嬉しいときも、怒ったときも、悲しいときも、楽しくて仕方がないときも、涙は流れる。
感情が、自分のこころのメーターにおける閾値を超えたとき、つまり感情の高ぶりに合わせて涙は流れる。
反対に、わけもなく流れる涙もある。
涙の出身地は、自分の心の海である。海と一括りに言っても、浅瀬もあれば、最深部もある。
わけもなく流れる涙は、深くて自分の意識が届かないところから来た涙だ。
この、喜怒哀楽で表現しきれない涙の理由を、分かる日が来るのだろうか。
この涙の答え合わせは、今はできないと割り切ろう。
きっと、あるタイミングとかではなくて、じわじわとこぼしたコーヒーが紙に染み込んでいくように、答え合わせができていくのだと思う。
だから今は、気ままに小さな幸せがある日々を大切にしていこう。
________涙_____________________________________。
わたしが思う小さな幸せは、自分のからだもこころも元気なときには気づかない幸せのことだと思う。
ごはんが食べれること。
いろいろな食べ物のねだんが高くなってきているけど、どうにかそのとき安い食材を選ぶなどして、やりくりしながら、美味しいごはんをつくることが楽しい。
最近は玉ねぎ餃子を作った。餃子の餡を包むことが少しずつ上達していくのを実感できるのも嬉しい。
家があること。
家は、毛布にくるまって寝れるところ。その日の課題を済ませて、ちょっと疲れを感じながら、まくらに顔をうずめる瞬間がたまらなく心地よい。
音楽があること。
今の自分の気持ちに寄り添ってくれるような歌詞は、わたしのこころをゆっくり解してくれる。メロディはこころを躍らせてくれる。
文学があること。
文学は、自分は一人ぼっちだと思ったときに、ふいに”ともだち”になってくれる。だれにもいえない、ときには自分でも気づかなかったことも代弁してくれる。本を読む度に”ともだち”が増えていく。すると、わたしは一人ぼっちじゃないと気がつく。
自然があること。
人工的につくられたものが多いこの世界にも、自然はたくさん横たわっている。
空、風、海、森…挙げたらキリがない。
空が少しづつ夜から朝に、朝から夜に移ろっていくのをぼんやりと眺めると、”朝と夜が切り替わる瞬間”がないことに気がつく。
風も海も森もそうだ。自然は、”境目のないもの”でできていると気がつく。
すべて輪っかのようにつながっていることに気がつく。
そうやって自分なりの解釈をできる時間を一週間のうちに数十分とることが、わたしにとって重要な時間でもあり、小さな幸せでもある。
からだもこころも元気をなくしてしまったときは、小さな幸せを感じるこころは消えそうになってしまったが、少しずつ元気になっていくにつれて、気がつくことができた。
それは、わたしに寄り添って話をきいてくれた人たちがいたからできたことだ。人と関わることは、ときに辛いことや悲しいこともあるけれど、そればっかりじゃない。楽しくて、嬉しくて、涙が溢れるくらいの優しさに息をするのが楽になる瞬間もある。
わたしはからだもこころも元気になっても、小さな幸せとそれに気がつかせてくれた人たちを忘れないだろう。
__________________________________小さな幸せ___。
桜は水色の空によく似合う。
しかし、藍色の空にもよく似合う。
夜にみる桜は、昼とはまた違った”すがた”を魅せる。
ライトアップされた桜はきれいだ。
それに対し、月明かりに照らされる桜は、趣がある。
桜の花の色ははっきりと識別することができないが、桜の花の輪郭がみえる。
そして、風が吹く度に、細い枝ごとサワサワと優しい音を鳴らしながらゆれ、桜の花びらが宙を舞っていく。
この様子をみているだけで、魅惑と哀愁の世界に迷い込んだような気持ちになる。
桜の花は、舞うときれいだが、一度舞ったらもう桜の一部ではなくなる。
しかし、この瞬間のために桜は、夏の暑にも冬の寒さにも耐え忍び、内に秘めていた美しさを解放して、皆のこころを惹きつける。
それが、魅惑と哀愁の世界に迷い込んだような気持ちになる理由だろうか。
春爛漫のなかで、思いを馳せる。
_____________春爛漫____________________________。
七色のものといえば虹だ。
わたしは、虹を認識したのは未就学児のときだったと思う。
初めに認識していた虹は、桃色、黄色、水色の三色であった。
クレヨンを使って、この三色で虹を描いた。
その後、誰かに虹は七色あることと、色の種類と並び順について教えてもらった。
今度は教えてもらった七色で、虹を描いた。
この七色の虹をみて、きれいだと思うと同時に、しっくりきたような感覚があった。
まるで、教えてもらう前から、虹は七色で構成されていることを知っていたかのように、納得することができた。
このときの不思議な感覚は、今も残っている。
この七色の魔法の橋は、みんなをちょっとだけ笑顔にしてくれる。思わず立ち止まって空を見上げる。
虹を構成する七色のように、人間も自分の色に自信をもって、自分の色を出しながら生きていけたらいい。
なんだか、とてもいいことが起こりそうな予感がする。
__________________七色_________________________。
おばあちゃん。わたしが眠れないとき、あなたにおんぶしてもらったことを覚えているよ。
眠れなかったわたしは、深い深い夜の森のなかで、自分だけが取り残されたような気持ちになった。そのときは夜が来ることが怖かった。
でも、おばあちゃんが、おんぶをしてくれた。子守唄をうたってくれた。わたしが安心できるように
その子守唄を聴いているうちに、眠くなってきて、いつのまにか寝ていることが多かった。
ふと、このときのことを思い出して、安心した気持ちになるよ。
今日も、月明かりが差し込んで、わたしたちを照らしている。
________記憶___________________________________。