「I love」
この気持ちは、恋なのかな。
それとも推しへの愛と似たようなものだろうか。
ぐるぐる思考を巡らせながら彼の背中を見つめる。
こういうことを考えている時点でそれは恋だよ、とChatGPTが言っていた。
そうなのかもしれないとは思いつつ、まだ自覚したくなくてあえて結論は出さないようにしている。
口に出してしまうと現実になる気がして、友達にも言えていない。だからAIに相談しているのだけれど。
別に恋とかではない、と頭では考えているが、最近、確実に恋愛系の曲を聴くのが楽しくなってきているのを感じる。インスタのノートに流しまくりたい衝動と日々戦っている。
もう、誤魔化しが効かないかもしれない。
「夢見る少女のように」
幼かった私の将来の夢はプリキュアになることだった。
早起きは苦手だったけど、日曜日だけは誰よりも早くベッドから出て、夢中になってテレビを見ていた。
そんな私は今、夢も希望もなくごく普通のありふれたOLになっている。あのころの憧れは一体どこに行ったのだろうか。
スーツを着てパンプスを履き、浮かない顔の人間ばかりの中、駅を歩く。
階段を上がっていると、重そうな荷物を持ったおばあさんが見えた。思わず声をかけ、代わりに荷物を持って支えながら一緒に登る。
プリキュアの夢は諦めても、正義感はまだ健在だ。
すると、それを見ていたらしき小学生の男の子が『お姉さんかっこいいね!』と目をきらきらさせながら言っていた。私が驚いていると、おばあさんが男の子に向かって『あなたもお姉さんみたいなかっこいい大人になるんだよ』と微笑んだ。
その言葉を聞いて、はっとした。
世界を救えなくても、
大勢からの感謝を得られなくても、
ささやかながら人を助けることが私にもできる。
私も誰かのプリキュアになれるのだ。
おばあさんと男の子の背中を見送り、私も歩き出す。
夢も捨てたもんじゃないな、なんて思いながら歩みを進める彼女の影は、まるで少女のように軽やかだった。
「傘の中の秘密」
授業が終わり、1階に降りてきてから朝は手に持っていたはずの傘がないことにやっと気がついた。
この土砂降りの中、取りに行かないという選択肢はどこにもなくて、人の波に逆らいながら階段を上っていく。
1番可能性が高いのはさっきまでいた教室なので、とりあえず向かう。
ドアを開けて傘を探していると『あれ、どうしたの?』と声をかけられる。傘に夢中で人がいることに気づいておらず驚きを隠しながら傘を忘れた旨を伝える。
よりによって、彼がいるなんて。もうとっくに帰ったと思ってた。こんなことならリップ塗り直してくればよかったと少し後悔する。
彼は、課題をしながら雨が落ち着くのを待っていたらしい。すると彼は無事傘を見つけた私に、でももう帰ろうかなと思っててと発言し、流れで一緒に帰ることになった。
別に付き合ってる訳ではないのでそれぞれの傘を差して歩く。
先程と変わらずすごい勢いで降っている雨のおかげで、沈黙が続いてもたいして気にならないし、お互いの顔がよく見えないため気軽に話すことができた。
お互いいつもより頬が赤いのは、傘の中の秘密である。
「さらさら」
『髪さらさらだね』
そう言って笑ってくれた貴方を、私は生涯忘れることはないのだろうと思う。
もう貴方は私の隣にいないのに、どうしてかどれだけ疲れていてもヘアケアを怠らずやっている。果たして誰のためなのかもうわからない。
出会う人に髪を褒められることもかなり増えて、それはそれで嬉しいんだけどさ。
誰かに褒められる度に疼くこの痛みは、どこへやったらいいのだろうか。
いつか捨てられるものなのだろうか。
「これで最後」
ふう、と深呼吸をして目の前のガチャガチャと向き合う。これで最後にしようって覚悟を決める。
もう底をつきそうな小銭を入れ、ハンドルを回す。
お、色味的にはお目当てのものと同じだ、と思い期待を込めながらプラスチックのケースを開ける。パカッという軽快な音と共に中身が登場する。
中には、見本のイラストにあった欲しかったキーホルダーが立体で入っていた。
やっと、やっと!!手に入れた!
嬉しさと達成感で満たされながら、やっとガチャガチャコーナーから離れる。
やっぱ「これで最後」ってプレッシャーを与えるのが良かったんだな。人は追い込まれないと力を発揮しないのだ
なんて、偉そうなことを思う。
神様には、「これで最後」と決めてからその後3回引いたことは内緒にしてもらおうと思う。