ラフロイグ

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2/7/2025, 2:04:04 PM

九州人なのに豚骨ラーメンが苦手です。

誰にも言ったことないから、誰も知らない秘密です。
でも、今言っちゃったから秘密じゃなくなってしまいました。

なんだか、とても悲しいし、悔しいです。
ずっと秘密にしてたのに…




——— 誰も知らない秘密 ———

2/7/2025, 8:23:19 AM

いつの間にか机に突っ伏して寝ていたようだ。
時計を見ると小さい針が5と6の間を刻んでいる。

机上には、
飲みかけのコーヒー。
大量のアミラーゼに浸食された資料。
意味不明のアルファベット群に占領されたラップトップ画面。

男はスマホの電源を切り、インターホンの電源を切ると、頭から布団を被り、新たなる境地へと旅立っていった…
fin


——— 静かな夜明け ———

2/4/2025, 2:04:19 PM

仕事から帰ると、娘が「おかえり〜」とお出迎えしてくれた。
「おう、ただいまぁ…ア!!!!?」
語尾がバグる程の衝撃が眼前にあった。

今朝、家を出る時は腰上くらいまであった髪の毛が、バッサリと消え失せてショートになっているではないか!!!

まてよ。
落ち着け、俺。
妙齢の女性が髪をバッサリ切り落とすってことはだ…
つまりは…
コンマ何秒の間に脳がフル回転して答えを導き出す。

いや…彼女の血色は良いし、そもそも笑顔だ。悲壮感は無い。
ん?気分転換ってやつなのか?

頭は次第にクリアになってきたが、体は機能停止したロボットみたいに、次のアクションが起こせずに固まっていると…
女は「あははははは」と指差し笑いながら去っていった。

釈然としないままリビングに入ると、妻が夕食のメンチカツの準備をしてくれていた。
「アレなんなの?」
私は形態模写しながら答えを急くように妻に問いただした。
「永遠の花束をプレゼントしたそうよ」
妻は笑顔でそう答えた。

私はますます混乱してしまった。
髪を切ったら…永遠の花束で…プレゼント?
口の中にメンチカツを入れたまま咀嚼せずにいたもんだから、見かねた妻が助け舟を出してくれた。
「ヘアドネーションよ」
「へあーどねいしょん???」
私は聞き慣れない異国語をスマホで検索して、やっと合点がいった。

不意に…毎晩、楽しげに髪を丹念にメンテナンスしていた娘の姿が思い出された。



——— 永遠の花束 ———

2/3/2025, 1:25:09 PM

朝はあんなに厳しかったのに、今更やさしくしないでください。
とても迷惑しています。
私が困惑している様を見て、きっとあなたは北叟笑んでいるのでしょうね。

タートルネックのヒートテック、仰々しい手袋、マフラー、アウターに貼られたカイロ、分厚い靴下、その他諸々が、徒歩にて外回り中の私をとても苦しめています。

脱げばいいじゃん!と仰りたいのですね?
ではお聞きしますが、脱いだ諸々はどちらに保管すれば良いのでしょうか?ご教授いただけますと幸いです。

鞄の中ですか?
申し訳ありません。
取り引き先の資料様の先約がありまして…アリの這い出る隙もございません。

いっそ捨てましょうか?
いえいえ、その手には乗りませんよ?
どうせ夕方からまた厳しく責め立てるのでしょう?

……。


サボってねーで職責を果たせよ…冬将軍!



——— やさしくしないで ———

2/2/2025, 1:27:12 PM

夫の書斎を掃除していたら、本と本の隙間から一通の封筒らしきが僅かに飛び出しているのに気がついた。手にとってはみたものの、中を確認するという行為は、夫婦とはいえ不可侵の領域である。

良心と好奇心とが壮絶な殴り合いの末、「夫婦は一心同体」の免罪符を両手に掲げた好奇心が暴力的な論理という名の凶器攻撃で良心を打ち負かした。

逸る気持ちを抑え中を見ると、
「後5右7左12」
と万年筆で書かれた文字が目に飛び込んできた。

うしろ5、みぎ7…?
取り敢えず、書かれた通りに五歩下がり、右向け右で五歩進みドアを跨ぎ追加で二歩、最後に左向いて十二歩進む。
すると、壁にかけられているシャガールの絵画に打ち当たった。

絵に興味がない私は、その作品名は知らないし、良さもわからない。ただ、首が奇妙に伸びた男性が女性にキスする絵。
夫は時々、メンテナンスをしているようだった。
見よう見まねで、額縁を少し浮かせて上に持ち上げ、絵を留め金から解放してみる。案外簡単に外すことが出来た。

額縁の裏に六文字の「解」はあった。

ふと絵のタイトルが気になって、スマホで 「シャガール 」「画像」で検索をかける。

…なるほど。

いつ仕込んだのだろう。
私は7月。
今は明けて2月。
あの絵は結婚してから直ぐ、夫の恩師にいただいた品だ。
かれこれ10年以上飾られている。
いつだ?去年?一昨年?何年前?何時の?
グルグルと思考が巡る。
ん?まてよ。
私がこのプラチナリングを手にしてしまったら、夫の犯しては行けない領域を踏み荒らしたことが白日の元に晒される。
なんという残酷なことをするのだろう…あの人は。
開けてはいけないパンドラの箱にプレゼントを仕込むなんて…

先程、凶器攻撃でボッコボコに打ち負かした良心が、ムクムクと復活を遂げて、再び好奇心に戦いを挑もうとしている。



——— 隠された手紙 ———



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