…あったけぇ~…ここどこ~?
…あ♡テイちゃんっ♡(兄)にすっぽり抱っこされ
てるぅ♡……これ、もしかしてオレが赤ちゃん
だった頃の夢?う~わ良い夢じゃぁん♡
って、テイちゃんの肩から姉さんがオレを
見てる…ほぼ白目剥き出しで、心霊映像に出て
くる幽霊みたいな顔で凝視してるぅ~。
流石に赤子のオレには遠慮してるのか、姉さん
…いや目が怖っ。テイちゃん取られたと思って
るんかな…普段ベッタリだもんね…。
《ピンポーン♪︎》あ、誰か来た…。
え!?テイちゃん!?ちょっと待って!
オレと姉さんを二人きりにしないで!ヤバいて!
座布団にそぅっと…置いてかないでぇっ!!
……ほら来た、姉さんが顔を近付けて…、
何か匂い嗅いでるぅ~っフガフガ言ってるぅ。
お?…おお!?座布団ごとオレを抱っこした!
おぉお…ぎこちなく揺らして……何か…
姉さん楽しんでる…?オレも…笑ってる…。
姉さんのさっきの怖い顔は、
オレを抱っこしたかったら…?なのかな……。
あ!オレ漏らした…。
あああ~!!オレを放り投げたぁぁあ!!!
…テイちゃんキャッチ!ナイス!!
なっ何ちゅう事をっ姉さんんん~~~。
……、目が覚めた…。姉さんとテイちゃんは
隣でくっついて寝てる…。とりあえず…二人に
抱きついておく……そしてまた寝る。
─────ここか、山奥にある村ってのは。
へぇ結構デカい家もあるな…一見古臭いけど、
これは金を相当蓄えてんな…俺には解る…。
…何だ!?視界に入るか入らないかの真横に、
いきなり大男が現れた。この男…違和感満載だ。
まず大きい、けど細身で筋肉質なのが、形で
分かる。何より、外国の猿の様な獣耳と長い尻尾を付けているのが異様だった…。
イベントでもやってんのか?
男は柔和な笑顔を俺に向けると、手招きをして
付いてこいと言っているみたいだった。
はっ、俺を招待するってか?
いいねぇ、内側から根こそぎ持ってってやる…。
案内されたのは、ザ・古民家だった、誰も住んでいない様だが、綺麗に掃除されていて、布団や
着替えまでも一式揃えられ、今すぐに住めそうな
家だ…もしかして俺を住まわせようとしてる?
男は俺を居間に座らせると、台所で料理を
始めた、次から次へと目の前に料理が並べられ、
テーブルの上はパーティー状態になった。
「……なぁ、俺、こんなに金は…」
男は、金はいらないから食え、というジェスチャーをした。コイツ、口が利けないのか…。
田舎料理だけじゃなく、男子が好みそうな、
ハンバーグやらナポリタンが混じってる…。
手作りの味…何年ぶりだろうか…いや、初めてかもしれない、小さい頃からコンビニ弁当か
インスタントしか、食べてこなかった気がする。
俺が料理にがっついている間に、男はテレビの
配線をいじくっていた、パっとついたテレビに、
昼のニュース番組が映し出され、そこに、
[指名手配の俺の写真]が………テレビが消えた。
男が手で何かを伝えようとするのと同時に俺は
逃げた、玄関の扉のロックの外し方に手間取る
俺に、やたら落ち着いている男は、リュックを
差し出してきた。思わず受け取った、が重い!
床に落ちたリュックの中を見て…思考が消えた。
……札束に、金の塊。
そこにさらに、3つのおむすびを入れて、男は
リュックのチャックを閉めた。
男の顔を見た、この男が、どっかの宗教の
教祖とかだったら、俺は確実に入信しただろう。
外に出て、庭の門辺りまで歩いて振り返り。
「また…来ても良いか…?」
男はとびきり無邪気な笑顔で頷いてくれた。
俺は山道を歩いた…というか途中から、
スキップになっていた。
──だって帰る場所が出来たから。
おむすび3つだけ持って、前に進む。
「テイちゃんお帰りっ新村人どうだった?」
「テイちゃんいげぇの男にきょーめねぃ…」
「え~約20年後入居予定?予約は初めてだね」
眠れない…カーテンの隙間で月が横切るのを
見届けてから起き上がったオレ、怪物末っ子。
真夜中2時か…姉と兄(弟)は夜勤である。
簡単にいえば、村の警備で。正確にいえば、
ゾンビ熊討伐だけど、それを出すとこの物語の
基本路線[アットホームなブラコメ☆]から遠ざかる
ので、そこは伏せよう、目指せサザ○さん。
テイちゃん(兄)はオレが、普通の人間の生活を
送る事を望んでる、学生だから夜は寝る…、でも
一人じゃ寝れない夜もある。…というわけで。
レッツ社会科見学!姉さんとテイちゃんの
お仕事を見に来ちゃいました~♪︎
うん、夜の山は、ほぼ肝試しの景色!
「ふふふ…へふ~…ふふ~♡……」
姉さんの笑い声だ、位置的には…この木の上
…意外と月の影でよく見えない…。
「テイちゃんっ…今日は~ハムハムしてまぉ
かな~♡あっ…じゃめぇ…ずっとすて!…」
ええ~、ハムハムって何~?良いなぁ…オレも
テイちゃんにハムハム(?)した~い。
「つゅ~ぎ~はぁ♡ペロペロしゅるび!…」
ペロペロはダメだ!何だこれは!社会科見学じゃねぇ!保健体育科見学(?)になってんぞ!!
まずい、テイちゃんを助けないと、コソコソ
してる場合じゃない。木を揺らしてみる。
……ガサガサガサ…
「…すあげは…吸っちゃうじょ~♡」
やめろぉ~っテイちゃんはお吸い物じゃねぇ!
もはや半泣きで木を激しく揺するオレ…の頭を
誰かがポンとした、…その手を頭に乗せたまま
振り向くと…苦笑いのテイちゃんがいた。
「テイちゃ…?いつから……?」
「をざまむすぃ~っめいったかぁ~っ」
上で姉さんが何か言ってる、どうやら姉さんに
遊ばれたみたいだ…。テイちゃんはしばらく、
オレの頭を、優しくポンポンしてくれた…。
夜、出歩いた事…ゴメンなさい。
ただ今絶賛宿題中のオレ、怪物姉弟末っ子。
玄関前で、インドア婆ちゃんとおしゃべり
してた姉さんの声が、いつの間にか止んでる。
姉さん、婆ちゃん家にドロドロの昼ドラを
視に行ったみたいだな…あの二人はテレビの話で
よく盛り上がってる、またいかがわしいDVDを
姉さんに見せなきゃ良いけど…テイちゃん(兄)が
実験台にされちゃう…。
とかなんとか頭で考えながらも、手元は宿題、
足はコタツの中に入れていた上着を探す…。
上着見つからない…が背中が温かくなった…。
「テテテテテテイちゃん!!」
オレに重なる形でテイちゃんがぉコタに入って
来たぁ~(♡)姉さんがいたら絶対不可能な0距離!
オレが成長するにつれ、姉さんはテイちゃんを
独占していった。だがテイちゃんは姉さんの目の
届かない所で、こんな愛情表現してくれるのだ♡
顔が近い~っ♡テイちゃんが筆箱から消せる
ボールペンを取り出し、ノートの端に…。
『勉強見せて?』と書いた…「もちろん!!」
即答のオレ、自分が書いた文字を消そうとする
テイちゃんの手をあわてて掴んだら、お互いに
ビックリ顔を(近い♡)合わせて笑ってしまった。
「たでぃまじゃばび~☆…………をや?、
クショボーズよ、テイちゃんとふたるっきりで、
しゃぞや、ごくれくじゃったびな」
「まあね」
「えがったな♪︎」
……あっさりした姉さんは、逆にコワイ。
━━━僕も、あの娘も、彼を失った。
━━守るべき村はあの娘が氷に沈めた。
━僕が彼を奪ったから…。
本当は違う、彼自ら選んだことだけど、
そんなん言い訳だ。
あの娘には人魚遺伝子による再生能力がある。
つまり遺伝子を破壊すれば消せる。
━遺伝子……?
━━その遺伝子を彼に交ぜたら…?
━━━…他に選択肢なんか思いつかない。
選べないことが最高の希望に導かれる……
………………………………なんてね。