光るスマートフォンの画面が知らせるのは、あの子からの新着メッセージ。“暇しているよ”と送ると、返ってきたのは“今から行く”。
メッセージを終えて早々、インターフォンが鳴った。近所に住む彼女が、この家に来るまでに、さほど時間はかからない。ドアを開けてやるや否や、差し入れの入ったビニール袋を押し付けてきた彼女の目元は、ほんのり赤く色づいている。
ワンルーム内のソファを占拠した彼女は、自分の買ってきた缶チューハイを開け、この家の冷蔵庫内のものを使って作ったつまみを肴に、今日別れたという男の愚痴をひたすら並べる。
「そんなに不満だったら直接言えばよかったのに」
「そんなんできたら苦労せん」
そして彼女は人様のローテーブルに突っ伏して、静かに涙声をこぼす。
「あたしの話聞いてくれんの、あんたくらいやわ」
そりゃ、大事な友達だからね。
胸の痛みに気づかないふりをして、今日も俺は、涙でぐしゃぐしゃの彼女に、タオルを渡してあげるのだ。
7/6/2024, 12:39:37 PM