─────ここか、山奥にある村ってのは。
へぇ結構デカい家もあるな…一見古臭いけど、
これは金を相当蓄えてんな…俺には解る…。
…何だ!?視界に入るか入らないかの真横に、
いきなり大男が現れた。この男…違和感満載だ。
まず大きい、けど細身で筋肉質なのが、形で
分かる。何より、外国の猿の様な獣耳と長い尻尾を付けているのが異様だった…。
イベントでもやってんのか?
男は柔和な笑顔を俺に向けると、手招きをして
付いてこいと言っているみたいだった。
はっ、俺を招待するってか?
いいねぇ、内側から根こそぎ持ってってやる…。
案内されたのは、ザ・古民家だった、誰も住んでいない様だが、綺麗に掃除されていて、布団や
着替えまでも一式揃えられ、今すぐに住めそうな
家だ…もしかして俺を住まわせようとしてる?
男は俺を居間に座らせると、台所で料理を
始めた、次から次へと目の前に料理が並べられ、
テーブルの上はパーティー状態になった。
「……なぁ、俺、こんなに金は…」
男は、金はいらないから食え、というジェスチャーをした。コイツ、口が利けないのか…。
田舎料理だけじゃなく、男子が好みそうな、
ハンバーグやらナポリタンが混じってる…。
手作りの味…何年ぶりだろうか…いや、初めてかもしれない、小さい頃からコンビニ弁当か
インスタントしか、食べてこなかった気がする。
俺が料理にがっついている間に、男はテレビの
配線をいじくっていた、パっとついたテレビに、
昼のニュース番組が映し出され、そこに、
[指名手配の俺の写真]が………テレビが消えた。
男が手で何かを伝えようとするのと同時に俺は
逃げた、玄関の扉のロックの外し方に手間取る
俺に、やたら落ち着いている男は、リュックを
差し出してきた。思わず受け取った、が重い!
床に落ちたリュックの中を見て…思考が消えた。
……札束に、金の塊。
そこにさらに、3つのおむすびを入れて、男は
リュックのチャックを閉めた。
男の顔を見た、この男が、どっかの宗教の
教祖とかだったら、俺は確実に入信しただろう。
外に出て、庭の門辺りまで歩いて振り返り。
「また…来ても良いか…?」
男はとびきり無邪気な笑顔で頷いてくれた。
俺は山道を歩いた…というか途中から、
スキップになっていた。
──だって帰る場所が出来たから。
おむすび3つだけ持って、前に進む。
「テイちゃんお帰りっ新村人どうだった?」
「テイちゃんいげぇの男にきょーめねぃ…」
「え~約20年後入居予定?予約は初めてだね」
3/9/2023, 4:21:25 AM