きみの目に一瞬閃いた、あのきらめき。
きみの命のきらめき。
ぼくの右の指先から流れ込んだそれは、
心臓まで辿り着いて鼓動を速める。
きっときみは知らない。
きみの二つのブルーグレーが燃える瞬間を。
炎は熱いほど青い。
ぼくは眩しさに瞬きした。
あのきらめきの向こう側にある命は、
太陽よりも熱く燃え盛っている。
今日、ぼくは海まで歩いた。
急いでいたから速足で。
海はあなたに繋がっている。
水面のきらめく青色が、あなたの瞳を思わせる。
照りつける日差しは、あなたの焼けた肌を思わせる。
あなたがどんなに美しかったか。
ぼくの永遠の憧れは、ついに伝説になってしまった。
魅力的だったあなたの笑顔。
真似をして片頬をつり上げる。
海がよく似合うひとだった。
少しだけ泣くために、今日ぼくは海まで来たんだ。
あなたにさよならを言う前に。
空模様はご機嫌斜めだ。
昨日まで降っていた雨を引きずって、灰色の曇り空。
だけど、ぼくは最高の気分だった。
隣にきみがいる。
きみはタバコをふかしている。
ぼくらの間のわずかな隙間を潮風が吹き抜けていく。
たぶん、きみが先に行くだろうとわかっていた。
まだ火のついたままのタバコ。
今日は雲が多いから、迷わずに登っていける。
先に海の話をしていてくれ。
なあ、きっとぼくらの海の話がいちばんに違いないよ。
夜の海には月が溶けている。
きみが憧れていた太陽は、おれには眩しすぎた。
だからおれはこうして夜の海を眺めている。
ああ、きみはついに太陽を手に入れたらしい。
太陽が溶けた眩い海を。
きみは永遠になった。
きみの手のひらにおれが開けた穴。
おれの手のひらにきみが開けた穴。
そこからまだ、太陽が見える。
暗い夜の海で、おれは月に手をかざす。
きみの笑顔と柔らかな囁き。
昼に溶けた太陽は、夜も海を漂うだろうか。
あれは暑い夏の日だった。
僕らは子どもだった。
永遠を無邪気に信じていた。
ずっと一緒だなんて。
耳の奥で、あの日の笑い声が弾ける。
肌を焼く日差しと青臭い草原の匂い!
手を振って別れた日々。
明日も会おうねと笑って、幻のように夏は過ぎ去った。
それでも僕の中で君たちは永遠だ。
僕はこの先も、あの夏の日を思い出す。
ずっとそばにいてほしかった。
僕は目を擦った。
たぶん都会のビルの照り返しがきつかったせいだろう。