NoName

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7/10/2024, 10:32:51 AM



 



    目が覚めると、

    あなたが猫になっていた








7/9/2024, 11:48:19 AM



 朝起きて、「おはよう」と挨拶をすれば、テレビをつけてくれる。私の寝ぼけ眼は、アナウンサーの声で徐々に覚醒する。

 油を引いたフライパンをコンロにかければ、換気扇をつけてくれる。私は背が低いから、スイッチを入れるために背伸びをしなくて良いことはありがたい。

 家を出る時間が近づくと、「ピ」と給湯器のスイッチを消してくれる。ついつい忘れがちな私が「悪いねぇ」と声をかけると、「ピピピピ」とそれを連打する音がする。お怒りのようでした。

 夏は私がいなくても、エアコンをつけておいてあげる。だって暑いの、苦手そうだからかわいそうで。

「行ってきます」

 誰の姿もない部屋へ、声をかけると電気がチカチカと点滅した。

7/8/2024, 10:48:01 AM



丑三つ時の夏の夜。
暗闇だけが広がる街中に、
だったひとつ、浮遊する灯り。

どんなにそれが美しくても、
決して触ってはいけないよ。
それはひどく寂しがりやで、自分勝手なものだから。

7/7/2024, 1:00:48 PM

 毎年この時期、一年に一度だけ。
 ポストを見ると、彼女からの手紙が入っている。
 封を開けると、星のかけらがきらきらと噴き出る。ああお怒りのようだ。
 「私のことを、覚えておいででしょうか」から始まる手紙には、先に再び生を受けた、俺への恨み言が可愛らしく記されている。

「ほら、ご飯食べるわよ!」
「はーい!」

 玄関では、おたまを持った母親が待っている。自分の喉から発される声音はひどく高い。少女のような声色だ。無邪気な子供のふりをして、母に返事をする。

「覚えているよ、当然」

 だから、きみも早くおいで。
 空に架かる天の川。静かにそう声をかけると、星が降り、彼女の返事を伝えてくる。「昔のあなた様は、私を『きみ』だなんて呼びませんでしたわ」なんて。

7/6/2024, 12:39:37 PM

 光るスマートフォンの画面が知らせるのは、あの子からの新着メッセージ。“暇しているよ”と送ると、返ってきたのは“今から行く”。

 メッセージを終えて早々、インターフォンが鳴った。近所に住む彼女が、この家に来るまでに、さほど時間はかからない。ドアを開けてやるや否や、差し入れの入ったビニール袋を押し付けてきた彼女の目元は、ほんのり赤く色づいている。

 ワンルーム内のソファを占拠した彼女は、自分の買ってきた缶チューハイを開け、この家の冷蔵庫内のものを使って作ったつまみを肴に、今日別れたという男の愚痴をひたすら並べる。
「そんなに不満だったら直接言えばよかったのに」
「そんなんできたら苦労せん」
 そして彼女は人様のローテーブルに突っ伏して、静かに涙声をこぼす。

「あたしの話聞いてくれんの、あんたくらいやわ」

 そりゃ、大事な友達だからね。
 胸の痛みに気づかないふりをして、今日も俺は、涙でぐしゃぐしゃの彼女に、タオルを渡してあげるのだ。
 

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