sibakoのおさんぽ🐾

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7/18/2023, 2:58:57 PM

お題【私だけ】

私だけ、今日も一人。
人の目を見て話せないし仕方ないよね。

私だけ、お昼も一人。
アイドルとかコスメとかわかんないし仕方ないよね。

私だけ、休日も一人。
のんびり一人でいるのが一番楽だし仕方ないよね。

私だけ… 私だけ… 私だけ……?

「ねえ、私帰る人いないんだけど、一緒に帰らない?」

ツンとした、ロングが似合う女の子。
彼女もいつも一人だった。

ちょっとした彼女の一言は私を一人の闇から引っ張り出した。

帰り、彼女は言った。別に”だけ”でいいじゃない、と。

人間みんな不器用だから、周りと一緒だと安心する。ただ、全て一緒じゃ駄目で、そもそも不可能。結局、その違いが個性であり、あなたが存在する意義。悪いことばかりじゃない、と。

静かに微笑む彼女は凛としてかっこよかった。

6/16/2023, 2:01:17 PM

お題【好きな本】

《異形探偵社 イルシオン(仮)》-1

ザァ......

六月。梅雨の季節。今日も相変わらず雨続きである。そんな日が続いては何もやる気が起きないものである。
なのに......

「なんでいつも二人なのに、今日に限って私が一人で仕事しなきゃいけないのよぉー」
きな子は、柘榴色の傘を突き上げ叫んだ。
歳は十六、七歳くらいだろうか。ゆったりしたガウチョが似合っていた。

「仕方ないだろう? 用事が入ったんだよ。道案内だけはちゃんとするからこれ以上駄々こねんな」
耳元のインカムから声が聞こえた。
「そういえば烏丸、この前ボーナスもらってたよね? 許してあげるからさ、何かご褒美ちょうだいよ。」

はぁ、っと大きなため息わついてから烏丸と呼ばれた男がインカム越しに答えた。
「仕方がない。ちゃんと仕事こなせたらな?」
何頼もうかなーっとぶつぶつ言いながらきな子は住宅街を進んでいった。

「ついたよ」
インカムに話しかける。
そこは日本家屋風のお屋敷だった。広い庭の松がよく似合っていた。
門の前で一人、中年の女が傘をさして待っていた。
「お待ちしておりました。奥様はこちらです」
女はスタスタときな子を客間へ案内した。
奥様元へ案内しきると女はさがっていった。

「探偵社イルシオンのきな子です。身辺調査、人探し、『異形事件』までどんな事件もお任せください」
奥様は美しき気品あふれる方だった。ただ、相当困っているのか顔色はいいとは言えなかった。
「私は雅奈恵と申します。本日はお越しくださりありがとうございます。噂は本当ですのね。異形事件に強い探偵社であると言うのは」
「はい。我が社の受ける依頼の八割は異形の関連が疑われるものですから」
「あの、異形って本当に存在するのですか? 」
「います」
雅奈恵の問いにきな子ははっきりと答えた。
「すいません、別に怖がらせたいわけではないんです。異形事件というのはほとんど起こりませんから。万が一、雅奈恵さんが依頼しようとしている内容が異形事件だったとしても私が解決します。私は雅奈恵さんの依頼解決の為にここにいるので。よければ早速依頼内容を教えていただけますか? 」
雅奈恵は少し安心したようで、小さく頷くとゆっくり話し出した。
「ええ。あれは先月のことでしたの」

雅奈恵によるとちょうど一ヶ月前、雅奈恵の部屋に蛇が出たという。人の腕より遥かに太い大蛇だ。雅奈恵は急な出来事に気が動転した。騒ぎを聞きつけた、使用人たち四人でなんとか深傷を負わせ追い払った。しかし次の日、一番初めに駆けつけた使用人が事故に遭い、救急搬送された。その後、別の使用人も通り魔に襲われ入院、食中毒で入院と不幸に見舞われた。残る駆けつけた使用人は、きなこを案内した女、幸子だけだと言う。周りは皆蛇の呪いだと恐れているらしい。依頼はこの事件は偶然か、人間の仕業か、はたまた本当に蛇の呪いなのかを見極め、呪いならば祓ってほしいとのことだった。

「はい、依頼内容はわかりました。では、調査させていただきますね」
きな子はそう言うと、蛇を殺した雅奈恵の部屋、キッチン、お風呂から使用人寮も、屋敷の中を行ったり来たりした。外のことなど幾つかインカム越しに烏丸に聞いて言った。
「これで犯人は決定だね」

二時間後、きな子はもう一度雅奈恵と客間にいた。
「では、報告させていただきますね」
「はい」
雅奈恵は早すぎる調査報告に驚いているようだった。
「結果を言うと、呪いではありません」
雅奈恵は安堵と戸惑いの色を浮かべる。
「全て、殺人未遂の事件。人の仕業です」
「では誰が....... まさか外から!?」
「いえ、外部はないでしょう。明確に蛇を襲った使用人を狙うのは困難ですから」
「では......」
「はい、犯人は屋敷の中にいます」

からからから

そこでちょうど案内役の女、幸子が入ってきた。
「お茶をお持ちしました」
淡々とお茶を並る姿はベテランそのものだった。

「ちょうどいいところに来ましたね、犯人さん」

湯呑みが倒れた。幸子が倒してしまったのだ。
「すいません、今拭きます」
慌てて布を取る幸子の手をきなこは制した。
「あなたでしょう? 三人の使用人を病院送りにした犯人は」
きな子は冷たい笑みを向けた。
幸子は引き攣った笑みを浮かべた。
「私には何のことだか......」

「一人目の事故は自転車のブレーキが壊れていたことによるものです。二つ目は人気も防犯カメラもない路地裏での通り魔事件。三つ目は毒による食中毒を装った事件。あなたが今日出したゴミの中にブレーキを切ったペンチ、犯行のナイフ、小瓶の中の毒が見つかりました。どれも今朝、私の話を聞かされて慌てて証拠隠滅しようとしたのですから指紋の一つや二つ、すぐに見つかるのでは? 」

幸子は何か言おうと口をパクパクさせた。しかし、もはや弁明の余地がないとわかるとぽつりぽつりと話し出した。
「あの人たち、横領してたんです。挙げ句の果てのは奥様のものを盗んでお金に変えようと...... このままでは奥様の大切なものまでとられてしまうと思った時に蛇の事件があったんです。使えると思い、偶然を装って襲いました。すいませんでした、私が勝手なことをしたまでに奥様に迷惑をかけてしまい、本当にすいません......」
幸子は何度も頭を下げ、泣き、謝った。
「では私はこれで。依頼金は指定の口座にお願いしますね」

きな子は雅奈恵らから離れると、門ではなく庭にある一際大きな松の前へ向かった。

きな子は木を見上げ叫んだ。
「蟒蛇さーん、うーわーばーみーさーん。」
すると松の上の方からシュルリシュルリと大蛇 蟒蛇が降りてきた。真っ赤な舌をペロペロと出し三メートルほどの高さの枝に巻き付いた。
「何じゃ、久しいな『玉藻前』よ」
玉藻前と言われたきな子は、やあっと笑った。
玉藻前は日本三大妖怪にも数えられる大妖怪である。
「400年ぶりくらいかな。蟒蛇さん、たった四百年の間に何があったの? たった四人の人間にやられかけたみたいじゃん」
蟒蛇は笑った。
「たとえ異形とて歳には敵わんよ」

きな子は蟒蛇に一歩近づいて話し出した。
「私は今、探偵社イルシオンで働いている。イルシオンは幻影を意味だよ。私たちは今異形の街を作っているんだ。いわゆる幻影都市だね。蟒蛇さんにそこにきて欲しいんだ。今日は蟒蛇さんを誘うためにここの奥さんの依頼を受けたんだ。いつか蟒蛇の伝承を広めて蟒蛇さんを若々しくしてあげるから、絶対そのまま消えさせないから、私についてきて」
きな子はしっかりと蟒蛇の目を見た。蟒蛇は小さくため息とついた。
「おぬしは昔から変わらん。何をすれば相手が思い通りに動くか、よくわかっておる。連れていってくれるか、その幻影都市とやらに」
蟒蛇はニヤリと笑った。きな子は頷くと肩に蟒蛇を乗せて歩き出した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この後幸子はあれから自首した。今は罪を償っているところだ。横領をしていた使用人たちも今は牢屋の中である。
蟒蛇ものんびりと幻影都市で暮らしているらしい。

「きな子、約束のご褒美置いとくぞ」
真っ黒なローブを羽織った男、烏丸は紙袋をどっさっと置いた。
「!! ありがとう! 」
きな子は嬉々として袋を開けた。そこのは二十冊ほどの本が入っていた。モーリス・ルブランの『アルセーヌ・ルパン』全巻だ。
「もう何百年も生きてきてるのに読み損なってたんだよね」
フランス語で書かれたその本をきな子はスラスラ読んでいく。知識者であらゆる人を騙し惑わす玉藻前。しかし、今はどこからどう見ても、ただただ本が好きな少女だった。

ピッコン

烏丸のスマホが鳴った。
「きな子、仕事だ」
烏丸が振り返り言った。
「ちょっと待って! 今ガニマールが頑張ってるところなの」
「ほらいくぞ」
きな子は烏丸に本を取り上げられ、ずるずる引きずられていく。
「イヤー、至福の読書タイムがー!! 」
大妖怪の威厳はどこへやら。今はただの本の虫である。

「ついたぞ」
結局烏丸に連れられてきてしまったきな子。
ガチャッと扉が開く。

「探偵社イルシオンのきな子です。身辺調査、人探し、『異形事件』までどんな事件もお任せください!」

今日も一日、きな子の、人としての、探偵としての一日が始まる。

3/1/2023, 12:49:09 PM

お題【欲望】

「あなたの願い、なんでも一つ叶えましょう」

ヤツは、そう言った。
ヤツは、ランプを擦ったら、ぼわわんッと出てきた。
俺が、「ランプの魔人か?」と聞いたら、「いえいえ、ただの悪魔でございますよ」と返された。

しかし、なんとも胡散臭い。
なんの代償もなしに、願いを叶えるなんてそんな都合のいい悪魔がいるとは思えない。

「目的はなんだ?」

俺が尋ねると
「おぉ、こわいこわい。そんなに睨まないでください。......あぁ、そうそう、目的ですか? ただの興味です。あなたが何を望み、どうするのか。代償も何もございませんのでご安心を」

「悪魔に二言はございません」とヤツは微笑む。
仕方がないので俺は信じることにした。

「そうだな、願いかぁ。なんでも、と言ったな」
俺は、誰よりも欲深い人間だと理解している。
金も、名誉も、才能も、全て欲しい。
何かいい方法はないものか......。
「!」
あぁ、なんて俺は頭がいいんだ。
俺の頭に名案が浮かんだ。

「なんでも一つ、だな?」
「はい」
ヤツの確認をとった。

「なら、俺の願いは“俺の願いを無限に叶え続ること”だ。できない、とは言わせねえぞ」

「いいですよ。ですが、これからの変更は不可能ですよ。いいですね?」
ヤツは、ファイナルアンサー? という顔で聞いてきた。
「ああ。」
そもそも、断る理由がない。何かあれば頼んだらいいのだから。

「何かあれば、ランプを3回擦って下さい。いつでも参りますので」
そう言ってヤツは消えていった。

そこからは、天国のような日々が続いた。
俺は......

大金持ちになった。
一国のお姫さまと結婚して王になった。
邪魔な奴は死刑にして、気に入った奴は召し上げた。
漫画も、映画も、俺のために作らせた。
不老不死になった。
魔法使いになった。
世界征服をした。
宇宙征服もした。
タイムスリップも、異世界転生もしてみた。

1000年たった。

俺は全てを得た。何もかも手に入れた。
そして、俺は空っぽになった。

なんでも手に入るこの世界。
幸せなはずなのに。

(あれ? 俺ってなんのために生きてるんだっけ?)
あぁ、そうか。この世界に俺なんて......

誰でもいい。誰か、俺を殺してくれ。

「かしこまりました」

今、ヤツの声が聞こえたような......



ゴクンッ

「ごちそうさまでした」
ヤツはペロリと舌舐めずりをした。

「あぁ、なんて人間は愚かなのでしょう。全てを得たというのに、最後に死を願うとは。なんとも興味深い。次はどんな美味しい欲望を持った人間が来てくれるのでしょう?」

楽しみです、とヤツは笑った。
それはなんとも悪魔らしい、不気味な笑みだった。
そして、ヤツはランプの中に消えていった。



きっとヤツは今もどこかで欲深い人間を求め、ひっそりとランプの中で待っているでしょう。
次は、あなたやもしれません。

3/1/2023, 9:15:02 AM

お題【遠くの街へ】

今日は僕の父さんが帰ってくる日だ。
旅商人の父さんは、いつもいろんな街を回ってお仕事しているんだ。でも、季節の変わり目になると必ず帰って来てくれる。

あ、馬車の音だ!
「父さん! おかえりー!」
僕は父さんに飛びついた。
「おぉ、カルラ。ただいま。ちょっと見ないうちにまたデカくなったなぁ」
父さんは笑いながらそういうと、僕の頭をわしゃわしゃした。

「ねえ、父さん! お話、聞かせて!」
僕は父さんの話すお話が大好きだ。
いろんな街のいろんな人のお話を教えてくれる。

しゃべる人形を作る、魔女のお婆さん、マリア。
悪戯好き妖精、リリー。
人見知りドラゴンのシュバ。
足が速い、テケテケ草を摂る達人、グーグス。
......などなど。

今回はどんなお話だろう?
「今回はな、『夜を盗んだおおどろぼう、シュレッド』のお話だ。」

夜を盗んだ?
「どうやって?」

「まあまあ、そう焦るな。ちゃんと聴いてりゃわかるから。シュレッドはなぁ、、、」
父さんの話はやっぱり面白い。
いつか僕も......

「父さん」
「ん?」
「僕もいつか旅商人になれるかなあ?」
父さんは、優しく笑って
「ああ、なれるさ」
そう言った。

「僕も父さんみたいに、いっぱい遠くの街まで行って、いっぱいお話集めて、みんなに話して教えてあげるんだ!」
そしたらまた、父さんに頭をわしゃわしゃされた。
父さんは、涙目になりながら、ずーっとわしゃわしゃしてた。

2/27/2023, 12:44:44 PM

お題【現実逃避】

「あぁ、どこか遠くへ行けたらなぁー」
勉強も、仕事も、なにもしなくていいところへ。
好きなことを好きな時に、好きなだけできる世界へ。
行けるものなら行ってみたい。
私は、うーんと伸びをしてつぶやいた。

「翼があったらな......」
次の瞬間、ビューと風が吹いた。
窓も開いていないのに。
私は目をぎゅっと瞑った。

風が止み、私はそっと目を開いた。
ひらひらと何かが舞っている。

(羽?)

顔を上げ、振り向く。
そこには、大きく白い翼があった。
そう、私に羽が生えたのだ。

私は嬉々として、窓から飛び出した。
最初はフラフラだったが、ものの十分ぐらいで安定した。

風に乗って飛べるようになった頃には、海まで来ていた。
片手で波を切って遊んだり、イルカと並んで飛んだりした。

そのうち、野原に着いた。
様々な小鳥たちが飛び回っている。
草花の香りが心地よかった。

気づいた頃には夕焼け空だった。
カラスの一群が空に映えていた。

あぁ、空っていいなぁ。





.......はい、『現実逃避』おしまい。さあ、勉強再開!

私は、ちょっとリフレッシュして勉強を始めた。

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