのに、、、
「君は元気そうだね、なんかあった?」
僕は朝一番から聞き慣れた声を聞いてダルそうに聞いた。
「なんにもねーよ。朝なんだから元気でいかねーと」
「朝なんだから元気出ないんだよ」
僕は聡とは反対のことを言う。
そんなこんなで他愛もない話をしながら一緒に4階まで登り教室に入る。聡は隣の教室なのでもうすでに別れた。
教室に入るやいなや見回した。千夏さんはまだ来ていないみたいだ。
僕は教卓や黒板がある前ではなく後ろの扉から入る。
それはそこが階段からの直線距離である且つ僕の席が一番右後ろの端の席だからだ。
僕は扉を抜けて1秒もないうちにカバンを自分の机に置く。近いのはありがたい。

「おはよぉ〜」
僕が机にカバンを置く音で隣の席で突っ伏して寝ていた透を起こしてしまったようだ。
透はあくびをしている。
「今日も朝練?」
透は野球部で毎朝練習しているから聞くまでもないが一応聞いておく。
「そうそう、早く終わったから寝てたわぁ〜」
またあくびした。朝からこんなでこの後6時間もある授業を耐えれるのだろうかと心配になる。
そんなことを考えながらカバンを机の横にかけながらカバンから出していた1時間目にある授業の教科書を机の上に出した。

透とお互いの共通の趣味であるアニメの話をしていたらいつものいい香りがした。
と思ったら前の方の扉が勢いよく開き「おはよー!」と誰彼構わず言って千夏さんが入ってきた。
教室にいた数人の生徒たちの目が一気に千夏さんに向いた。
そして僕はがっくりした。
千夏さんはいつもと違い髪を下ろしていた。いつもは後ろで髪を結んでいるのに、、、
いつもと違うだけでこんなにも落ち込んでしまうものなのか。
もしかしたら彼氏でもできたのではないのかなと考えてしまう。


ここまで僕を観てきたあなたたちにならわかるはず、僕の秘密の場所が。
そう千夏さんも聡も透も僕が千夏さんのことが好きなことを知らないだろう。
僕の心の中は秘密の場所だ。

3/9/2025, 2:13:17 AM