#99 スリル
プレッシャーのひとつであり、生命の危機に関する恐怖や脅威に近い感情を感じさせることをいう。交感神経が作用して興奮状態を作り、極度になると手足の冷えや動悸に繋がる。
一方で、行為に対する安全対策に納得できている場合や、
「自分は大丈夫、何とかなる」といった正常性バイアスが働いている場合には、
中毒性のある愉悦として味わうことができる感覚である。
しかし、いくら安全確認が行われても命綱を信頼できないような場合は非常に不快な感覚に陥る。
スリルがある状況のひとつとして、
橋を渡るケースがある。
幅にゆとりがあり素材自体に強度があるような橋では景色を楽しむことができるのに対し、
細かったり古そうだったり、自然素材でできた吊り橋を見たときなどに、本当に渡れるのか?と不安になるのは、安全対策への信頼性に差がある為であり、それを楽しめるかどうかは本人の素質にかかっている。
他にはジェットコースターに乗る際に、
(万が一もないはずだけど、このベルトが抜けたら吹っ飛んでいくんだよなぁ)
などと考えてしまう場合はスリルを楽しめない可能性が高く、要注意である。
ちなみに電車の吊り革はかなりの強度があり、通常の使い方で切れる心配はないとされている。
また、幼児がくすぐりや「たかいたかい」を喜んだり、子どもが鬼ごっこや隠れんぼを楽しんでいるのはスリルを味わっている為であり、そこには信頼を前提とした人間関係が構築されていることが多い。
---
固い文章を作るのって楽しい。なんなら固く作っておいて、後から柔らかく直していくのも、良い。
#98 飛べない翼
…ダチョウとペンギンと。鶏も?
あ、天敵が居ない環境下で太りすぎて飛べなくなった鳥っていう平和なやつもいたな。
そういえば動物園のフラミンゴは、助走に必要な距離より狭い檻に入れているから飛ばないだけで、本当は飛べるんだとか。
---
僕は、パイロット。
とある飛行場で働いていて、担当の飛行機もある。
だけど僕は、飛べない。
理由は滑走路が短いせい。
飛行機は最新機種の現役で整備もされて、飛べる状態を維持されてる。さすがに燃料は入ってないけど。それでも飛ばすつもりのない飛行機を置くのはコストが高すぎる。
どうやって配備したのか聞いたら、ここで組み立てたとか言うんだ。
おかしいよね。
僕の勤務時間のほとんどは、観光客のガイドに費やされている。
パイロット自ら案内をすると客ウケが良いんだって。そんなの知らないよ。
飛行場から車でしばらく行くと、
退役した飛行機を保管している場所に出る。
航空会社も時代も機種もバラバラ。
そんな飛行機たちの知識を頭に詰め込んで、愛想よく客に披露する。
まるで地上の鳥が求愛ダンスで翼を広げるみたいに。それが僕の仕事。パイロットとして配属されたのに、僕は一度も空を飛んでないんだ。
僕は知ってる。
散々空の旅をしてから退役した飛行機たちは、最期に墓場を目指して飛んできた。
だから、ここから僕の飛行機だって飛び立つことができるはずなんだ。
それは雇い主も理解しているのだろう。短い滑走路の周りは、悪路になっていて飛行機の離着陸には使えない。滑走路に近づくほど、そうなっているから、ぱっと見では不自然に感じない。念の入ったことだ。
この鳥かごのような状況は、上司にいくら抗議しても何も改善されることはなかった。
僕は今日も飛べない翼を広げて、愛を乞う。
---
今日も、あのパイロットは飛行予定を直接の上司である俺に確認しにきた。そして、己の仕事がガイドしかないと分かると明らかに落ち込みながら仕事場へと向かっていった。
彼はパイロット試験に通っている以上、それなりの年齢なのだが、採用条件としてギリギリの小柄な体格や、あどけなさの抜けない表情が彼を少年のように見せる。
元々この地にある飛行機の墓場は、比較的歴史が深く、様々な機種が揃えられていることから、見学場所として需要が高い。
それに目をつけた社長が、わざわざ飾りの飛行場を作り、飛行場のスタッフをガイドにつけたツアーを作ったのだ。
もちろん、この飛行場から飛行機が飛ぶことはない。しかし立ち入り制限なく巡り、それぞれ必要な資格と知識を持つスタッフも好きに同行させることをできる、このツアーは高い値段設定ながら人気が出た。特にパイロットは高い倍率になっている。
すらりと長い手足と華奢な胴体。
髪は、ふわり空気を含んだように軽やかな、白混じりの朱色。
彼が人気である本当の理由は、整った容姿に加えて、『自分がパイロットである』誇りが本人から滲み出ていることが大きい。そこにあるのは、庇護欲か、優越感か。何にせよ、趣味の悪いことだ。それはここで働く俺にも言えることであるが。
---
ちょっと甘いところは多々あるんですけど、
時間もないので、ひとまず投稿。
#97 ススキ
『幽霊の正体見たり枯れ尾花』
ほらあそこ、白くてヒラヒラ…ぎゃあ幽霊だ!
…って、枯れたススキかよ!
使い方としてはビクビクしてると、何でもないものも怖く感じちゃうよね、と。そんな感じです。
ちなみに尾花とは、昔の人が動物の尻尾に見立てて呼んだススキ(の穂)のこと。幽霊に見えたり尻尾に見えたり、忙しいね。
---
「怖いなら一緒に行ってやろうか?」
ニヤニヤと、明らかに揶揄いまじりに言われたら意地を張ってしまうのも仕方ないというもの。
とはいえ。
(なんでお風呂の前にホラー映画なんて見…いやいや考えない思い出さない)
こういうのは勢いが大事と、強めにシャワーの湯を出し髪を洗い始めた。
ささっと終わらせたいところだが、私の長い髪では、そうもいかない。
さっき見た場面を頭から追い出そうと、必死に違うことを思い浮かべていたのに。
勝手知ったる浴室。いつもなら、目をつぶったまま洗い終えるのに。
何故か、ちらっと目を開けてしまった。
開けてしまうと、もう背後が気になって仕方がない。
そろ、と後ろを振り向いた。
いつもと変わらない半透明の扉、の奥。向こう側。
(なんか暗い…そこに誰か立っ…てる訳ないから。
気のせい、気のせいだから)
きちんと洗えたか、なんて判断する余裕はなかった。頭は泡まみれになった。もうそれでいい。
再度背後を確認する勇気もなく、
いつもの倍以上のスピードで手を動かし。
じゃぼんと湯に入った。すぐに膝を抱える。
適温で溜められた湯はあったかい。
だが、手も目も届かない背中が気になる。
見えないのが寒い。
(なんかもう、無理。無理だ)
もはや呪文と化したキノセイも効かず、
若干俯きながら扉を開けた。
ちなみに、浴室扉の奥が暗く感じたのは、
透けて見える脱衣所のドアが焦げ茶色だったから。
誰もいない、
洗剤の位置すら記憶と変わりない脱衣所。
思わずため息が出た。
ほっとなんかしてないやい。
そうしてリビングに戻ると、
「出るの早っ」
ひーひー笑われた。予想はしてた。
ホラー映画を推してきたのからして確信犯なんだ。
腹いせにアイスを買わせよう、そうしよう。
---
ウィキに、ススキ草原は草原としては最終段階で、放置すると森になっていく、という記述があって面白かったです。人の手を入れないと保てないってことですね。
#96 脳裏
頭の中ってことだけど。
脳内って言うと、まぁ同じようにも使うけど。
こっちは物理的な、肉体的な感じがあるね。
内側を裏と表すのは、日本語らしくて面白い。
そうだね、器の内側は、外から見れば裏側だよね。
こうして、今繰り広げられている思考が脳のどこで行われているか?
脳のどこが活性化しているか見る機器をつかったって、そこで本当に文章が組み立てられているのか、なんて。そんなの見えやしない。
脳は私たちに見えない裏側の世界を持っていて、そこでは言葉たちが走り転げ、弾けてはぶつかって、溶け合って、そして思考という奇天烈な反応に繋がっていく。
そんなのがまさに脳裏を過ぎった。
#95 意味がないこと
そこに意味が有るか、無いか。
自分で決めなければ、
それこそ意味がないことだと思う。
---
さて。意味がないことって何ぞや、の前に。
そもそも、意味という言葉が指し示すものは何か。
ネットに助けてもらいつつ整理してみる。
1.言葉の表す概念や内容
知らない言葉を辞書で調べるときのヤツだね。
2.言語、作品、行為など、なんらかの表現によって示される意図・目的。または内容。
映画とか思い浮かべると…うん。
あとは、お辞儀の深さとか作法には意味があるものが多いよね。
言語って何が…あ、諺か。「月が綺麗ですね」系も含まれるかな?
3.(それが)存在する必要性や理由
システムや物体に関することらしい。なら、ルールも入るかな。人間が存在する意味ある?みたいなことではないと思う。法律とか、体の仕組みとか、もっとシステマチックな感じがする。
4.物事が他との関係において持っている価値や重要性
つまりどれだけ大切かということ。ここだけふんわりなので、例文を見た方が分かりやすい。
「意味のある集会」
「全員が参加しなければ意味がない」
「意味のある仕事」
うん、わかるけど説明しづらい。
---
1〜3は、すでに在るものに対することなので、
今回は特に4番目について書きます。
価値や重要性、大切さというのは決して普遍的なものではありません。
個人や団体、集団によって定められたごく主観的なもので、考え方や立場、時代の風潮によって変わってしまいます。
しかも認識されなければ、その有無を論じる事もできません。
そして、
「意味のある人生」
「生きる意味」
みたいなことを突き詰めて考えるのは、いずれ破綻するので、私は意味がないと考えています。それなら人間自体生まれた意味があったのか?と思ってしまうので。この辺の考え方は色々な切り口があるでしょう。
私個人としては、どう生きるか考えることに意味がある、と思うことにしています。
こうやって書くのは意味がないこと?
いいえ、そうは思いません。
これだけ長くなった文章を、どれだけの人が最後まで読んでくださるかは分かりませんが、書くのは自分のためでもあります。
それがどんな内容であれ、書いても意味がない、なんてことは無いのです。