夏空の青、南の海の青
好きな色の説明はとっても難しい
青、の一言で済むけれど
そう答えると、昔は驚かれ
「どうして?」と
聞かれることが多かった
女の子の好きな色はピンク、の
時代だったから——かな
実際にピンク好きな子は多かったけれど
「お母さんが喜ぶから」
とこっそり教えてくれたお友達もいたなぁ
私は何で青だったのか
爽快で、どこまでも広がる壮大な色
そんなイメージがあるからかな
でもピンクが嫌いだったわけじゃない
小学生に上がる頃、
ピンクの可愛さに目覚めて
ピンクの服や小物を選ぼうとしたら
「今まで青だったのに? 似合わないわよ」
と母に言われて
ピンクは避けるようになってしまった
普通に身に付けるようになったのは
親元を離れてから
そして今でも、結構選んでいる
パステルカラーが好き
心が軽く、明るくなるから
原点の青色は、もちろん今でも好き
でも説明は
昔よりずっと難しい
好みの青の色はたくさんありすぎて
とてもたとえられない
カラー見本眺めていると、
惹かれる色は青だけじゃないし
それで、気付いた
好きな色は『空』の色
青も茜も、全部美しくて好き
曇天は——どうかな
刻々と移り変わる雲の表情は飽きないし
独特の綺麗さはあるけれど
鬱々の気分になりやすいから、苦手かな
やっぱり、難しい
出張のお土産持ってきてくれた息子に
聞いてみた
昔は『青!』と答えて、
緑のクレヨンを高々と掲げた彼は
今は何色が好きなのかな?
「は? 特にないけど——黒?」
……つまらん。
あ、こんなこと思っちゃいかん
黒こそ200色以上ありそうだもんね!
あなたがいたから
……時々は、サボったし
鬱々に飲まれかけたりもしていたけれど
親元にいた頃のように囚われきることもなく
さあそろそろ立ち上がらなきゃと、
自らを奮い立たせることができていた
昔、
母に言われた同じ言葉は
「あなたがいる『せい』で」
という含みを感じずにはいられなくて
母の足枷になっていると
強い罪悪感を抱いて苦しかったけれど
真意は、
もしかしたら違ったのかもしれない
母の口から聞きたいとは思わないけれど
苦痛なく、そう思えるようになったのは
私の心の変化——成長なのかもしれない
いつかみんな、
私の手のうちから旅立ってしまったら
私はまた、立ち上がれなくなる日が
来てしまうのかな
思い出だけを脳裏に映して
ズブズブと底なし沼に沈むように
堕ちていく日が来るのかな
誰もいなくなっても
ちゃんと這い上がれるようになっていたいな
それは
『あなた』と出会えて知った
『あなた』からもらった、強さだから
失いたくないな
こう思えるうちは大丈夫だね、きっと
『あなた』が出会ってくれた私を、信じるよ
相合傘で嬉し恥ずかしのドキドキなんて
漫画の中だけのシュチエーションでしょ
と思っていたけれど
世の中には実際に実行して
漫画と同じような展開になる人も
いるのだとか
となれば、
現実が先で漫画が後——だったのかな
若かりし頃
かつての連れ合いと
相合傘をする状況があった
急な大雨の時だったかな
滅多に傘なんかささない人が
入れて、と言ってきた
いいよ、と答えて傘を差し出したけれど
正気かコイツ、と思ったのも事実
だって
身長差30cm以上、
体重3桁に迫るドデカい人だったんだもの……
傘は当然、持ってくれたよ
気遣って背中丸めて、
こちら側に傘を傾けてはくれたけれど
漫画のように
雨粒はまっすぐ降ってくるわけではないからね
ほかにも要因あるけど
主に体と傘の大きさが
そもそも釣り合ってないとか
結果として、
お互いに無事だったのは
頭のてっぺんぐらいだったよ本当に
連れ合いの車に乗って
傘の意味ないじゃーんと
お互い大笑いしたけれど
ただの『何なのこの状況』が笑えて
互いに笑い合って流せてたことって
なかなかすごいことのように思う
え、相合傘の感想?
二度としたくないな、私は!
ずぶ濡れになって
コンビニで二人分のタオル買うより
最初からビニール傘買った方が良かったもの
濡れても不快さがなくて
すぐ乾いちゃうような
ファンシーな雨が降っていたら
私と連れ合いでも
少女漫画のような感想になったかもしれない
……傍目のことは考えちゃいけません
まずは浸り切ることが第一条件だもんね
多分!
お気に入りの白いふわふわのスリッパが足から滑り落ちるのが見える。
(え、嘘——)
一瞬の、浮遊感。
そして即座に全身に悪寒が走る。
(お、落ちる——……ッ!!)
ジェットコースターの頂点から叩き落とされるような下降感に体中が軋む。
悲鳴すら上げられず、溜まった息が気管支の中で爆発しそうに——……
「ッ——ハァッ!!」
全身が波打つようにして、ベッドで目覚める。
心臓はドクドクと激しく鳴り、こめかみが痛むほど脈打っている。
「夢……」
荒く息をつきながら、足を両手で撫でる。
落ちていく感覚は足にまだ残っていて、ザワザワとした嫌な感触を振り落とすように。
——何で、あんな夢を。
落ちる夢なんて、縁起でもない。
時計を見れば、いつもの起床時間より数十分早い。
大きく溜息をつきながらもう一度横になり、不安を払拭したくてスマホを覗きこんだ。
夢占いのサイトを開いてみる。
落ちる、落下、の項目は残念ながら良いことの前兆などではなく、言葉の印象そのままの事象が並んでいた。
「……疲れている、ということかしら」
食生活もこの頃は出来合いの物ばかりだった。
たまには自炊しようかな、と考えて少し早目に起きだした。
自炊を頑張り。
眠る前と起きがけのストレッチをしてみたりと、少しは私生活を整えているつもりだった。
それでも、『落ちる』夢を見る。
「何なの、どうしてなの……?」
落ちていく時の。
全身に走る落下感の空気、風の感触が生々しすぎて、眠るのが段々と恐ろしくなっていた。
眠って、あの夢で起きるのが嫌で仕方がない。
けれど、眠らずにいられる訳がなく。
休日の午後、ソファでうたた寝をしてしまった。
ふと寝覚めたのは、雨の音。
(いけない! 洗濯物……!)
慌てて起きて、ベランダに面した窓を開ける。
勢いあまって。
そのままベランダに出かけて、咄嗟に窓枠を掴んだ。
ビタッと前のめりになって体は止まったが。
ベランダの床につきそうになっていた右足から、白いふわふわのスリッパが。
するりと、足先から抜けて。
緩やかな放物線を描き。
手摺の柵を抜けて、階下へと落ちていった。
このところの天候か気圧か、のせいか
それとも単なるヤル気のなさなのか
とにもかくにも
無気力状態が長らく続いてしまっている……
日常の最低ラインはこなしているけれど
本当にギリギリのライン
それすらサボることができるのならと
常々思ってしまっている現状
あとでやればいいや
後回しにしよう
の、細々雑事タスクが
山のように積み上がっている
そろそろ少しずつ片付けないとマズイ
のは、わかっているけれど
今日も雨で
またもやおサボり
多分週末には大焦りで
どうしてこんなにサボったんだと
自分をなじっているのだろうなぁ
そんな未来が見えるのに
やっぱり今は動けない
挽回できるギリギリの線を知っているから
ついついサボってしまうのだろなー
良くない連鎖だ反省しよう
明日から