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1/25/2024, 9:38:00 AM

逆光になって見えない君の瞳が、群青色に輝くのを、僕は知ってる。
それは、その排他的感情の虫の居所の悪さ、といったところから、来るのかもしれないけど。
なんで君は、空に願わないの。
ずっと、星だけを見てるの。
永遠に届かないものを夢想して、どうして微笑んでばかりいられるの。
その自宅では、広葉樹の落ちた枯葉が、玄関先に沢山散らばっていて、それを片付ける君の背中が、明日死ぬともわからぬ湿っぽいメランコリで満たされていて、どうしても抱きしめたくなったけど、それは出来なかった。
俺が男だからじゃない。
君が男だからじゃない。
ただ、仕事仲間という関係であるのにも関わらず、これ以上の関係になるのは、俺が許せなかったんだ。
「ただ、君は俺の前に這いつくばっていればいいんだよ、負け犬」
そんな、非情な言葉をかけて悦に入るぐら俺は子供で、君は
「ははは、その通りかもしれない」
なんて日和見主義なことを言うから、目も当てられないんだ。
俺は、ただ微笑む君を目の前にして、目をそらすことしか出来なかった。

1/22/2024, 10:54:11 AM

タイムマシーンがあるのなら、八年後ぐらいに戻って、馬鹿だった自分を殴り倒して
「なにやってんだ、ちくしょう! このままじゃ人生ボロっカスじゃねえか!」
と言ってから、十分ぐらい説教して帰りたい。
もしも、タイムマシーンがあるのなら、その後の私の行方を知りたい。
タイムパラドックスは起こるだろうか。
帰ってきた途端、生活が一変して、やはりあの人生の続きをぬくぬくと過ごしているかもしれない。
分からないのは、それが本当の幸せかってことだ。
『今の人生は、幸せですか?』
と聞かれたら、
「失意の縁にある」
と、答えるより他ない。
幸せは、山のあなたの空遠く。
どこにあるのやら。幸せさーぁん!

1/21/2024, 10:33:31 AM

特別な夜をここで過ごそう。
悲しみのよるも、慈しみの夜も、悲しい時もそばに居てくれた君に曲を送るよ。
それは、僕のレクイエムに似ていた。
夜の帳を満たす歌。
友人はみんな呼んでおくれ。
きっと誰も来ないに違いはしないが。
この夜を、愛で包んでおくれ。
それは、愛しい君の抱擁。
夜の色がする。
暗い夜の、コットンキャンディみたいな味がする。 それは、愛と呼ぶには不確かすぎて、いささか酩酊をともなった。

1/19/2024, 11:38:27 AM

君に会いたくて、ここまで来たよ。
君のお母さんは随分ふくよかな人だって聞くね。
君のお父さんは随分寡黙な人だって聞くよ。
その、レンガ造りの家屋は、屋根は緑色で、ウェストミンスターの、コテージみたいな小さな造りをしていた。
彼女の家は、カナダにあって夜になるとオーロラがよく見えた。
地球の高緯度帯で観測されるオーロラは、自然の奇跡のように思えたよ。
とにかく雪深い町で、クマがよく森に出るのだと聞いた。
秋の暮れのクマを、お父さんがやっつけた話も聞いたよ。
今日はそれで、ホット・バター・ド・ラムを引っ掛けて眠りについた。
暖炉の日が、燃え尽きるまで、二人はこれからについて話し合った。

1/18/2024, 10:48:43 AM

日記の筆者は知れない。
この日記の最後に記された署名の欄に記された名は、ロミオ・デ・ル・ロッサの銘。
しかし、この作者は女性。
なら、彼は何者なのか?
筆者の恋人か、夫か? 何故にこの日記に銘を打ったのか?
ロミオは、航海の途中、とある島でこの日記を手に入れた。
(彼女は何者だ? この、清廉な筆致。神をも恐れぬ、背徳的な文面)
その島は、邪教徒に滅ぼされ狩り尽くされた後で、人っ子一人いぬ有様。だが、妙な生活臭が残っているところを見ると、この漁村で祀られていた神の足跡を彼は知ることになる。
彼女は、民俗学者であり、その神を調査していた。
年に一度、人を捧げ物に食らうという、ダゴン。
それが、この村で崇拝されていた神の名前だった。
魚頭に人間の身体をした、漁民の民であり、この漁村では、その神との混血のもの達が暮らしていたという。
日記は途中で途切れているが、その奇異なる生活は、邪悪なる信仰と共に、書き綴られている。
邪悪なる神の信仰は廃れたが、その廃村では今も時折、人では無いものが、陸に上がるという。

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