乱雑無章

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7/22/2024, 1:54:45 AM

6. 今一番欲しいもの

欲しいものを聞かれても答えられない。

そして必ず
「お前は贅沢だ。小さい頃から何もかも与え過ぎた。」
と返ってくる。

その通りだと思う。
食べるものも、住むところも、着るものにも困らなかったし、勉強道具も与えてくれた。
両親と一緒に暮らせている。
遊び相手にも困らなかった。妹が生まれてから、家に一人という状況はなかった。
高校を選ぶときも好きにすればとしか言われていない。大学も。

これらを支えているのは親の労働と良心だ。その苦労を考えたこともなく、これが当たり前だと思って育ってしまったから、これから先が不安だ。

何が不安かというと、それだけこれから失っていくものが多いというのが不安だ。

父は何度も入院して手術を受けている。最近金遣いが荒いのは、もう長くないと思っているからではないか。憶測ばかりして何も聞けずにいる。

一番醜いのは、死なないでほしいという気持ちの中には、お金が無くなったら困るという最悪の理由が含まれていることだ。なんて親不孝なのか。

更に、欲しいものが浮かばないということは向上心がないことを意味している。

例えば、かっこよくなりたいという心持ちがあれば、筋肉がほしい、洒落た服がほしいなどあるはずだ。

向上心があるから、必要なものがはっきりする。

堕落しているから、何が必要か分からない。

今も指定校推薦に引っかかればいいやと堕落した生活を送っている。

だから、強いて言えば向上心が必要だ。欲しいわけではないが。

7/21/2024, 1:51:19 AM

5. 私の名前

中学まで、名前が嫌いだった。
クラスの自己紹介で毎年言っていたのが名字で読んでくださいだった。中々絡みにくいヤツだ。
成人したら改名したいとすら思っていた。

ところが高校に入って、名前嫌いが徐々に無くなってきている。皆が皆名前で呼び合う学校だった。何故かは分からない。ただ、内部生も先生もそうしているから段々そうなっていく。

最初は名前で呼ばれるのは違和感そのものだった。
しかし、クラスメート、尊敬する先生、苦楽を共にした委員、腹割って話せる友人、そして部活の後輩までもが呼ぶもんだから、俺の名前はもう俺だけのものではなくなってしまった。となると、それなりに愛着が湧く訳だ。一応成人したが、名前を変えるつもりはない。

どうやら名前は、呼んでくれる人の気持ちが注がれる容れ物に過ぎなくて、その中身が肝心みたいだ。
だから、俺も人を呼ぶときは気持ちを込めて呼ぶ。もちろん良い気持ちを。

7/20/2024, 12:44:51 PM

4. 視線の先には

金魚。金魚を飼っていた。名前はつけなかった。どの名前もしっくり来なくて。それに、呼ぶことがない。話しかけるときも声は心の中で留めているし、必ず金魚を見ているときだったから。

私は今まで何度もその金魚を見た。君ってこんなに気持ちよさそうに泳ぐんだね。

おはよう。ただいま。おやすみ。まだ起きてたのか。ご飯だよ。水換えするから掬わせて。今日も泳いでるね。

いつからだろう。

鱗の様子がおかしいよ。苦しいね。薬だよ、これで良くなるといいね。辛いよな。こっちの薬のほうがいいかな。

気分は看護係だった。休日は治療法を調べて比べてみて、平日は部活から帰る足が何だか速くなっていた。エラが動いているのをこの目で見たかった。

「ただいま」
おかえり、と言われると同時に水槽に向かう。
ああ、良かった。大丈夫。

金魚は長いこと戦い続けたが、もう泳ぐ力も残っていないようだった。私は自分の無力を嘆いた。もはや餌をやることもできないほど弱っていた。

ある朝、いつものように水槽を覗くと視線を感じた。こちらを見ている。私もそちらを見ている。

初めての出来事に不思議な気持ちになっていると、君は泳ぎだした。それはかつて私の目を何度も奪ったあの優雅な泳ぎだった。そうだ、君はこれから元気を取り戻して、また一緒に穏やかに暮らすんだ。見惚れていると、あっという間に時間になっていた。行ってきます。

授業中も金魚の泳ぐ姿を反芻していた。帰り道もいつもより上機嫌だった。

「ただいま」
「今日ね、」
「ん?」
「死んじゃったの、金魚」

私が金魚を看取ることはなかった。亡骸も母が見えないように「処理」して「捨てた」という。悲しみや寂しさよりも突然顔でも叩かれたみたいな衝撃が私の心を支配した。

翌朝、いつも通り水槽のもとへ向かうが水槽はない。そうか、昨晩洗って仕舞ったのか。私の手は取り残された餌の袋へ向かう。浮いたり大粒だったりは食べづらそうだったからいつも小粒の沈殿タイプ。美味しそうに食べてたよね。

久々にジッパーを開けて中を覗く。
ああ、食べさせてあげたかった。

気付けば全て口に流し込んでいた。




−−−

もうすぐ3年間経ちますが、書いていて泣くとは思いませんでした。

妹が金魚掬いで5匹持ち帰ってきて、餌をやると一匹が独占して食べるんですよ。独占した者はお腹をパンパンにして程なく死ぬんです。

で、また別の一匹が独占して……と繰り返して半年後に唯一残ったのがこの金魚でした。大食いとプライベートスペースの欠如は体に良くないんだなと幼心に思いました。

食事が控えめなその金魚は6年以上うちで過ごして、気付けば3倍程の大きさに、私も25cm以上成長していました。

1人で寂しかったかな。でも1人しかここには居れなかったみたい。君はあの水槽の中で普段何を見ていたのかな。父、母、妹、私を見分けているように見えたけど実際どうだったのだろう。金魚と話してみたいです。

7/18/2024, 4:22:23 PM

3. 私だけ

何を書こう。

「だけ」は名詞「たけ(丈)」から転じたもので、近世以降になって助詞として用いられるようになった。もとの名詞「たけ」は副詞「ありったけ」などに名残をとどめている。

へー。じゃあ、自分の丈について。

身の丈にあった言葉を使いたい。そう思うことがある。きっかけは一人称だった。幸か不幸か、日本語は一人称表現の品揃えが豊富だ。

一人称を考えるときに、正直よく分かってない自分のこと、他者からの見え方、結局どう見られたいのか等考慮することが多すぎて困ってしまう。普段いかに考えないで甘んじているのか。

姑息の策として一先ずは周りに合わせている。私が多い場では私、俺が多い場では俺、はたまたワイが多ければワイという具合だ。なぜその場しのぎかというと、多数派に属している筈なのに一人だけ浮いている感覚に気づかない訳でもないからだ。

答えを出すのをいつまでも保留し続けているので、この調子では納得する日は来ないだろう。もはやこのまま死ねそうだ。

それならば、この保留状態を身の丈と呼びたい。

7/18/2024, 3:57:43 AM

2. 遠い日の記憶

まだ18年しか生きていないのでこのお題は難しい。それに、何かフックがないと思い出せない。昨日はツーマンライブに行った。そこから広げてみようと思う。

そのツーマンの片方は、2年前の梅雨、自分が初めてライブ会場に足を運ぶ目的になったアーティストだ。

幸運にも小雨程度で済んだその日の会場はZepp羽田で、とにかく大きかった。眼鏡越しで見ても米粒のように小さい演者。広くて天井も高い会場に音が反響していて、ライブってこんな感じなんだなと思った。そして、3年間スマホで聴いていた演奏を生で聴けた喜びに浸っていた。


やはり、これは遠い日の記憶とまではいかないか。では、音楽に触れたいと思うようになったのはいつだろうか。

4歳の頃ピアノを習い始めたのは自分から言い出したからなのか思い出せない。少なくとも、小4で辞めたときは親の意思で辞めたけれども。

その小4の頃入った合唱団は自分の希望によるものだった。だから意欲が湧いたのはその前だと思う。きっと小学校の行事だろうな。小学校では隔年で音楽会が開かれていた。2年生のとき合唱団の演奏を聴いたのがきっかけな気がしてきた。

それから、集団で演奏することを楽しんでいた。団員は150人程いてその上二部合唱だったから、1つのパートに70人位はいた。だから、いつものようにみんなに頼れないソロパートは酷く緊張していたのだろう、本番の記憶が一つもない。

中学に上がって吹奏楽部に入った。それまでずっと水槽学部だと思っていた。とにかく低音パートをやりたかったのでチューバに入った。部員は80人いたが、合唱とは一転して同じパートには3-5人しかいなかった。でも、少人数で一つのことをやるのが楽しかった。何よりベースという役割がやりがいに溢れていた。

高校では少人数(過疎)オーケストラの部に所属して、チューバを続けつつ、それだけでは暇な曲が多いのでフレンチホルンを始めることになった。そこでは、チューバはもちろん一人だし、ホルンも1st 2nd...と一人ずつ分かれていた。今までのようなパート仲間はいなくて辛かった反面、自分しかいないから上手くいけば分かりやすく評価してもらえることもある。正直趣味に評価とかいらないけど。

こうして振り返ると、幼い頃の自分は「みんな」でやることを楽しんでいたし、「みんな」を当てにしすぎていたと思う。けれど、それも分解すれば沢山の個人に過ぎない。責任感というものをもっと早くから持っていれば、今頃文系コースではなく、音楽コースにいたかもしれない。

それでも、結局こういう呑気なところは自己を構成している大きな一要素なので、音楽コースは難しいと思った。とにかく、この先も呑気に音楽を続けていくので、やめることはないだろう。やめるときがあれば、真剣になってしまったときだ。



(最後まで読んでくれて、或いは途中まで読んでくれてありがとう。人の目に入ることを想定していない長さでダラダラと書いてしまった。最初の話絶対いらないし。今後しばらくはいかに短くするかに気をつかいたい。)

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