コノハ

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11/1/2024, 6:23:54 PM

【永遠に】

あと何度この時間を過ごしたら、自分はこの世界を終わらせられるのだろう。次目が覚めると、自分はまた見習い勇者としての冒険が始まるのだ。村長は言う。

「勇者よ、世界の命運はお前の腕に懸かっている。」
「…」
「どうか、わしらを平和へと導いてほしい。」
「…」
「旅の中。お前は幾つもの経験をし、その中お前と同じ志を持つ者たちとも出会うだろう」
「…」
「この旅はきっとお前を一回りも二回りも成長させることだろう」
「…」
「これはわしからお前への餞別だ。では、武運を願う」

村長から勇者見習いの剣を譲り受けると、ここから道中出くわすであろう雑魚モンスターを倒しつつレベルを上げ次の村を目指すことになる。そして、その村で村人たちの相談事を全て解決すれば、次の村へと向かうのだ。これを何度か繰り返し、自分のレベルを上げ王都を目指す。そこでは勇者として依頼屋から依頼を受け取り自分の評判を上げ、王宮に呼ばれ王様へ謁見、王様の信頼を得るため、今度は王宮内で騎士たちの相談事を解決していき、最終的にはこの世界を滅ぼそうと目論む魔王を倒し、この国に平和が戻ると俺は王様の娘か村へと残してきた婚約者と結婚を選択され、エンディングを迎えることになるのだ。
これを幾度となく繰り返してきた。この事実に気づいているのはこの世界ではどうやら俺だけなのだ。皆、何の疑問を抱くことなく同じ台詞をさも今発したかのように何回でも話すのだ。それも恐ろしいことに俺自身も俺の意思とは関係なく、まるでこの台詞が決まっているかのように口が勝手に言葉を発する。それも何度も同じ台詞を。行動も決められていて自分が行きたい方へ歩みを進めようとしても、自分の足なのに自分の意思を無視してどこか別の方へと進んで行く。何故なのか?独りではないのに自分ひとりが取り残されたこの焦燥。そして再び同じ世界が繰り返される。俺は自分のベッドで目覚め、勇者見習いとして冒険をスタートさせる。何度倒したかわからない魔王を倒し、世界を平和へと導く。終わることのない冒険がまた始まる。永遠に。

10/31/2024, 6:47:46 PM

【理想郷】

まだ出逢えぬ理想を求め私は旅をしていた。そこは誰も知らない秘境の地、文明が栄え、争いもなく、誰もが仲睦まじく平和に暮らしているそうだ。本当にそんな場所が存在するのか?半信半疑のまま私は粗末な荷物だけを持って、何十年以上もその地を探しているが未だに見つけられないまま歳ばかりが過ぎていた。身体はもう旅に出たばかりの頃のようにはいかなくなってきていた。私に残された時間はあまり残されてはいない。だが、ここで止めるわけにもいかない。私は何としてもその地を見つけださなければならない。その地の住人は皆、怪我も病気になったとしても瞬間、何事もなかったかのように治癒されるという。それはそこにしか生殖していない花。その花は枯れることなく永遠に咲き続ける。私はどうしてもその花を手に入れなければならない。私の妻は病に伏せ、どの医(くすし)に診せど、治療法を見いだすことができなかった。それでも諦めきれなかった私は数えきれない程の医学書を読み漁ったが、妻を救う手立ては得られなかった。しかし、私はある古文書を見つけだした。私は縋る思いでその書を読んだ。そして、私の旅は始まった。だが、もうダメかもしれない。私が何十年以上も病床の妻を医に預けている間、病状が悪化してしまっているかもしれない。あぁ、こんなことなら信憑性もない絵空事など頼らず妻の傍に居てやれば良かったのだ。私は愚か者だ。すまない、こんな甲斐性のない私を許してくれ。…もう、体力の限界が来ているようだ。視界が歪み、意識遠退いてきた。私は先に逝くよ。こんな私の妻になってくれたこと感謝する。

「…、た」

…途切れた意識の向こう側、懐かしい声がした。
誰かが私を呼ぶ。私は目を醒まさなくてはならない。そう思わせてくれる声だった。

「…、ん」
そして私は意識を取り戻した。

「あなた」
まだぼやける頭の中、私は声の主を探した。それは優しい笑顔をした妻だった。
「…、お前。どうして…」
私は訳がわからなかった。なぜ、病床の妻が私の目の前にいるのか。
「そうよね、訳がわからないわよね。実は―」
混乱している私をよそに妻は話し出した。
「…なの。」
「…そうか。」

妻が言うには、私が旅に出てすぐ妻の病状が悪化し、手を尽くすまもなく命尽きたのだという。そして、私も旅の果て、理想郷を見つけることなく命尽きた。

「…結局、私のしたことは無意味なことだった。こんなことならお前の傍にいてやれれば良かった。どうか馬鹿な私を許してくれ」
瞬間、後悔の果て私の眼からは止めどなく涙が溢れ出ていた。そんな私を妻は責めることなく微笑み抱きしめた。

「そんなことないわ。あなたは私を救おうとしてくれた。その気持ちだけで充分だわ。」
「…っ」
「それに、あなたが見つけた古文書だけど」
「?」
「あれは昔。私のお祖父様が幼かった私のために書いてくださった、御伽噺なの。」
「…え?」
「だけど、見て?」

妻が指差した先、そこには―

10/30/2024, 10:07:06 AM

【懐かしく思うこと】

懐かしく思うことなんて今の私の人生ではまだまだ短い。いつかそう思えるほどの出来事が自分にもあるのだろうか。そう思えれば、今の生きづらさも少しは楽になるのかな?

10/29/2024, 11:16:34 AM

【もう一つの物語】

自分が生まれてこなかったら、あなたを哀しませることはなかったのかな。私が選んだのはあなたの愛ではなかった。だって私はあなたをひとりの男性ではなく、父親のような存在と認識していたのだから。だから私は彼を選んだ。それにたとえ蛇に唆されなくたって私はきっと彼を愛し、彼に愛されることを選んだだろう。そうでしょう?だって、私は彼の体の一部から創られたのだから。彼の喜びが私の喜び。彼の幸せが私の幸せになるのだから。私たちは楽園を追放されたけど、決して愛を知ったことを罪だったとは思えない。あなたのもとを去ることに後悔はない。…嘘。本当はあなたに私たちを認めて欲しかった。だって、あなたが一番私たちを愛してくれていたのだから。だけど、ごめんなさい。私たちはあなたの愛情を裏切り、自分たちの幸福を築いていきます。

10/28/2024, 11:04:21 AM

【暗がりの中で】

眠れない夜は、あなたに傍にいてほしい。こんなこと言ったらきっとあなたを困らせるってわかってるから、本音はいつも心の中に閉じ込めるの。少しでもあなたの声を聞いていたくて、わざとどうでもいいことを口にしてる。そうすればあなたは側にいざるを得ないから。夜、暗がりの中で私が淋しさに押し潰されそうになっていてもあなたを思い出させてくれるように。時間が来ればあなたは部屋を出て行ってしまうから。あなたの姿を失った空間で私は切なさで胸が苦しくて涙が止まらなくなる、"行かないで、一緒にいて"そう言えたらどんなに楽だろう。

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