「…嘘だろ」
俺は今、鏡の前で絶句している。
「こんなはずじゃ、なかったのに…」
事の発端は
「うーん、前髪邪魔だな」
から始まった。
「ちょっと毛先を切るくらい、俺にもできるだろ」
そう安易に考え、ハサミを持つと、鏡の前に立つ。
そして、前髪にハサミを入れたら…見るも無惨な姿になってしまったのだ。
「ど、ど、ど、どうしよう。とりあえず、美容室。美容室に行かないと」
俺は、前髪を隠すように帽子かぶって、美容室へ急ぐのだった。
わぁ! と 小さな勇気 です
わぁ!
「わぁ!」
夜空を見上げ、キミは感嘆の声を上げる。
「こんなにたくさんの星、初めて見た」
キラキラ輝く星たちに、うっとりと魅入っている。
「………」
しばらくキミは静かに星たちを見上げていたけれど、ふっと僕を振り返り
「連れてきてくれてありがとう」
ニコッと微笑む。
「気に入ってくれてうれしいよ」
僕は、キラキラ輝く星たちよりも、キラキラな笑顔のキミをずっと見ていたのでした。
小さな勇気
「…どうしよう」
さっきから僕は、どうしようかと迷っていた。
電車のドア付近に座っていたら、見るからに、具合の悪そうな方が乗ってきたのだ。
その方は、電車が走っている間、ドアにもたれかかり俯いている。
僕の他にも気づいている人はいるんだろうけど、誰も動こうとしない。
「…辛そうだな」
迷っている場合じゃない。そう思った僕は、小さな勇気を振り絞り、席を譲るために、立ち上がるのでした。
昨日のお題です。
終わらない物語
「おめでとう」
招待した方たちに祝福され、結婚式が笑顔で幕を閉じる。
「ステキな式になったね」
幸せそうに笑うキミに
「そうだね」
俺も笑顔になる。
「これからは2人きり。楽しい毎日にしようね」
俺の両手をギュッと握り、微笑むキミに
「ああ。俺たち2人の、終わらない物語を笑顔で紡いでいこう」
俺はキスを贈るのだった。
瞳をとじて と やさしい嘘 です
瞳をとじて
「…ん」
ふと目が覚めて、何時かを確認するのに、腕を伸ばし枕元にある時計を見ると
「…3時か」
起きるにはまだまだ早い時間。
隣で寝ているキミが身じろぎしたので、起こしてしまったのかと顔を見ると、キミは瞳をとじている。
「良かった」
ホッと胸をなでおろし、もう一度寝るため伸ばしていた腕を元に戻すと、キミの手に触れた。
「………」
手に触れてもキミが目を覚ます様子はない。
「…いいよね」
俺はキミの手をそっと握ると、再び瞳を閉じたのだった。
やさしい嘘
「ごめん、残業になったから、会えない」
仕事終わり、彼の家に向かおうとした矢先に入った、彼からの連絡。
「そっか、残念。お疲れさま」
そう返事をしたけど、ごめんね、会えない理由。あなたのやさしい嘘だって知ってるんだ。
だってね、あなたの会社の方から
「具合が悪くて早退した」
って教えてもらったの。
以前、社外であなたと会ったとき、一緒にいた方と連絡先を交換しておいて良かった。
私にうつしたり、看病してもらったり、迷惑をかけたら悪い。って思って嘘を言ったんだろうけど、私は、頼ってほしいんだよ。
来てほしくないだろうけど、それを伝えに行くね。
私を想ってやさしい嘘をつく、あなたのことが大好きだから。
羅針盤 と あなたへの贈り物 です。
羅針盤
僕は今、木々に囲まれた場所で道に迷っている。
前を見ても振り返っても、右を向いても左を向いても、見えるのは高くそびえる木々ばかり。
「さて、どちらに進むべきか」
手にした羅針盤。針が示す方へ進めば、道に出るかもしれない。けれど、出たらそこで、冒険は終わってしまう。
「いつも同じ方向しか行かない安心を取るか、羅針盤の針に逆らって冒険の続きを取るか」
立たされる人生の岐路。迷いながらも楽しめるといいなと思う。
あなたへの贈り物
いつもお世話になっているあなたへ、何かお礼をしたいと思って買い物に出た。
「何がいいかな」
忙しいあなたがゆっくり休めるように、アロマとか、リラックスできるグッズを贈る。
頑張って美味しい料理を作る。
普段使える物、財布とか時計を贈る。
「…どれがいいんだろう」
品物を見ながら考えるけれど、何が良いのか答えが出ない。でも
「何を贈っても喜んでくれるような気がする」
受け取るときの、あなたの笑顔を想像すると、自然と笑みが浮かんでしまう。
あなたへの贈り物。それは、受け取るあなたを幸せに、贈る私も幸せを感じられる、私への贈り物でもあるんだろうな。と思った。