NoName

Open App

逆光になって見えない君の瞳が、群青色に輝くのを、僕は知ってる。
それは、その排他的感情の虫の居所の悪さ、といったところから、来るのかもしれないけど。
なんで君は、空に願わないの。
ずっと、星だけを見てるの。
永遠に届かないものを夢想して、どうして微笑んでばかりいられるの。
その自宅では、広葉樹の落ちた枯葉が、玄関先に沢山散らばっていて、それを片付ける君の背中が、明日死ぬともわからぬ湿っぽいメランコリで満たされていて、どうしても抱きしめたくなったけど、それは出来なかった。
俺が男だからじゃない。
君が男だからじゃない。
ただ、仕事仲間という関係であるのにも関わらず、これ以上の関係になるのは、俺が許せなかったんだ。
「ただ、君は俺の前に這いつくばっていればいいんだよ、負け犬」
そんな、非情な言葉をかけて悦に入るぐら俺は子供で、君は
「ははは、その通りかもしれない」
なんて日和見主義なことを言うから、目も当てられないんだ。
俺は、ただ微笑む君を目の前にして、目をそらすことしか出来なかった。

1/25/2024, 9:38:00 AM