今日は、姉さん、テイちゃん(兄)、オレ(末っ子)
の姉弟三人で、街に来ました♪︎
酒爺ちゃん家の洗濯機が壊れたので、テレビに出てた最新の洗濯機を買いに来たのです。
オレ達の住んでる山村は、見た目田舎だけど、
家電が壊れる度に最先端の物に買い替えるので、
何気にハイスペック村(?)なのだ。
テイちゃんが洗濯機の入った段ボール(大)を、
片手で持つモンスターギャグをかましている間に
オレが折り畳み式の台車を用意。
姉さんは手続きカウンターに置いてある、
ご自由にどうぞカゴの飴を食べ尽くしてから、
テイちゃんの隣に走って来た。
ずっと大人しいのが謎です。
目的達成感に浸りながら、久しぶりの街の景色を楽しんでいたその時、静かだった姉さんが
テイちゃんの手を掴んで路地に突入しようとしたが、テイちゃんがその手を引っ張って、姉さんは
アーチを描いてテイちゃんに抱き抱えられた。
190cmのテイちゃんに150cmの姉さんの、その
やり取りは、まるでヨーヨー技を見ている様。
「都けぃの…ラブフぉ!……」
テイちゃんが姉さんの口を体で塞いだ。
この姉は、倫理的にやや問題がある…。
「あ~ぶ~ほぉぉぉ~……」
テイちゃんが駄目言うたら駄目なのです。
大型を二つ抱えて帰ることになりました…。
もう何もかも嫌になって、山に入った。
…何日歩き続けたか、なんてどうでもいい、
…自分すらどうでもいいから。
「いぁ~えがった!ぶせぇくだば!」
「は?」…大木から、変な少女が目の前に
飛び降りて来た、いや子供じゃない。
小柄だけどグラマーで、獣耳付けて、やたら
長い尻尾?が後ろでウネウネ動いてる。
…コスプレ?近くでイベントやってんのかな。
「ぶせぇく大歓迎じゃび♪︎今日から村人
じゃび、難すいはなすばババぁに聞いてけろ」
手を引っ張られるまま、連れていかれた、
そこには古風な山村があった。
もしかして「あの世」に来たのかな…?
「あぃ~♪︎ぶせぇくのわけもんは、わけもん
でがら、高齢化もんでぃのくぅせぃすだびぃ~」 この人(?)何言ってるか解んないけど、
なんか、腹立つ。何言ってるか解んないけど、
なんか、歓迎されてる気がする。
「ババぁ!新入り来たじょ!ババぁ!」
「うるせぇ!ボイン!」普通のお婆さんが、
平屋から勢い良く出て来て、この村のルール等、
丁寧に説明してくれた。
私、ここに居よう、流されるまま、
生きて(?)みよう………。
───「テイちゃぁんっオラ、新人勧誘すて
来たんびょ!ありは、えいずぅ決定じゃび♪︎」
何かの匂いを感知して、すっ飛び出て行った
姉さんが、帰って来て兄(弟)に甘えている。
一人で見に行ったということは…。
「女の人だったの?」
「そぅじゃび~、でもぶせぇくだから、
もんでぃなす!優良新人じゃば!!」
……今すぐ失礼をお詫びに行こう。
見ている世界は自分の内側を現す鏡だと、
誰かが言ってたな…。
この空、憂鬱だ、校門に誰もいない、つまり
今日はテイちゃん(兄)のお迎えがない訳だ。
姉さんだな、テイちゃん一人占めしてんな。
いーさ、オレ男だもん、男には一人になりたい
時があるさ。ウソです無理です寂しがり屋です。
「をぃ~クショボーズぅすたびれた面すてぃ」
「姉さん…」が来た、珍しい。
「もっつええ面せぇや、おめぇが
甲殻類食いてぇ言ぅたんけぃ」
…甲殻類??あ!昨日テレビで海老天丼見て、良いなって、言ったわ!テイちゃんそれ聞いて…
「え、まさかテイちゃん、海行ったの?」
「じゃびゃ、あすのなげぃ甲殻類と、
おぬのような面すた甲殻類捕って来よた」
タカアシガニと伊勢海老かな…。
何だかこの空、よく見ると綺麗だ。
あの時、オレは土と後悔の中にいた。
──自分を本当に大事に思ってくれた
怪物を選ばなかったこと。
なんで、何で、生きる方を選ばなかった?
ちがう、この身体、罰の方に勝手に動いてる。
前世の因果ってやつ…あぁこんなこと考えるってことは、おわりが近いな、二歳児だぞオレ。
良かった…オレが選ばなかった訳じゃない…
…オレは、あの、人間よりも人間らしい怪物の
そばにいたいんだ………。また会いたいな…。
手を伸ばした、土から手だけ出してみた。
──手を掴んでくれた、笑っちゃう位、
都合の良い展開…心のどこかで予想出来てた。
だって彼はそれくらい、
信頼出来るように、大事に、
安心出来るように、大切に、
小さなオレに、
接してくれていたから…。
姉さん、白飯にメロンシュガーを掛けるの、
やめて下さい。それは食パンをメロンパン風に
するものです。
姉と兄(弟)とオレ(末っ子)の、どこにでもある
夕御飯風景(姉の偏食を除く)だけど、ここには
テイちゃん(兄)のLOVEがある。
オレ達姉弟は何も食べなくても生きられる。
それでもテイちゃんは御飯を用意してくれる。
オレの苦手な人参は細かくしてハンバーグに
混ぜて。例え残しても決して怒らない、次は更に
細かくして味付けに工夫までして出すだろう…。
学校に通うオレが、他の子と感覚がズレない
よう、考えてくれているんだよね。
テイちゃんは声を発することが出来ない、
でも、言葉以上のLOVEを、それ以外の方法で、
表してくれる。あまりにも自然過ぎて、
見逃しちゃいそうな程、たくさん…。
姉さん、〆は御茶漬けのノリで、残った御飯に
いちごミルクをぶっかけるのやめて下さい。