モンブラコン*
~~~~~~~~~~~~~『大切なもの』
「クショボーズには2へい、テイちゃん♡には
5へい…はぃ…でけた♪︎残りばオラぬぉ♪︎」
オレとテイちゃんのマグカップに、2つの
スプーンで蜂蜜を配った姉さんは、残りの
蜂蜜(一瓶)に、ぬるいミルクを注ぎ、蜂蜜9割の
“ミルクハチミツ☆”を錬成した。
夕食後のオヤツタイムに突入しております。
モンスター姉弟です。解説はオレ、末っ子です。
「今日学校でさ~友達の助六がさぁ…」
「ピンクのボショボショ最高っ」
「そうだね、姉さん。…助六が、ピアス開け…」
…と言いかけた所で姉さんの拳が飛んできた。
テイちゃんが鍋つかみの手で受け止めてくれた。
「何?何?いきなりっ…テイちゃんありがと♡」
テイちゃんはクッキー作りを再開した。
「…おみぇ…ペアスしゅる気か?」
「しないよっ助六がピアスしたって話だよっ
オレはやらないよっ勧められたけど…」
…で、また飛んできた拳とテイちゃん。
「ありがとテイちゃん♡…勧められたけど、
痛そうで怖いからとか、そんな理由でしないん
じゃなくて。再生出来るから何をしても良い
なんて思ったことなくて。オレの身体は、ほぼ、
テイちゃんで出来てるから、大切なものだって
ちゃんとわかってるから…」
「うむ。」※姉は弟(兄)が受け止めると
解っていて鉄拳を飛ばしています。
納得した所で、テイちゃんのクッキーが
完成しました~♪︎ビターチョコチップはオレの♪︎
姉さんが、真ん中赤いジャムの花形クッキーに
夢中になっている間に、テイちゃんがオレに、
『ピアスしても良いんだよ?姉さん説得しようか?』と、手で伝えてきた。
テイちゃん…そゆとこだよ、
愛しくなっちゃうの、
大切にせずには、いられないんだよ。
モンブラコン*
~~~~~~~~~~~~~『my Heart』
「テイちゃんっは~よぅっはよこっこ~こっ」
某筍チョコ菓子をご飯と混ぜ合わせた偽筍御飯を食べきり、業務用ザラメを頬張っていた姉さんが、両手両足を広げて弟(兄)を誘っている。
今日はお花見です。村人が料理を持ち寄って、
食べて、呑んで、寝る。現在は寝るモード。
何人かの村人がビニールシートの上で寝転がっている横で、オレとテイちゃん(兄)が片付けをしていた所、ザラメまみれの姉さんが兄をご指名。
弟中毒の姉さんにしては我慢出来た方だ。
お花見の間、テイちゃんは村人の話の聞き役に徹していた。…というのもテイちゃんは話す事が出来ない。筆記や身振り手振りで会話をする。
手話も多少出来るのだけど、手話は手話を知っている人にしか通じない外国語の様なものだからと、基本的には即興ジェスチャーを使っている。
テイちゃん、人の話しを聴くのが上手いんだ、これが。それさっき聞いたって話も、本当に
愉しそうに大きく頷いて聴いているもんだから、
話す方もどんどんノってきて、話し疲れと
気持ち良さで、はい、寝オチ現在。
「ね~ぇ~テイちゃんん…しゃっきのアレぇ」
そうそう、テイちゃん、村の人達と話している間、ちょくちょくオレと姉さんに、合図を
送ってくれてたんだよね♪︎
姉さんには、両手首をくっ付けて指を丸めた、
『ハート♡』
オレには、親指と人差し指を交差させた、
『ハート♡』
オレのは今時の人しか解らないハートである♡
ひと昔前のドロドロドラマの再放送ばかり
視ている、姉さんには伝わらない。
だからオレ専用ハート♡…のはずなのだが。
「テイちゃんだら♡へとめぇであれな…
ムッセィズば…バリだらどぅすんばや~っ♡」
姉さん…オレのハートを、何やら卑猥な解釈で横取りなさった模様…。
ほろ酔いのテイちゃんの笑顔が可愛いから、
まあ、良いか♡
モンブラコン*
~~~~~~~~~~~~~『胸が高鳴る』
「門君まだ出来ないの?ウっケるぅ~お先~♪︎」
…クラスメイトの女子(居残り仲間)に笑われた。
オレ、モンスター姉弟、末っ子。
補習プリントと、にらめっこ中。
この時間…姉さんがテレビドラマに夢中に
なってる時間。絶対テイちゃん(兄)が迎えに
来てる…焦れば焦る程、頭が回らない…。
テイちゃんは待たせて怒る様な人では、ない。
むしろ、『大変だったでしょ?』と労ってくれたり、待たせた申し訳なさを感じさせない様に、
オレが校門に近付いてから、スタっと現れて、
今来た風を装ったりする位の人だ。
じゃあなぜ焦ってるのかって?そ…それは、
ほら…早く会いたいからじゃん…♡
「…きゃ~♡」「え?嘘嘘っ違うって…♡」
何か廊下にいる女子達が、騒がしい。
「○○(アイドルグループ)のR君じゃないの!?」
「ありえない、この無名高校に来るワケない♡」
ん?ちょっと待って、まさか…。上半身を伸ばして窓の外を覗いてみる、ギリ校門が見え…。
「テイちゃん!?」
が、校門で女子に囲まれてるぅ~!運動部の人まで部活そっちのけでフェンスに張り付いてる。
身長190cmで綺麗な顔立ちのテイちゃんは、
とにかく目立つのだ。村の婆ちゃん達が、
偽孫自慢の為に連れ歩く程である。
「ねぇ!門君!お兄さんからコレ…♡」
おや、さっきオレを笑い者にしたクラスメイトが、郵便配達員と化して手紙を配達しよた。
『ゆっくりで良いからね』
テイちゃんからの、温かい御言葉♡
「えっあの人が弟なの?」
「似てない…けど…良いかも♡」
おや、オレにもモテ期が来たのか?女子が
オレを見に、代わる代わる教室を覗いている!
す、すげぇ、テイちゃん効果半端ない!
もはや補習は何処へやら、女子へのサービス
フェイスを決め込むオレの肩を、ずっと静観していた先生が強めに叩き。「帰れ」と一言。
「テイちゃんっ♡」
呼ぶと、女子の群れが左右に下がって、
テイちゃんへの花道が現れた。
走って抱きつくと、僅な歓声があがる。
何て良い気分♡オレ達兄弟♡ドヤ顔のオレ。
……テイちゃん、ありがと。
モンブラコン*
~~~~~~~~~~~~~~『怖がり』
我輩は、高所恐怖症である。だというのに、
現在位置は山頂、木の上である。
どうも、モンスター姉弟の可愛い末っ子です。
事の始まりは1時間程前。テイちゃん(兄)に、
村人三名様から、畑の手伝いの依頼が入り。
「じゃあ洗濯、オレやるよ♪︎」と志願した我輩。
洗濯物を洗濯機に入れる過程で、テイちゃんの
シャツに顔をうずめて、スーハーしていた所、
姉さんに見つかり、今にいたります。
「おみゃあにレコゥダーペロペロ的な趣味が
あるなんて、すらんかったびや…」
「弟(テイちゃん)を直ペロする趣味の人に、
言われたくねぇぇぇ…」
「にゃんだって?はんしぇいしぇ!」
「してますぅっ反省してますぅっ揺らすなてっ」
クリスマスのスターの様に木にくくりつけられておりますが、怖いのは高さだけではなく、
くくりつけている姉さんの尾っぽ、長いとはいえ
体と木の幹を2周半だけで支えるという恐怖。
その時。
ストッと…木を揺らすことなくテイちゃん♡
が来てくれたぁ♡もう安心です♡ま、絶対来てくれるって解ってたからオレ、堪えられた♡
「今日ていぅ今日ば、テイちゃんがなんぼすたって、許さねんじゃが…ら…?……ら…らめ…」
テイちゃんが姉さんに壁(枝)ドンして、顔を近付けていく…のと比例して拘束がほどけていき、
いつの間にかオレの体に巻き付いていたテイちゃんの尾っぽに支えられながら木を降りた。
……帰ろう。帰って薄いバニラの香りを、
もう一度、ゆっくり、堪能しよ………。
「……テイちゃん…いねぇ」
「…だから言ったじゃん…テイちゃん、
婆ちゃん達と京都観光に行ったんだって」
朝起きて、弟(兄)がいない!と騒ぎ、オレの背中に乗っかり、村中を探し歩かせ、やっぱりいないことを理解した姉が、うなだれている。
「……ババァ」
「コラコラ…はい、家着いたから、降りて」
「ちぃっ…テイちゃんなら、じゅっと
おぶてくれるでにっ…」
…でしょうね、テイちゃんは姉さんを一日中
抱えている時もある。嫌な顔一つせず、むしろ
笑顔で、時折姉さんと目を合わせ、楽しげに。
「前の…テイちゃんともそんな感じだったの?」
前の、とはテイちゃんが姉さんの弟になる前、
姉さんの恋人だった頃を指す…が、この話は、
まずかったかな…?言ってから焦る。…が。
「ふ~ふふっ変わらぬぃ~びょ♪︎」
意外と大丈夫なんだ…。
「ぜも、カマレはオラだけに優すがったんょ、
ほがのぬんげんとば、口もきかんがっだんょ、
…ぁ~ババァババァテイちゃん返せぃ…!」
カマレはテイちゃんの前の名前だ。
人当たりの良い、今のテイちゃんとは、
真逆の感じだなぁ。生まれ変わる時に、今度は
こうなろうって決めたんだ、テイちゃんのこと
だから、姉さんを、あらゆる面から守る為に。
…あれ?姉さんどこ行った??
「テイちゃぁぁん♡オラを置いでったなぁ♡
おすおき♡すでやっかんなぁぁぁ~♡♡」
…さて、テイちゃんは、オレが守る…!!!