日記の筆者は知れない。
この日記の最後に記された署名の欄に記された名は、ロミオ・デ・ル・ロッサの銘。
しかし、この作者は女性。
なら、彼は何者なのか?
筆者の恋人か、夫か? 何故にこの日記に銘を打ったのか?
ロミオは、航海の途中、とある島でこの日記を手に入れた。
(彼女は何者だ? この、清廉な筆致。神をも恐れぬ、背徳的な文面)
その島は、邪教徒に滅ぼされ狩り尽くされた後で、人っ子一人いぬ有様。だが、妙な生活臭が残っているところを見ると、この漁村で祀られていた神の足跡を彼は知ることになる。
彼女は、民俗学者であり、その神を調査していた。
年に一度、人を捧げ物に食らうという、ダゴン。
それが、この村で崇拝されていた神の名前だった。
魚頭に人間の身体をした、漁民の民であり、この漁村では、その神との混血のもの達が暮らしていたという。
日記は途中で途切れているが、その奇異なる生活は、邪悪なる信仰と共に、書き綴られている。
邪悪なる神の信仰は廃れたが、その廃村では今も時折、人では無いものが、陸に上がるという。
1/18/2024, 10:48:43 AM