恋人から夫婦へ、関係が変わる。
同棲してたから、恋人から夫婦。って言い方が変わるだけで、同棲してたときの続き。だと思ってた。
けど、恋人から夫婦に変わって、小さなすれ違いが生まれるようになった。
恋人のときには、好きでいてもらえるように。って頑張ってたけれど、夫婦になったんだし、頑張らなくても大丈夫。なんて、キミに甘えすぎて、ケンカになって…。
でも、ケンカしたことは悪いことじゃなかった。
お互いの気持ちをぶつけ合えたから。
きっとこれから二人で過ごす中で、またすれ違いが起こることもあるよね。
そんなときには、とことん話し合って、お互いの気持ちをさらけ出そう。
僕はキミが大好きで、ずっと一緒にいたいから。
秋晴れが広がる空の下、キミと公園を散歩する。
「デート、公園で良かったの?」
手を繋ぎ、のんびり歩きながら聞いてみると
「うん。…というか…」
キミはピタリと足を止め
「ごめんね。ホントは、遊園地とか、ショッピングモールのお店をいっぱい見て回るとか、苦手なの」
申し訳なさそうに俯く。
「嫌われたくなくて、今まで言えなかったんだけど…」
手を離さないで。とでも言うように、繋いだ手に力が込もる。
「…そっか」
僕の声に、キミは肩をビクリと震わせ
「ホントにごめ…」
「そうじゃなくて」
顔を上げたキミの声を遮り
「ホントは僕も、あまり好きじゃないんだ」
本音を話す。
「デートの場所。女の子は遊園地好きなんだろうな。って選んでた。けど、乗り物に乗れないわけじゃないんだけど、得意ではなくて…。僕は、動物園とか水族館、プラネタリウムとかが、好きなんだ」
僕の話に
「…嫌われるのが怖くて言えなかったけど、ちゃんと話せば良かったね」
キミは微笑む。
「ホントにね」
お互いに言えなかった本音。伝え合えたことで、僕たちの心は秋晴れの空のように、キレイに晴れたのでした。
たくさんの星たちが彩る夜空を
「すごい、キレイ」
見上げながら、キミは、はしゃいでいる。
「こんなにキレイな星空、初めて見たよ。連れてきてくれてありがとう」
星たちに負けないくらいの、キミの輝く笑顔に
「キミと結婚したいな」
不意に、言葉がこぼれた。
「え?」
驚いたのは、僕もキミも一緒で。
「不意に出てしまったけれど、キミと結婚したいと思ってる。けど、指輪もないし、こんなプロポーズじゃ…」
僕の言葉に俯くキミに、慌てて言葉を紡ぐと
「…ありがとう。うれしいです」
顔を上げたキミは、ポロポロと涙を流し、微笑んでいた。
忘れたくても忘れられない、忘れちゃいけないキミの美しい姿。
その姿を、僕がずっと守りたい。
結婚した今でも、僕はそう思っている。
やわらかな光に包まれた部屋で
キミはすやすやと眠っている。
パワフルに活動しているのが嘘のように
穏やかな表情で。
「…撫でたら、起きちゃうかな」
困るくらいに僕を振り回すくせに、
寝顔はかわいいなんて…。
ずるいなぁ。って思いながら、キミに手を伸ばすけど、
起こしてしまったら、またやんちゃするのは明白で。
「僕も少し寝るか」
散らかった部屋を片付けて疲れたし、休憩するか。
と、気持ち良さそうに寝ている愛犬の隣で、僕は横になったのだった。
ショッピングモールに入っている、和菓子屋さんでショーケースを見ていると、何やら背中に痛いほどの視線を感じる。
「何だろう?」
と、そっと振り返ると、鋭い眼差しでこちらを見ている男性がいる。
「え?誰?何でこっちを見ているんだろう?」
私、何かした?でも、心当たりはないし…。
心当たりはないものの、何かされても怖いので、買うものをさっさと買って、その場を離れた。
「何だったんだろ?」
鋭い眼差しを向けられていただけで、声を掛けられたりもせず、わけがわからない。
「まだ、いるのかな?」
気になって和菓子屋さんに目を向けると、先ほどの男性が、私が買った物を手にしているのが見えた。
「嬉しそうにしてる…あ、もしかして」
私が買ったのは、1日の個数制限がある物。男性が鋭い眼差しを向けていたのは、私がショーケースにいたために、それがあるのかないのか。が見えず、どいてくれ。って思っていたか、全部買うんじゃねえぞ。って思っていたから。だったりして。
自分の考えを、自分で否定し、クスクス笑いながら、私は家に帰るのだった。