「またね」
誰に対しても、「またね」と笑って声をかける貴方がとても印象的だった。
いい人、なんだろうなと思った。
でも、それと同時に私とは違うなと思った。
なんで、「またね」って軽く言えるんだろう。
別に死ぬ予定はないけどさ、もう一度本当に会えるか
なんて分からないじゃん。
どこかで何かを間違えて、未来への希望が持てずにいる荒んでしまった心に、貴方の屈託のない笑顔が焼き付いて、痛かった。
何かを諦めているような目をした、周りと比べ少し冷めている君がとても印象的だった。
いい人、なんだろうなと思った。
でも、それと同時に僕とは違うなと思った。
君は、「またね」って言わないんだね。
根拠の無いことは言わない正直で誠実な姿がかっこよくて、密かに憧れた。
空気を読んでその場に必要なことを言うだけの、感情なんてないロボットみたいな心に、君の視線が突き刺さって、痛かった。
「ただいま、夏。」
貴方と迎える夏は、もう何度目だろうか。
貴方は、夏になると僕の家に転がり込んでくる。
そして、夏が終わるとふらっと姿を消す。
夏が来る前はどこで過ごしてるの。
誰と一緒にいるの。
そろそろLINE教えてよ、
まだ、ここにいてよ
言いたいことは山ほどあるが、
言わない。
言えない。
なぜなら、貴方の心に踏み入った瞬間、この関係は壊れてしまうと分かるからだ。
何も知れなくても、貴方に会えればそれでいい。
貴方と一緒にアイスやそうめんが食べれるなら、
喜んで全てに蓋をする。
たまに、貴方の冬服姿を妄想するけれど、それは許してくれるかな。
風呂上がり、ベランダで涼む貴方を見ながら、今年も
こっそり秋がくるまでのカウントダウンを行う。
来年も、照れくさそうに言う「ただいま」が聞けることを願うばかりだった。
「ぬるい炭酸と無口な君」
『それでね、友達がさ!』
いつものようにマシンガントークを放つ。
目の前の彼は、優しく微笑みながら静かに話を
聞いてくれる。
私がよく喋るせいで、デートのお供にと2人で買う炭酸は彼の分だけが減っていて。
私の手には、買った時とたいして重さの変わらないペットボトルが、たくさん水滴をつけていた。
ぬるいと美味しくないでしょ、と彼は言う。
そんなことないんだなあ、実は。
無口な君の隣で飲むぬるい炭酸、結構おいしいんだよ。
癖になる。もう、君から離れられない。
「タイミング」
あー今日は席遠いな、
うわ1つ前の角を曲がっとけばすれ違えたな、
バスの時間ほんと被んないな〜、
毎日毎日そんなことばかりで何も起きていないのに
振られたのかと錯覚する。
狙いすぎて会えていないのではと流石に思うが、
授業もろくに被ってないのに能天気に過ごしていて会える訳がないので、どうにもできない。
唯一あなたと授業が被るのは、火曜日。
毎週毎週もしかしてと思い丁寧に顔面塗装しているが、
鳴かず飛ばずでもう前期が終わろうとしていた。
これだけやって上手くいかないのだから、もう、彼とは縁がないのかもしれないと期待より諦めが強くなる。
ぼけっとしていたら授業が終わっていて、リュックに荷物を詰めて教室を出た。すると、
「_ちゃん」
心地の良い声がして、振り向いた。
ぶら下がったキーホルダーがしゃらんと鳴った。
タイミングというのは、思ってもない時に訪れるのだな、と改めて心から思った。
「もしも過去へと行けるなら」
もしも過去へと行けるなら、なんてどれだけ
思いを馳せただろうか
最近で一番の後悔は、BeRealしているのに
言いそびれたこと
もう一度聞かれたらしてるよって答えよう、と思うけど
そんな日が訪れることなく半年近く経ってしまった
タイミングを逃し続けている
というよりは、自ら逃しに行っているのかもしれない
言おうと思えば、タイミングなんていくらでもあるし
作れるのに
素直になれる人間が得をするようにできている
この世界は、あまりにも眩しすぎる
そして、こういうものが少しずつ積み重なりもっと大きな後悔をすることになるであろう未来の自分に、今は怯えることしかできないでいる