たまき

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5/21/2023, 1:53:05 AM

#24 理想のあなた


うんと小さい頃、自分の容貌が気になって、鏡を覗いてみたら、期待していたほどではなくてガッカリした覚えがある。
今は前向きに受け入れている。


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理想とは、なりたい姿やあるべき生き方、これがあれば幸せだと言えるもので、言い換えれば未来への目標であり、過去に対するものである後悔とは別物である。


私は、考え方の癖や人見知りの原因を、親との関係性によるものだと思っていました。
多分、親のせいだから自分は悪くないと思いたかったのだと、今は思います。
何年も拗らせた結果、残ったのは感情のコントロールに四苦八苦している内弁慶な自分でした。


必要なのは、「これからどうするか」を考えることであり、その内容は達成可能なこと、小さな目標がよい。


何事にも冷静に対処できたらいいなと思うのです。
調べてみたり人に聞いてみたりすると、方法は色々と見つかりました。

とりあえず簡単そうな、小さいことなら。
まだまだ大丈夫、失敗は成功のもと。


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理想の『あなた』と言っても、
誰かにして欲しいことがあるときに、はたらきかけるのは結局自分だしなぁ、ということで。

アドラー心理学を参考にしました。学生時代の教科書を引っ張り出しました。そのうち時代の流れでアドラーさんじゃなくて誰某がいいとか、求められる内容は変わるんだろうな…とか思いました。

5/19/2023, 5:37:18 PM

#23 突然の別れ


今日まで続いていたことが、
明日も続くとは限らない。

そう言いながら、
また明日がくると信じてしまう。

無邪気に、もしくは絶望感を持って。


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私には突然でも、
彼にとっては、きっとそうじゃなかった。

「また明日ね」

「うん、また明日」

学校から分かれ道まで5分程度の道を、ゆっくり時間をかけて帰って来た。
ふとしたきっかけで仲良くなった私たち。
塾もあったりして一緒に帰れる日は少ないけど、
たわいも無い話に、お互いの悩みを交えながら、急速に心の距離を近づけていた。そう思っていた。

性別は違うけど、似ている悩み。
根っこの考え方も似ていて、
だけど、性別のせいじゃない何かが違う。

その何かが、些細で、そして決定的だった。


もういいんだ、ごめん。
そう言って、彼は突然転校していった。

裏切られたような、彼を責めたい気持ちと、
私では駄目だったんだ、と自分を責めたい気持ちがぐしゃぐしゃになって、

わかった、としか返事できなかった。


それからは、ずっと一人で帰った。
その間、私の何がいけなかったのか考えていたけど、分からなかった。
だけど、分からないからダメだったんだと思うようになった。


そのうち、彼が転校したことが余程ショックだったのか、その前の悩みがどうでも良くなっていたのに気づいた。

彼がいなくなって辛かったのに、
彼に何もしてあげられなかったことを悔やむ気持ちは無くならないくせに、
それでも時間が経つと勝手に立ち直るものらしい。

一人で帰るのも平気になった。

自分のしぶとさが少しだけ嫌になった。


こうして、ひと夏の恋のような、何かは終わった。

5/19/2023, 6:32:23 AM

#22 恋物語


自分の教室に向かっていたら、
職員室から先生が出てくるのが見えた。

「あ!先生!おはようございます!」

「おはよう」

「先生は今日も歩くのが早いですね」

いつも返事はくれるけど、歩くの早いし止まらない。クラスまっしぐら。

「そう?授業あるから、もう行くね」

「そうですか、かんばってください!」

「はい」

それでも、話せるのが嬉しい。
先生が私が行く方向とは別の角を曲がるまで見送ってから、教室に足を向けた。
勝手に上がる口角は放置して。


授業は分かりやすくて面白い。
こっちが小走りになるくらい颯爽と歩くけど、
見た目は普通だと思う。
先生のことは好きだけど、そういう好きではない。


そのはずだったのに。


今は、最後の授業が終わったところ。

先生は背を向けて教材を片付けている。

(学校に遊びには来れても、もう授業は受けられないんだ)

そう思うと寂しい気がして、なんとなく近寄ってみた。

広い背中だ、と意識した瞬間。
くらり、目眩のようなものを感じた。

-目の前の人に、触れて、みたい-

衝動的に足を踏み出そうとして。

教室の外を誰かが通るのに気づいて、
ハッと我に返った。

(なに、いまの)

いや、考えちゃいけない。

少し近寄っただけで、先生とは距離がある。
誰にも気づかれてないし、実際何も、起きてない。

私は咄嗟に心の中で蓋をした。


そして数日後、高校を卒業した。
私が先生を慕って追いかけていたことは校内では周知の事実だったが、
最後の授業で起きた現象を誰にも話すことはなかった。


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それは、心に蒔かれた恋の種だった。

芽吹いたのは、成人を祝う同窓会で再会したとき。
そこから猛アタックを始めるなんて、
まだ本人すらも知らない。


これは、私の恋物語の前日譚。

5/17/2023, 3:04:26 PM

#21 真夜中


田んぼと畑は多いけど、交通もそれなりにある。
だけど遊ぶ所は無い。そんな中途半端な田舎で。

誰もが寝静まった真夜中に、少女が一人。


鍵の回す音が響かないように。
息さえ殺しながら慎重に。

そうっと家から抜け出してきたのだった。


歩きでは遠くに行けないから、自転車で。
隣の街に繋がる大きめの道路を、
彼女は衝動に任せて、がむしゃらに漕いでいった。

眠れなかったから
ふざけるな
風を感じたかったから
嫌だ嫌だ嫌だ
夜の道を見てみたかったから

シミュレーションじみた言い訳と、
意味のない罵倒の言葉が、
彼女の頭の中で浮かんでは消える。

高架へと続くゆるい坂を登り、それなりに景色が見渡せるようになったところで、彼女は止まった。

歩道には彼女しかいない。
車は秩序に従って通り過ぎていく。
隣の街は、まだ遠い。

彼女は街境の暗闇をしばらくの間見ながら、
泣きたくなるような気持ちと、孤独と、自由を味わった。


時間にして30分にも満たない、真夜中の散歩。

母の病と父の仕事によって平穏から遠ざかった家庭を
本当には受け入れらないくせに、

学校生活が何も変わらないから
拒否することもできない。

そんな、大人にはなれないが、
子供でもいられない少女にとって、

これが精一杯の反抗期だった。

5/16/2023, 1:44:56 PM

#20 愛があれば何でもできる?


「何でもはできない。できることだけ」

どこかで聞いた物語になぞらえて彼は答えた。


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愛は好意を表す言葉で、色々な形がある。
これによって得られる効果のひとつがモチベーションである。

つまり、お題に対する解釈は
「好意とやる気があれば何でもできるか?」
ということである。


また、
愛を感じるとき、脳内では様々なホルモンが分泌されるため、愛する/愛されることを快感と捉えるようになる。

つまり一種の麻薬のように作用する。


なので、お題の答えとしては
「好意とやる気、そこに中毒性を加えてあげれば、
普段の姿からは想像もできないようなことを成し得るだろう」となる。


ところで、
そのまま快感への欲求がエスカレートしていったら、どんな結末を迎えるだろうか。
その答えはニュースや歴史から知ることができるが、得てして、その裏側には別の思いや思惑が隠れている。


最終的な結論として、
愛の授受は、その持続性や双方の人間性を尊重し、心地よく感じられる程度に制御されることが適当である。
その為、どんな愛もない状態に比べれば多くのことができるが、何でもはできない。
ということになる。


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でもね、と彼は続けた。

この考えも穴はある。
愛に対する考え方は人それぞれだから。

そもそも、もし仮に答えが一つだったら、
こんなに悩まないでしょう?

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