お題【遠くの街へ】
今日は僕の父さんが帰ってくる日だ。
旅商人の父さんは、いつもいろんな街を回ってお仕事しているんだ。でも、季節の変わり目になると必ず帰って来てくれる。
あ、馬車の音だ!
「父さん! おかえりー!」
僕は父さんに飛びついた。
「おぉ、カルラ。ただいま。ちょっと見ないうちにまたデカくなったなぁ」
父さんは笑いながらそういうと、僕の頭をわしゃわしゃした。
「ねえ、父さん! お話、聞かせて!」
僕は父さんの話すお話が大好きだ。
いろんな街のいろんな人のお話を教えてくれる。
しゃべる人形を作る、魔女のお婆さん、マリア。
悪戯好き妖精、リリー。
人見知りドラゴンのシュバ。
足が速い、テケテケ草を摂る達人、グーグス。
......などなど。
今回はどんなお話だろう?
「今回はな、『夜を盗んだおおどろぼう、シュレッド』のお話だ。」
夜を盗んだ?
「どうやって?」
「まあまあ、そう焦るな。ちゃんと聴いてりゃわかるから。シュレッドはなぁ、、、」
父さんの話はやっぱり面白い。
いつか僕も......
「父さん」
「ん?」
「僕もいつか旅商人になれるかなあ?」
父さんは、優しく笑って
「ああ、なれるさ」
そう言った。
「僕も父さんみたいに、いっぱい遠くの街まで行って、いっぱいお話集めて、みんなに話して教えてあげるんだ!」
そしたらまた、父さんに頭をわしゃわしゃされた。
父さんは、涙目になりながら、ずーっとわしゃわしゃしてた。
3/1/2023, 9:15:02 AM